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94年生まれ、26歳女性会社員が思うこと。

韓国のフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』がベストセラーになり、映画化もされた。

私は、主人公キム・ジヨンとちょうど1回り年齢が違う、1994年生まれ26歳の女性会社員である。年齢や世代は違っても、ジェンダーギャップを感じてる。特に「働く」ことにおいては、想像以上に男性が中心の社会だなぁと。

20歳以降のジェンダーギャップ

共学の小学校、スクールカーストはあっても性差はない女子校の中高、共学の大学を出て、IT系の企業で働き始めて3年。

働く上で、男女の差、思った以上にあるよね?女って想像以上に不利じゃない?何で学校では教わらなかったんだ??と思う。

それはそうだ。日本は未成年までは男女平等だが、成人になるといきなり格差が現れるらしい。LGBTQなどジェンダーも多様だが、ここでは男と女の2つで見ていく。

2018年度の日本の結果は、149ヶ国中110位と、下から数えたほうが早い。もちろん、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダを含めたG7諸国の中では断トツで最下位だ。

それくらいでは驚かないかもしれない。しかし、中国、インド、マレーシア、ネパール、ミャンマーよりもランクが下だ。
(中略)
未成年のうちは、ある程度「男女平等に」という社会通念があるが、成人になると「男性が上」という感覚がいきなり立ち昇ってくるのだ。

高等教育の進学率の男女差は、賃金や所得への差にもつながる。日本は政治と経済の面でのジェンダーギャップが激しいとも、別の記事で読んだ。

34歳で私は日本で首相になれるのだろうか?

「34歳で私は日本で首相になれるかな?」

今、6歳くらいの娘にそう聞かれたら、あなたは何て答えるだろうか。

フィンランドの首相は、2019年に世界最年少の34歳で就任した。女性である。

26歳の私が34歳になるのは8年後の2029年だが、せいぜいなれても企業の管理職か、起業して自社の社長くらいだと思う。34歳の男性首相が生まれたらすごいくらいだ。

世界の内閣を比較しても一目瞭然だ。

出自、学歴、経済格差、男尊女卑、年功序列。。。他の3カ国と比較すると、日本はこれらの塊のように見える。

2029年、この真ん中に34歳の女性首相がいる姿をあなたは想像できるだろうか。私はNOである。

フィンランドの34歳女性首相が1日6時間労働・週休3日制を唱えているのを見て、ガラスの天井を見た気がした。別に私は首相になりたいと言っているのではない。"女だから"という理由で叶えられないことがある、できないことがあるんだと悟ったのだ。

初めてジェンダーの壁を見た気がした。悔しい。

女は、働く上で立場が弱い

政治はさておき、もっと身近な働くことに話題を移そう。

まず、「働く女」とは言うが、「働く男」とは言わない。男は働くことが前提にあり、女は働かないことが前提にある。「働く女」はなんだか、消防車や救急車を指す「はたらく車」みたいだ。

働く上で、女性であることは思った以上にハンデだし立場が弱いなと思った。労働環境だけでなく、痴漢やレイプなど防犯面や性被害においてもそう。2020年12月7日、朝日新聞のVERY自社広告を見てほしい。


「保育園は40個落ちることになる。お金はぎょっとするようなスピードでなくなった。ベビーカーで外出したら、見知らぬ男性に後ろから蹴飛ばされて子供ではなく私が泣き出してしまった。」


普通に子育てしたくないと思った。髪色を派手にしたら、ベビーカー連れでも電車で舐められなくなったと聞いたこともある。

女性が出産・育児をしはじめた途端に弱者に転落する理不尽さを、とある出来事から感じたパパの話もある。

働くことに話を戻そう。

仕事で、取引先の年上の男性からタメ口のような口調で会話をされたことがあった。相手は親しみを込めて言ったかもしれないけれど、舐められているんだろうなと思った。

40代の上司にその一件を伝えると、「舐められるか…おじさんになると、そんな経験もないしな……」と感慨深い顔をしていた。まぁそうだよな。

私は小柄な体格も相まって、たぶん舐められやすい(態度を大きくして身長を盛れ、と教えてくれた叔母に感謝している)。若い、女性、小柄。これらの立場に加え、「外から来た」となると立場はさらに弱い。

地方大学でバイトをしたときも、単身赴任で地方で働いたときも、"異物"や"異なる者“として見られ、上から物を言われたことがある。それが耐えられなかった。

女性、若い、小柄、外から来た人。すげー立場が弱いじゃん自分!となった。「柔らかい印象に見えるようにしてください」と美容師さんにお願いしたのが何だか嫌だった。

自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏りをアンコンシャスバイアスと言う。下が一例である。

子どもがいる女性には負荷の高い業務を任せない(慈悲的差別)
ワーキングマザーは仕事より家庭を優先する(確証バイアス)
長時間働かないと成果が出ない(確証バイアス)
裁判官は男性(ステレオタイプバイアス)
外国人は自己主張が強い(ステレオタイプバイアス)

出典:https://www.qualia.vc/unconscious-bias/about/#head-4

私も抱えているし、バイアスをかけて見られたこともある。この辻愛沙子さんのTweetをみて、深く頷いた。

私は、役職や性別や年齢に関係なく、対等に人と話がしたい。ただそれだけだ。

結婚・出産を機に働き方を変えるのは、なぜ女性だけなのか。

私は社会人向けのクリエイティブスクールで働いていて、Webデザインを学びたい人150人くらいと約2時間のカウンセリングをしてきた。

受講生も入学検討者も女性が圧倒的に多い。家族や子どものために働き方を変えたいから、と言う人も多かった。

「子どもを家で見れるようにしたい」
「夫の転勤があっても働けるようにしたい」
「家族・子どものために働き方を変えたい」

こう口を揃えて言うのはいつも女性だ。「もっと子どもの成長を見たいから家でもできるWebデザインの仕事をしたい」と言っていた男性は1人だけだった。

育休を取るのも、時短勤務をするのも、家族のために働き方を変えるのも、パパではなくママであることが多い。どこでそんな擦り込みがされているのだろう?

電車の広告でよく見る女の転職typeは、「正社員で長く働きたい女性のための転職サイト」と唄っている。

「働く女」が「はたらく車」のニュアンスなのと同じように、まるでふつう、女は正社員で長く働けないよと言っているようだ。

どうして正社員で長く働くために転職しなきゃいけないんだろう?
どうして女性だけが働き方を変えなきゃいけないんだろう?
どうして女性だけが手に職をつけなければいけないんだろう?

幼稚園児並みになぜなぜで頭がいっぱいだ。

Webデザインのコースにしろ、転職サイトにしろ、”女性のための”転職・資格・スキルで一定のビジネスがあることは確かだ。でも、それが女性が正社員で長く働くこと、女性がライフイベントを機に生活や仕事を変えることを助長してきたのかもしれないと危惧している。

こう思ったのは、お正月に久しぶりにテレビを見ていたのがきっかけだった。

番組「さんまのまんま」で明石家さんまが、40過ぎのKinKi Kidsに「結婚はまだか!いい人いないのか!」、26歳のバドミントンの桃田選手に「辛いとき支えてくれる彼女はおらんのか!」、櫻田選手と並ぶ広瀬アリスに「男をもっと立てなさい!」と言っていた。

不快だった。アンコンシャスバイアスが満載である。結婚が人生の幸せでも、パートナーが異性であることも、女が男を立てることも、令和の話ではない。

でも、こうやって番組を通じて人々に概念は植え付けられる。

社会的通念やイデオロギーは、映画・本・ドラマやメディアを通じて、生産され、消費され、再生産されると大学のジェンダー論の講義で学んだのを思い出した(記憶が曖昧なので、覚えている大学時代の知人・友人はいい本や講義内容を教えてほしい!)。

女性ママや女性に寄ったプロモーションも仕事でしてきたけれど、それも「女性が働き方を変えるのが当たり前」という社会通念を生産していたのかもしれないし、変えなきゃいけない。

ある女性がキャリアを変えること、つまりある女性が今までのキャリアを諦めることで、私はご飯を食べているのかと思うと胸が痛い。

コロナによる自粛やテレワークの普及は、男性が家事・育児をすることの後押しにもなっている。ママは手に職なんかつけなくていい。女性が正社員でずっと働ける世の中になった方が絶対いい。心からそう思う。

働く女友達から聞いた実態

周りの話を聞く限り、私は職種や社風に恵まれている方だと思う。こんな言葉もなくなってしまえばいいのにと思うが、今の職場はいわゆる”女性が働きやすい職場”の類に入る。

同年代の女友達の話を聞くと、ビックリしたこともあった。(こんなこと私に話したなぁと思う友人は、語弊や誤り、削除してほしいことがあったら言ってほしい。)

・総合職で働き続けている女性社員が社内に1人しかいないので、ロールモデルがいない。
・4年目の地方転勤の辞令を応援してくれるのは大学時代の友人くらい。断ってきた先輩ばかりで、職場では「よく行くね」と言われた。
・女性だけが制服のスモックを着ることになっている。
・女性3人目の総合職でただでさえ茶髪なのに、ピアス開けたら上司から何か言われそう。
・社内で、女性活躍推進活動のメンバーになった。
・転職するにあたって、育休・産休のことも気にして企業選びをしている。

これが令和3年の企業の実態である。”女性が正社員で長く働き続けられるかどうか”は、勤め先の社風や職種にもよると、働き始めて知った。

多様な働き方で有名なサイボウズでもこんな実態らしい。これをオープンに議論できる社風がいいと思う。

周りの女友達や企業の実態を紹介してきたが、地方公務員の男友達に「こんなこと聞くのも嫌だけど、公務員って女性管理職とかいるの?」と質問したのが一番嫌だった。

ヘル・ジャパンを越えるには

作家のアルテイシアさんは、よくエッセイで日本の悪い風習を「ヘル・ジャパン」という。たしかに地獄の国だ。

男は強くたくましい、男はよく食べる、男はバカだーー。女性ばかりでなく、男性に対してもアンコンシャスバイアスやジェンダーバイアスを私も少なからず持っているし、刷り込まれている。

海外で名だたる映画の制作に携わってきたCGアーティスト達が、妻も子どももいて海外の制作会社でクビになったらどうしようもないから、日本に戻ってきたという話を講演でしていた。男らしさの迫害かもしれないなぁと思った。

ヘル・ジャパンを越えるには、家族、学校教育、メディア等で今まで刷り込まれてきた常識や偏見に対して自覚的になることが大事だと思う。

政治や社会全体を変えられなくても、一人の考えや職場の空気くらいは変えられるかもしれない。

今「あれは不快な発言だった」と伝えたい人がいるけれど、めちゃめちゃ勇気がいる。けれど、ココで黙っていたら何も変わらないから、勇気を出して伝えてみようと思う。

私も声を上げるから、もしあなたも声をあげたいことがあったら、勇気を持って声を上げてほしい。

2021年は、ポストコロナ時代は、ヘル・ジャパンが少しでもヘルから抜け出せますように。

オススメの本や記事

ジェンダーギャップやジェンダーバイアスについて、私が読んだおすすめの本や記事です。

『82年生まれ、キム・ジヨン』
韓国のフェミニズム小説。日韓のジェンダーギャップの差にも気づける。

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』

女性の自立の大切さを知れる一冊。産後の一番無力な状態のときに夫が一番暴力的だったって言葉が印象的。

『三つ編み

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生を描いた一冊。生まれた場所でも女性としての境遇が異なることを思い知らされる。

https://www.amazon.co.jp/dp/4152098554/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_yvN8FbJFSAF0N (なぜか埋め込みができなかった…再挑戦します)

『これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

弁護士ママが悩みながら考えた、ジェンダー平等時代の子育て論。「男らしさ」の当たり前を疑える。

作家アルテイシアさん

コミカルで痛快な文体で、日常のジェンダーバイアスを斬ってくれる。

25歳になる女性を待ち受ける性差別を蹴とばす方法 前編

シナリオを担当さした #性暴力を見過ごさない の動画も、海外で紹介されたりと話題になった。

四角大輔さん 「ニュージーランドにみる〝女性性〟とサステナビリティ」

ここでは男性/女性で見てきたが、男性性/女性性の観点でみた記事。所々に散りばめられたNZの女性首相のエピソードに、日本との差も感じる。

上野千鶴子さん 平成31年度東京大学学部入学式 祝辞

社会学者。東京大学名誉教授。女性学のパイオニア。『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』も読んでみようと思う。

少しでも社会がプラスの方向に動くよう、願いを込めて。

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