ライブに行けなかった
6月30日に前野健太とカネコアヤノの2マンライブがあるはずだったのに、新型コロナの影響で中止になってしまった。むしゃくしゃするから家で愛を叫ぶしかない。だから、日記に書いてある前野健太の映画”ライブテープ”の感想を載せる。
令和1年11月25日
立てた黒い襟から出てくるあご、青白い頬と鼻、四角いサングラス、袖から出ているくびれた手首、うつむいたり、仰いだり、サングラスなしでは真っ直ぐ前を見られない。丁寧に「はい」と返事をして、目を少し見て照れ笑い、すする鼻。上ずった声、考えながら話している。顔色と変わらない色の頬と唇。長い前髪をわしゃとかき上げる。
かわいいな、みんなかわいいな。この世に出てくる登場人物、みんなかわいい。メタファーのはずの神様、神話、みんなかわいい。荒ぶるから、みんなかわいい。怒ってケンカして、仲直りして、また調子に乗って怒られて、許される。
マトモな人がマトモに人ごみの中、突然大声で歌いだす。そのためには、黒いコート、黒いサングラス、ジーンズにギター、そして襟を立て首を隠して、うつむいて表情を隠して、そしてそして、観客が必要。
て、書いてあった。
その頃は毎日毎日ライブテープを繰り返し見てた。そしたら気持ちが高ぶりすぎて、数日後、突然前野健太のライブのために東京に行っていた。こんな行動力が私にあったなんて、家族も私自身もとっえも驚いた。全然CD聞いてきてないし、予習してない。だから、ライブで心が感じられるのか、感動できるのか不安だったけど、ものすごく感動できて、自分の感受性が死んでいなかったことにとても安心したことを覚えている。というのも、この時の私はメンタルダウンで絶賛休職中だったから。せっかく行ったライブで何も感じられなかったらどうしようと思っていた。だから感動したこと自体がうれしかったし、本当に安心した。これから生きていけそうだと感じられた感謝を伝えたくて、ライブの帰りにグッズを山のように買った。その時買ったTシャツが大事すぎて、全然着られていない。毎日着たいけど、夢みたいだったから、あの時間が、あのTシャツがなくなったら、全部幻になってしまうんじゃないかと思ってしまう。今は時々タンスから出して眺めて、夢みたいだった夜を思い出している。こんなに楽しくて、必死な気持ちになったのは久しぶりだ。だから、6月30日はものすごく楽しみにしていたのになあ。すごく残念だ。
でも今、2マンライブの予習のために聞いたカネコアヤノにかなりハマっている。職場で同僚にCDをむりやり貸したりして、ちょっと布教活動をしている。これはいい出会いだった。大人になっても世界がどんどん広がるということを体験している。実際に体験するって大事。