ケーキな女たち 〜はじめに
▼はじめに
休日の昼下がり。4人の女たちが青山通りを闊歩している。目的はケーキだ。それぞれ休日にたったひとりで、ケーキを食べるためだけに化粧をして外に出た。
彼女たちにとってケーキと向き合う時間は、現実逃避とも言えるし、現実に向き合うための工程のひとつでもある。糖質とか脂質とかもろもろの事情はいったん棚に上げて、いつも気にしている添加物やらのすべてを受け止める。それは自分を許す作業なのだ。
初めて食べるケーキが当たりだった場合はいいが、食べた瞬間に後悔することも多い。合成油脂をはさんだだけのパサパサのスポンジ生地は、ひと口食べただけで甘さに頭痛がしたりする。けれど、食べた後にモタッと胃に残り、しつこく胸焼けがまとわりついてくるこの感じが、なぜか心地いいのだ。満足感と後悔の念が複雑に交差する中で思う。まるでダメだと知りながらハマっていく甘くて痛い罠のようだと。今日も思い思いに、口いっぱいにクリームを頬張る彼女たちの腹の中をのぞいてみることにする。
『ケーキな女たち』
▼Peice.1 バタークリームくらいの美人/ 後藤沙織 25才
▼Piece.2 ナッツな君には才能がある / 浜名くるみ 28才
▼Piece.3 いちごパフェと、うちの主人 / 山崎真里 33才
▼Piece.4 マロングラッセとスカートめくり/ 宮本晴美 30才
▼Piece.5 ベイクドなチーズ、そして霜降り肉とウニと / 山口美咲 36才