見出し画像

キュレーターのお仕事とWeb編集者

 イベントグローブというメディアの編集長なのですが、実はキュレーターを名乗ってます。英文表記でCurator-in-Chief。私が作った造語です。

 普通は編集長がEditor-in-Chiefとなるのですが、感覚的に言うと編集長のお仕事というのはキュレーションそのものです。

 何を載せるのか、載せないのかを判断するのは大きな仕事。新聞社の編成も同じようなお仕事だと思います。

◆ そもそもキュレーターというのは何か?

 元々は、博物館の学芸員と呼ばれるお仕事で、施設の収集する展示物の鑑定、研究、選定を行う企画管理者みたいなもの。似たようなお仕事では、図書館の司書(ライブラリアン)。
 彼ら彼女らの働きによって、展示や蔵書の内容と利用者の利便性が変わるわけで、今風の解釈だとUI/UXの設計者です。

 キュレーターやライブラリアンが情報をインデックス化して、利用者が情報を探しやすくしたり、見やすくしたりするのが役割。

 日本ではそれほどでも有りませんが、米国だと、ライブラリアンというのは社会的に尊敬される職業で、資格をとるのはかなりの難関。現代では、かなりの部分が電子化されているので、私の知っているライブラリアンとは違うのかもしれないけど、やはり情報を探しやすくするという究極のスキルが、求められます。

サーチかければ誰がやっても同じでしょ?

なんて訳にはいきません。

 検索エンジンには基本的に意思がありません。常に(アルゴリズム的に)中立で、正しい情報ではなく、クエリにマッチした情報を探すだけです。

 仮にクエリが間違っていてもです。

 サイトのSEOを考えるときにXMLマップは必須になるのですが、これはGoogleの検索エンジンにサイトのコンテンツを理解してもらうため。

 でも必ずしもGoogleの検索エンジンの評価が高いコンテンツが、実際のユーザーである”人”に優しいとは限らないのです。

 だからこそ頭の切れるSEOコンサルタントはhtmlマップも大事にしています。こっちは実際の人間がみるサイトマップだから。

◆ Web編集者としての矜持

 イベントグローブも同じなのですが、どうやってユーザーに役立つサービスを作るかに重点を置いてて、サーチ対策はその次です。

 ユーザーの視点で考えると、おそらくグーグルでクエリを上手く使いこなせば、あらゆる海外イベントを見つける事は可能だと思います。ただこのクエリを使いこなすのがかなりのテクがいるのが実際。

 さらに言えば、情報がすべて英語というのも絶望的。

 学校英語がいくら出来ても、英検一級でも、TOEIC900点オーバーでも、実際に使われている英語は千差万別。自然言語というのは決定的なフォーマットがないので、表現も揺らぎまくり。

なので平均的な日本人は世界の情報についていけなのです。

 イベントグローブは、そんな悩みを解決するために作ったのだけど、何をやっているといえばキュレーションです。

 何を掲載するのか?どのように掲載するのか?

 国内で他に海外のイベントを相当数紹介しているリストがいくつかあるのだけど、正直、これは・・・というイベントが掲載されていたり、同じイベントがタイトル誤入力で重複掲載されていたり。。。。

 ユーザーには不便な思いをさせているのだろうなと。

 おそらくだけど、複数の外注スタッフが入力していて、相互の連携が取れていない?入力内容の校正が出来ていない?そもそも掲載ポリシーなんて無い?

 正直、あまりにもクオリティーが低すぎて腹が立つ。こんなものをユーザーに見せる感性に腹が立つというのが本音です。

 だからこそ、イベントグローブでは情報を吟味して、日本人、そして日本企業が知るべき情報をマニュアルでキュレーションしています。

 正直、効率は悪いです。

 ちょっと前まで、記事のようなコンテンツはテクノロジーによるレバレッジが効かないというのが定説でしたが、今どきAIによって記事を書くことだって可能なレベルになってきています。

 なので将来的に、既存のイベントのアップデートとかは自動化できるかなと思いますが、一番最初の”何を掲載するか?”という部分は当面変わらないと思います。

◆ 検索エンジンも事なかれ主義なのか?

 本来なら検索エンジンが最初の判断をしてくれれば良いのだけど、まだまだ満足のいくレベルに達していないし、むしろ部分的な情報で中身を吟味しないコンテンツを増産しているような気すらします。

 ヤフーが出来たばかりの頃は、人手でWebページを探してインデックのように掲載していたのだけど、当時の方が情報の質が担保されていたのは間違いないです。これキュレーションですよね。

 かなりの人海戦術でキュレーションしてたみたいだけど、今日では無理なオペレーション。単純にWWW上に存在するページが多過ぎる。

 だからこそ、検索エンジンが活躍して欲しいのだけど、それはページの本質までは判断しない。”できないのか” ”あえてやらない”のか?中立的な立場であるという意味から検索エンジンは判断しないだけかもしれない。

 検索エンジンも意外に事なかれ主義なのかもしれません。

◆ 編集という職業の未来

 ここまで来ると、将来的に編集という仕事はマネージメントだけが残って、ライティングの部分はAIに置き換えられるのだろなと。

 そして編集者の仕事は、掲載するか否かの判断だけ。記者という仕事は激減するのだろうなと。変わらないのは編集長の仕事だけだと思います。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?