コドモの大気圏離脱
息子が30歳になって結婚しても我々夫婦2人でよく話していることですが、子育ては、ロケット打ち上げに似ています。
コドモはみんな、親を中心とした家族という引力圏を突破するだけのロケット燃料を備えています。
そして、ある時期が来るとそのエネルギーを使っての「反抗期」という打ち上げ態勢に入り、飛び出して行ってしまうのです。
(我が家は「べたべた甘やかしている=引力が強いので、反抗期も派手になる」)
大気圏を通過している間、コドモとの連絡は途切れ、相手がどこでどうしているのかわからなくなるのは、実際の宇宙飛行でも連絡が途絶するのとおんなじ。
でも、もしそれまでの間にコドモとの間にある程度の絆ができていて、互いにわかりあうことができていれば、ほぼ計算した通りの場所に出て、通信が回復するはず。
「こちらは宇宙船『コドモ号』です。計算通り、大気圏を出て通信復活しました。これから周回軌道に乗って3周した後、外宇宙を探検しに出かけま~す!」と 元気な声を聞いて、いよいよ1人の人間をこの世に送り出すんだなぁ、と親2人で手を取り合って喜ぶ、ということになればラッキーです。
「反抗期」に親がうろたえてエンジンに水ぶっかけて止めようとか、補給の停止をするとか余計なことをすると、引力圏を脱するだけの燃料が足りなくなり、コドモは親に縛りつけられて一生を過ごすことになってしまいます。
この場合の「補給の停止」には、コドモがどんなに大きくなっても家にいる限り必要とするはずの「愛情補給」が含まれます。
お金を渡さないとか自由を縛るといった「補給停止」も良くないですが、「愛情補給の引き上げ」は一番良くないと思います。
「そんなことをするあなたは、うちの子じゃない」
「我々の子供であれば、そんなことはしないはずだ」
「だから、もうあなたを愛さない。あなたが愛されるのは、我々の望みどおりの子供でいる時だけだ」
コドモは、親に愛されたいと思っています。
「コドモを愛さない親はいない」とよく言われますが、それは実は間違っていて、「親を愛さないコドモ」こそがいないのです。
親は、自分勝手にコドモを裏切ったり自分のうっぷん晴らしに使ったりします。
それでもコドモは、親に愛されたい一心から、本来の自分とは違う行動をとり続けることがあるのだと、大内くんも私も、よく知っています。
親は、自分の人生のためにコドモを犠牲にしてはいけません。
先日、息子は親の友人に、
「親を尊敬している。反抗していた時期がもったいないぐらいだ」と言ってくれたようです。とうとうここまで来たか、という思いでいっぱいです。
ここ1年ぐらい、ずっと「もう反抗期は終わったのかなぁ」とうかがっていたけど、どうやら10年近くに及ぶ長い長い反抗期はおわってくれたようです。
もちろん、このあと別人のように愛想が良くなるとか親孝行になるとかは期待していませんが、親というものを、自分のやりたいことを邪魔しない存在であると信頼してくれて、必要があれば何でも相談にのる、「配偶者の次に親密な他人」と認識してくれたら嬉しいですね。