小学生の「教科書」を使った学び方を教えます
小学生が使う学習教材の編集者をしています。今は出版社勤務ですが、2月までは編集プロダクションで教材の執筆などをしていました。
#いま私にできること について考えていたのですが、小学校で子供が受け取る「教科書」を使った学び方なら伝えられるかもと思い、書きました。
教科書での学び方は部外者が介入しない方がいい。しかし……
教科書は、1ページ1ページに工夫が詰まった本です。市販の参考書やドリルよりも時間やお金をかけていますし、何人もの先生が考えて、検討しながら作り上げています。
本来なら、学校で先生が教科書を使った学習を行います。家庭では参考書やドリルで勉強しますが、役割としては学校で習ったことを元にした復習や定着です。ですので、学校での教科書授業がないと子供の学びが前に進みません。
教科書を使っての授業は学校の先生がコントロールするので、平時なら部外者が介入しない方がいいと思っています(そうしないと、学校での進みとのギャップが生まれてしまう)。
ですが、コロナ禍での学校の混乱で、教科書や課題だけ渡して授業が行えない場合もあると聞きました。そこで、今は家庭での教科書を使った学び方を伝えることに価値があると感じ、この文章を書き進めています。
算数の教科書での学び方
算数の教科書をめくると、単元ごとに章が分かれ、1〜2ページごとに課題が提示されています。そして解き方が書かれたのち、練習問題へと移ります。これならば、解き方をみて問題に取り組めば、教科書をスイスイ進んで行けそうです。
でも、それでは教科書の力をじゅうぶんに生かしきれていないのです。
教科書を使った学び方を最も正確に提示できるのは、その教科書会社です。教科書会社のホームページでは、教科書を毎回の授業の中でどう使えばよいのかを知らせる指導計画資料を公開しています。
例えば、啓林館ホームページの算数のコンテンツ内に「単元の目標と評価の具体例」という資料があります。
この資料は、一般公開されているものですが、通常は先生しか見ません。ですが、この機会ですので、保護者の方も一読してみてください。各単元で学ぶことの流れが丁寧に記されています。情報豊富ですよ。
上記は4年の「1けたでわるわり算の筆算」の資料です。1つの単元で10授業分、つまり2週間くらいかけてじっくりと学習することに驚かされます。学校での授業は、その日の教科書の1課題を丁寧に、クラス全員が確実に理解できるように行っているのです。
1回の授業では、1課題、1ページ分ぐらいしか進みません。ですから、今の家庭学習でも、短期間でわり算を完璧にさせようとはせず、1日1課題をゆっくりじっくりやらせるのがよいでしょう。
啓林館では、課題への解き方を先生不在でも身につけられるよう、解き方の動画「スマートレクチャー」を期間限定で公開しています。動画をしっかり見て解き方を学び、教科書にある練習問題を解く。1日の算数の学習はこれだけでよいと思います。
その他の教科書会社でも、休校中の支援コンテンツを提供しています。指導計画も全社公開しているので、家庭学習に役立ててください。
【5/21追記】算数・各教科書会社の「指導計画」「ワークシート」リンクまとめ
テスト教材などを公開している会社もあります。
啓林館・算数 指導計画 ワークシート テスト教材
東京書籍・算数 指導計画 ワークシート・テスト教材
学校図書・算数 指導計画 ワークシート 授業動画など
教育出版・算数 指導計画 ワークシート テスト教材
大日本図書・算数 指導計画 ワークシート・テスト教材
日本文教出版・算数 指導計画 ワークシート テスト教材
国語の教科書での学び方
国語の教科書は、漢字はできるにしても、読み物教材は読んだ後にどうしたらいいのか迷います。読んだものの、そこから何を学んだらいいのかわからない。学習のゴールが見つからない感じです。
国語の場合も、教科書会社のホームページに指導計画資料が掲載されています。例えば、光村図書のホームページにも、国語コンテンツ内に「年間指導計画例」があります。
上記は、2年生の「たんぽぽのちえ」教材の指導計画です。1つの作品でこちらも10授業、2週間分の時間を使うことがわかります。
指導計画に書かれた、友達と感想を伝え合うなどの活動は現時点では難しいです。でも、音読や時を表す言葉をおさえた上での内容の把握などを、指導計画に沿って1日1課題で学んでいくことは可能です。
光村図書では、休校期間の特別コンテンツとして、教材の朗読や、指導計画に合わせて作成されたワークシートを入手できます。じっくり時間をかけて文章を吟味することで、学習指導要領に沿った力を身につけていくことができるでしょう。
【5/21追記】国語・各教科書会社の「指導計画」「ワークシート」リンクまとめ
光村図書・国語 指導計画 ワークシート
東京書籍・国語 指導計画 ワークシート
教育出版・国語 指導計画 ワークシート
学校図書・国語 指導計画 ワークシート
すぐ教科書を読み終わる子への関わり
新しい教科書をもらったとき、掲載されている読み物が楽しくてすぐに読み終わってしまう子供がいます。もうとっくの前に読み終わっているので、国語の時間にみんなで読み始めようとすると、ちょっと退屈を感じてしまうタイプ。
休校期間中、そうした子は教科書をあっさり読み終えて時間を持て余してしまうかもしれません。
でも、教科書って簡単に読み切れるものではないのです。
子供が自発的に読むのは、物語や説明文などの文章だけだと思います。しかし、教科書には、文章の後で、その作品から学びを得るための手引きが掲載されています。
上記は、光村図書のホームページにある教科書中身見本です。物語だけでなく、その物語から何をつかむかの全体的な問いや、チェックすべきポイントなどが示されています。
ちょっと余談ですが、テスト教材を作る側としては、この手引きに沿ったゴール問題を作成するのが普通です。それだけ手引きというのは、教科書の中で重要な部分です。
この手引き部分を子供が自発的に読むのは難しいです。なので、保護者が手引きでの問いを子供にたずねて、簡単な答えを考えさせるとよいと思います。子供が作品を構造的に捉えることができて、教科書の工夫に気づくきっかけになるかもしれません。
(ちょっと先取り学習になってしまいますが)
おわりに
教科書を隅々まで眺め、ボロボロになるまで使い倒すと、確実にその子への力になると思います。
ぜひ、教科書を使って子供の学びを前に進めてください。
そのうえで、子供が教科書を読んで壁にぶつかったり、あまり勉強に向き合えなかったりしたときは、参考書やドリルを活用してください。
私は現在、子供が楽しんで取り組めることに力を注ぐ教材の編集作業をしています。そちらもどうぞ、よろしくお願いします。
※学校関係者や教材制作者で、上記文章のこの点に懸念がある、こうしたことも掲載してほしいなどありましたら、ご指摘くださいませ。悩みながら書いたものですので、どんどん良いものにしていきたいです。