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【舞台レビュー】男子はつらくないよ??(ネタバレなし)

ご縁があって、観劇に行ってきた。
2019年、8/7(水)〜8/11(日)に有楽町よみうりホールにて上演された舞台『男子はつらくないよ??』である。

◎あらすじ
どんな学校にも「落ちこぼれ」はいる。
赤点常習犯、不良、チャラ男、オタク系、無気力系・・・。
色とりどりの落ちこぼれ男子高校生たちが「地獄の夏合宿」に集められた。そこで待ち受けていたのは、え? 殺陣?!
教えてくれ、俺たちの立ち回り方!
この夏、サイコーにどーでもいい
青春バカボーイズコメディ!!
(公式webサイトより引用)

内容・出演者についてはこちらのレビューが詳しい。(ややネタバレあり)

上記レビューが掲載されているメディア・スマートボーイズの但し書きに「イケメンの情報が満載!」とあることからも分かるが『男子はつらくないよ??』は男性キャスト22名+男性ゲスト、男性ばかり出演する演劇だ。メインキャストには韓流スターのジヒョクさん(SUPERNOVA)も名を連ねる。SUPERNOVA、韓流に疎い私でも存じ上げております。
客層も、アイドルファン、2.5次元(アニメなどを生身の人間が演じる演劇)ファンで占められているようだった。


会場に到着し、SS席S席特典の写真シール、物販で購入できるブロマイドや缶バッジ(演者22名の中からランダム)のトレーディングにいそしむ女性客たちが集うロビーを抜けて、レミオロメンのスタンドバイミー「僕らは〜♪風の始まり〜の音聞〜かないかい♪」が鳴り響くホールに入り、指定席に座る。

ワクワクに満ちた開演前の会場で、私は内心不安であった。
実は、腐女子やアイドルファン向けの演出、男子同士のわちゃわちゃが多用される表現が少しばかり苦手なのである。
同性愛嫌悪というわけではない。この苦手意識は異性愛の作品におけるイチャイチャシーンにも向けられる。おぅおぅ、仲がいいのは分かってるからよ、早く話を進めろよ、と冷めてしまいがちなのだ。

誤解されそうだから弁明しておくと、イケメン演劇とそのファンを馬鹿にする気持ちは一切ない。
見た目の美しさは役者としての能力とトレードオフではないし(イケメン嫌悪の方は「顔だけで実力がない」と言いがちだが、演技が下手くそならば「実力がない」の一言で済ますべきだと私は思う。見た目と能力を関連づけるのは失礼だ。)イケメンを目当てに観劇して男同士の戯れに黄色い声を上げるのも個人の嗜好で否定されるべきことではない。

だから、これを読んでいる腐女子やアイドルファンの方、気を悪くしないでね。トキメキポイントは人それぞれなんだ。私はB級パニック映画で、ヒグマが明らかに着ぐるみじゃーん!みたいな残念シーンに異様にトキメク人間なんだ。わからんだろう?お互いわからんと思う。でも、トキメキポイントを持つという点では一緒だ。だから仲良くなれるはず。仲良くしてください。


釈明が長くなりすぎた。本題に戻ろう。

開演時間になった。会場全体がゆっくり暗転し、BGMがウワーッと大きくなったのちにふっと音が消え、舞台が明転する。

開始早々、私の不安は的中し、イケメン俳優同士でわちゃわちゃするシーンがふんだんに投下された。客席は沸いている。私は地蔵になった。
男同士で尻を触ってないでさ、なんかもっと、なんかさ、私の琴線に触れる笑いをください。(男同士が尻を触り合うシーンは、腐女子的に美味しいシーンであることは承知の上で言っている。ごめん。)
どうしよう。このテンションで2時間ずっとだったらどうしよう。

… …… ……

はい!杞憂!
この不安杞憂でした!

『男子はつらくないよ??』脚本・演出は白柳力さん、劇団「こちらスーパーうさぎ帝国」の主宰である。
「こちうさ」の舞台も拝見したことがあるが、とーっってもおもしろかった。(良いものを観ると語彙がなくなる。)

『男子はつらくないよ??』でもその手腕をふるって、男子のわちゃわちゃという撒き餌で客席を釣ったのちに、みるみるうちに会場全体を白柳さんのバカ&エモワールドに引き込んで行った。うぉぉぉ、白柳さん、かっけぇぇぇ。
役者に会えれば演劇の内容はなんでもいいやと思っていた人がもしいたとしても、どっぷりと舞台の面白さに浸れたのではないだろうか。


クリエイターがクライアントの要求に応えようとしすぎて自分の味を殺してしまい、無味乾燥な創作物となってしまった例はごまんとある。

以前観た、別の方が脚本演出をつとめる同じくイケメン男子を中心に据えた演劇もそうだ。役者のファンにとってはサービスシーンが多かったかもしれないが、脚本・演出に期待していた私は肩透かしを食らった気分になった。
この方、いつもならもっと突き抜けた笑いを届けてくれるのに。そうできなかったのは何か事情があったのかな、と。

そんなしょんぼり体験があったからこそ『男子はつらくないよ??』が要求に応えつつも作家性を強く出した演劇であることが、無性に嬉しくなってしまった。


イケメン俳優という食材と、アイドル/2.5次元ファンという客層を踏まえ、極上(バカ&エモ)の料理を出してきた『リストランテ白柳』。
DVDや再演で観る人のためにネタバレはしないが、白柳さんはすごい。プロの脚本家・演出家としての矜持を感じた。

すごく、おもしろかったです!(良いものを観ると語彙がなくなる。)
『男子はつらくないよ??』出演者をはじめ、関係者すべての方々、楽しい時間をありがとうございました。

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