怒られた時、怒らせた時

怒られた時。
私の頭の中は一瞬にしてホワイトアウトする。真っ白で、全部消える。全部もぎ取られて、空になってしまう。ヒリヒリするくらいスーッとする制汗剤か鼻の中まで痛くなるミント味のタブレットを、頭の中にぶち込まれたと言っても良い。
その後は、暫く、何にも手につかない。
手についたとしても覚束ない。
動きが確実に鈍くなる。
なぜ毎回毎回、怒られるたびに真っ白になってしまうんだろう。
「怒られる回数が足りないんだよ。慣れれば、気にならなくなるよ?」とよく言われる。
そうなのだろうか。確かに、ホワイトアウトすると、本当に仕事が遅くなるので、怒られることを買ってやろうとはしない。だから、怒られる回数が少ないのかもしれない。
でも、怒られるごとに、ホワイトアウトの時間が短くなってるとは全く思えない。

怒らせた時。
私と話した後に、人が怒ると、
「ああ、私は、いつも人を怒らせちゃうな」と自信がなくなる。
普通に接したつもりなのに、怒らせてしまう。
私の何が悪かったのかなと考える。
これを医者に話すと、「機嫌っていうのは、その機嫌になってしまったその人のせいだよ。だから気にしたもんじゃない。」と言われた。
でも、その人の怒りは私とのやりとりの中で生まれた訳だから、その人だけのせいではないと思う。程度や怒る対象は人によって違うし。どちらかのせいではなく、どちらのせいでもあるのではないか。
他人を変えることは、できないというのはわかっている。でも、私の目の前で、怒り始めた人がいたら、放って置けない。「どうにか鎮めなきゃ」と思ってしまう。
私は、皮膚を隔てる他人の機嫌まで、コントロールしたい”完璧主義”というのか、目の前で起こる問題に自分は加担していると思う”責任感がある”ということなのか。

ところで、私の父は、全てを怒りでしか表現できない。いつも何に怒っているかわからない。それで、「お前は、俺を怒らす天才だ」という。だから、私は「父を怒らせてしまう私が悪い。怒らせない様に私が改めなきゃいけない」と思って、彼の機嫌を損ねない様に行動してきた。
ただ、病気になった後、父からのそういった”洗脳”が私を病ませた要因の一つであるとわかった。だから、今では「怒らせる天才だ」と言われたら、ビクビクはするけれど、「そういうあんたは怒る天才だ。そのまま火車になって、どこでも行っちまえ。」と心の中で思えるようになってきた。
家族の中で学んだことが、社会に出た時にも影響する様で、未だに怒られないように真面目を装ってしまう。怒られることが苦手で、怒らせてしまった時は、「自分のせいで怒らせてしまった」と思い、自信がなくなる。

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