目白村だより4 (目白モンマルトル①)
山手線の中でも改札口が一つだけというのは、4駅だという。新大久保、巣鴨、西日暮里そして、われらが目白駅。人と待ち合わせるのには、非常に便利である。その駅を正面に見て、現在は、すぐ隣に水炊き焼鳥の店、そして交番がある。この焼鳥屋が出来た時に、店のまわりにぐるりと巨大赤提灯がデコレーションされた。おだやかな目白村の人たちも流石に、署名運動しようかと、大憤慨したものである。しかしこの憤慨は、店のオーナーにも届いたのか、だんだん提灯が小さくなり、数も減り、いつの間にか、とても控えめなものに変わっていった。それでも、目白の従来の住人には、評判は良くないが、慣れも少しあって、いまではあまりうるさく言う人もいない。
この提灯よりも、もっと問題なのは、駅から西に歩いて二つ目の信号(目白三丁目)から、新宿区に変わるところから始まる「目白銀座商店会」の名称である。山手通りまで続く長いこの商店会には、知人の店、行きつけの店も沢山あるのだが、「目白銀座」という名称が、どうしても馴染めない。目白村は、豊島区と新宿区が入りくんで存在するが、豊島区と新宿区では、管轄違いであり「目白商店会」とすると、豊島区管轄の目白駅前や駅裏の商店も入れなくてはならないとう事になるからか?細かい事情は知らないが、昔からある目白なのに+銀座という感覚が合わないのだ。・・・といいながら、私も人の事は言えない。
目白駅の交番横にある階段・・・昔から名のない階段だったが、私は、モンマルトルの階段を想い出し、「目白モンマルトル」と勝手に名づけていた。階段には長い間名前がなかったが2004年に銀鈴の坂という名称がつけられた。個人的に、大正~昭和の文化人が集まった要町や椎名町あたりの「池袋モンパルナス」の時代に興味があって、それに対して「目白モンマルトル」と洒落たのだが、じゃあ「目白銀座」とどう違うのと言われてしまいそうだ。
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・・・目白駅の横の階段には、2ツ店があり、一つは「ガタリ」という何とも、可愛いパブ。もう一つは「アコリット」という、ゴスロリ少女御用達のカフェ・・・。どちらもひとくせあり、かたやパブなのに料理ウリ、かたやシャンソンのLIVEがある。「ガタリ」はイタリアン趣味「アコリット」はフレンチ趣味と、両者には欧州趣味の統一感があるのだが、その2店の前、階段の踊り場部分に立つと、鼻先にぷーんと蒲焼の香りが漂ってくる。少し前まで、階段坂の下に焼鳥屋があつた。焼酎が揃っていて、おかみさんと御主人がよく口喧嘩する店だったが、そこに「ぞろ芽」と云う、うなぎ屋が入ったのだ。 石井好子さんの「パリの空の下オムレツのにおいは流れる」という有名なエッセイがあるが、ここは「目白モンマルトル蒲焼のにおいは流れる」である。(つづく)