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風景を創る

建築は風景を創る仕事

建築は常々風景を創る仕事だと思っている。
クライアントから依頼を受けて設計を始める際、どこであっても必ず現地を訪れ、そこに滞在しその場所がどういう所で、どういう特徴があり、どういう歴史を辿り、どのような文化があるのかを調査します。住宅であってもそれらの要素がデザインの参考になり、それらをもとにデザインを進めます。

島の風景が特徴的な場所
一直線に延びる道路と山が特徴的な場所
田んぼのグラデーションが美しい場所

風景を取り込み、新たな風景を創る

海があり、島が見えるならそれを活かした風景を創る。特徴的な山や田畑があるならそれを取り込んだ空間をデザインする。それにより空間や建物に価値が生まれ、新たな街の風景になると思っている。

海の向こうに見える美しい山のシルエット

日常の風景が価値を生む

以前、地方出張に行ったある時、夕陽が沈む海を眺めながら写真を撮っていると、近くを通った方から、

『今日は海に何か見えるのですか?』と言われ、
『夕陽が綺麗なので写真撮っていました』と答えると、
『綺麗ですか!私は生まれてからずっと見ているので、これが綺麗だと思ったこともなかったです。』

それを聞いたとき、あまりにも日常の風景となりすぎて、地元の方にはそれが綺麗だとかいう価値観さえなくなっていました。それをきっかけに地元の方の新たな風景を創る設計が重要だということに気がつきました。

視線を遮るために板塀で囲い、軒も低く広くすることで視線をコントロールしている。

視線を遮ることで見える非日常空間。


田園風景の中に建つカフェのある工務店の庭。普段見る田園風景を敢えて白い板壁で囲うことにより、視線を遮り見通せないことがむしろ非日常となり、地元の風景に新たな価値を与えることを考えました。庭から見える木は元々生えていた木を活かしています。

どの席からも目の前の海が見えるレストラン。

デザインというフィルターを通して非日常の風景を創る

昔から変わらない海の風景をデザインというフィルターを通すことで、新たな価値を創造し地元の価値を見直し提案をしました。どの席からも海を眺めながら食事をすることが出来ます。時間や季節の移ろいを感じながら、地元の海の美しい風景を実感して頂ければと思い提案させて頂きました。

人通りのない温泉街の商店街のお米屋に新たな価値を

人通りのない温泉街に人を集める風景を考える

人通りのない地元の人しか通らない昔の商店街にあるお米屋をデザインする。元々温泉街(ネオン街)として賑わっていた街並みに、もう一度賑わいを取り戻すため、新たな価値を提案するお米屋をデザイン。一見するとお米屋とわからない外観ですが、新たな価値を提案するために外観にネオンサインを取り入れ、元々賑わっていた温泉街(ネオン街)を彷彿させながら、若者にも受け入れられるファサードをデザインしました。別に温泉街を歩かせる仕掛けを設けて、店舗を中心に人が集まる環境を創造しました。


人がいない場所に人を集める

人がいない場所に価値と特徴を生むことで、人を集めることが出来ます。以前人口12,000人、最寄り駅まで車で1〜1.5時間、高速道路のインターまで車で1時間の場所に飲食店をデザインしました。決して好条件とは言えませんが、新たな価値を生み出したことで、1年間で1億円を超える売上を安定的に稼ぐ店舗が出来ました。人が居ないということは一見デメリットに見えますが、決してそうではないということは断言出来ます。

建築は建物を計画することで、元々の建物を壊したり、風景を変えてしまうことがありますが、ただ壊すだけでなく、ただ作るだけでなく、作るなら新たな価値を提案しなければならないと考えています。風景に新たな価値を提案することで、人が集まり、新たなビジネスが生まれ、更に新たな風景が生まれること望んでいます。

最後まで読んで頂き有難うございました。



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戸村聡里 AKINORI TOMURA
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