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7/26(金)21:00~配信  おにょTV 「音の世界の対称性その1」フォノグラムの歩き方シリーズ5

ヴァイオリン制作、真空蒸留、身体調整など、一見するといったいどこに共通点があるのかわからないと思います。
これらは「*共鳴」というキーワードで結びつきます。
この共鳴概念も従来の物理的定義から拡張する必要があります。
物理的定義としての振動概念や共鳴概念は、フーリエ解析を基にした音響学にまとめられており、また、音楽的定義としての共鳴概念は和声学や(古典)ピアノ調律理論にまとめられております。

共鳴概念の拡張とは、この二つの共鳴理論に橋をかけることです。
これは大脳と身体に橋を架ける取り組み(12KENやフォノグラム研究)に他なりません。
この橋を架ける前に、まずは「目の科学」と「耳の科学」の違いについて話していこうと思います。
目の科学とはギリシアから始まった幾何学をはじめ、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインと続いた観測を基にした物理科学のことです。
観測とは、「見る」ことから始まり、それが精密化していくと粒子加速器になっていきます。
電子顕微鏡も天体望遠鏡もすべては「見る」という認知行為が精密化されただけです。
では「聴く」ことの認知行為はどのように現代科学に発展していったでしょうか?
音響学がそれだと多くの方は思うかもしれませんが、実は「聴覚認知を視覚認知に置き換えた理論にすぎない」のです。
音は元来時間の中にしか存在していませんが、それを幾何学化(視覚化)することにって、聴覚認知特有の現象を無視する結果になってしまうのです。
*音響学的に構成された音楽や楽器の音色がどこか物足りない感じがするのはそのためなのです。
シンセサイザーの音が何か味気ない感じがしたり、数学的に作曲した曲が何だか変な感じがするのはそのためです。
この視覚認知に基づく科学と、聴覚認知に基づく科学の相違点に気が付くことが「共鳴概念拡張の一歩目」となります。

視覚と聴覚の決定的な違いはどこにあるのか?
それは、視覚が大脳のデジタル信号処理という単一の情報処理に対して、聴覚は大脳におけるデジタル信号処理と、蝸牛から、全身のリンパ節に届くアナログ信号処理の二重の認知機構があるという違いです。
この聴覚の二重認知機構(大脳におけるデジタル信号処理と身体におけるアナログ信号処理)の埋められないギャップが*ピタゴラスカンマという量として表れます。
*五度圏12展開を1オクターブ内に収まるようにすると12音階が出来るのですが、その時、もとのCに戻らずに23.46…セント音程がずれてしまいます。
このずれの値をピタゴラスカンマと言います。

オクターブは大脳由来、五度共鳴は身体由来なのですが、これについても話していこうと思います。
ここまで来て共鳴概念の拡張の話をすることが出来ます。
普通の物理的世界においては、時間と空間は幾何学化(パラメトライズ)されており、それらは独立の関係になります。
これは大脳がそう見せているだけなのですが、この辺のことは最近の脳科学においても証明されています。
つまり、時間認識や空間認識はすべて大脳が見せているマトリクスにすぎないということです。
物理的共鳴概念や振動概念の定義は、この時間変数と空間変数の関数になっており、時間と空間の分離していないマトリクスでは定義することが出来ません。
物理学におけるあらゆる方程式は統一場理論であっても、時間と空間を変数とした方程式であることに変わりはありませんから、大脳マトリクスの外側の事象には適応することが出来ないのです。
つまり、変性意識状態における振動や共鳴概念はこの外にありますので、物理的定義における共鳴概念を持ってくることが出来ないのです。

では、音楽における共鳴概念はどうかというと、これは大脳マトリクスの外をも扱っています。
それが、音楽における協和不協和関係に基づく和声学やピアノ調律理論です。
そこには理屈よりも先に快不快があります。
「ハーモニーに聴こえる二つの音の比は単純な整数比になる」はピタゴラスの発見ですが、ここで注意して欲しいのは逆は言っていないということです。
つまり、「単純な整数比の二つの音を重ねるとハーモニーに聴こえる」とは言っていないということです。
しかも複雑な整数比、無理数比などは当然のごとく除外されているということです。
これは、ハーモニーという協和感覚は人間の生理に基づいており身体に由来しているということです。
また、整数比という観念は大脳に由来しており、あくまで、ハーモニーは生理反応に由来するということなのです。(理論や理屈が先にない!)
音楽理論などは、この生理反応を基にしているため、観念的なフーリエ解析などでは捉えきれない協和・不協和について言及することが出来ます。

さて、視覚科学における重要な概念に「対称性」があります。
三角形よりも円のほうが回転運動に対して対称性が高いというように、
直感的にその意味することは分かるのではないかと思います。
聴覚の科学における対称性は視覚の科学の対称性と同じものでしょうか?
聴覚の科学における対称性は、視覚の科学とは異なり、それを「音響対称性」と私は名付けました。

が…長くなりますので、今日はここまで!

続く

(次回以降)

自著「音の作る形」という10ページほどの論文の内容は、いわば、等音面および、音響対称性という概念の定義を行った論文であるとも言えます。

ここでは、直感的に聴覚の科学のエッセンスを理解するために「盲人になったつもりで考えうる科学を構成してみたいと思います。
先天的に盲目であるならば、どのようにこの宇宙を科学するであろうか?
そういったことから聴覚の科学というものを考えていこうと思います。
また、視覚の科学との決定的な違いも考察していこうと思います。

参考文献


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