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汝、星のごとく(著者:凪良ゆう)

汝、星のごとく
著者 凪良ゆう
初版 2023年

ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。(出典:講談社)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000366625


今回の本は、物語のかたちが見えにくい本でした。主人公は男性と女性の2人いて、その2人の視点が交互に入れ替わるかたちで物語が進んでいきます。同じような色調の文章ではあるものの、主人公が入れ替わることで微妙に文章の色調が変わります。物語のかたちが見えそうになると、また文章の色調が変わる、ということを繰り返すので、それが物語のかたちを見えにくくします。そして、私が女性だということもあって、主人公の男性よりも女性の部分を読んだ時の方が物語のかたちが見えやすかったです。

□「物語のかたち」
透明な丸いガラス玉のようなかたち。透きとおっていて、とても小さく、とても固い。

□「物語のかたち」ができるまで

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私が本を読みながら見ている「物語のかたち」は、読み終わった時にパッと現れるわけではありません。本を読んでいくなかで、かたちが現れてきて、読み進めるうちに、そのかたちは変わっていきます。「物語のかたち」として最初にご紹介しているのは、私が本を読み終わった時に見えているかたちです。
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海が見える。おだやかな水平線。最後に小さく白波が立つ。(プロローグ)
水平線がゆったりと波打っている。海の浅いところからプクッとあぶくが浮き上がる。(青埜櫂 十七歳 春)
水平線が一気に固くなっていく。ぐーっと上から圧がかかったように緩やかに浅くへこむ。また、ゆっくりと柔らかくなり、水平線に戻っていく。少しだけ小さく波打っている。(井上暁海 十七歳 春)
大きく左右に波打った鹿の角のような形が一気に氷になったように、パキパキッと固まる。そのかたちの先は鋭く尖っている。(青埜櫂 十七歳 夏)
水になって形が崩れる。また、おだやかな水平線。波が左右から上がって繋がり、リングのようになる。リングの内側は平らで面が広く、中心から外側に向かって反りあがっている。(井上暁海 十七歳 夏)
リングのかたちの物がくるくると回っている。回りながら、鋭い半月状の刃物のようなかたちに変わる。水になって、地面に落ちる。土に吸われて消えていき、濡れた跡だけが残っている。それもじきに乾いて無くなる。(青埜櫂 十七歳 夏)
透明な丸いガラス玉のようなかたち。透きとおっていて、とても小さく、とても固い。(井上暁海 十九歳 夏)
小さなガラス玉のようなかたちの中に、墨汁を垂らしたように黒い線がゆらりと流れている。(井上暁海 三十歳 夏)
黒い線は消えて、風が吹き抜けているかのように小さなガラス玉の中がゆれている。とてもきれい。(井上暁海 三十二歳 春)
中のゆれがぴたりと止まり、すーっと透明感が増していく。(井上暁海 三十二歳 夏)

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