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#99 はやぶさ2の着陸地点をJAXAが相談してくれた深いワケ

ここにきて、なぜ突然「はやぶさ2」の話かといいますと、先日発表を行ったそうで、いろんな分析結果が出てきました。

記事を紹介します。これは産経新聞です。

探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星りゅうぐうの砂粒の試料に含まれるガスの分析から、りゅうぐうは約500万年前に現在の地球に近い軌道に移動してきたことをJAXAなどが突き止めた。
地球外の天体からガスの成分を気体の状態のまま採取したことを確認したのは世界初。

産経新聞

とあります。そして、なんとこのガス、46億年前の太陽系誕生以前のガスが含まれているということで、いやはや、もう何か数値が全て大きすぎて想像がつかないのですが、こうした発表がありました。

このりゅうぐうの分析を見てですね思い出したことがあります。むかし、JAXAに取材に行ったことがあります。

着いて初めてわかった衝撃の「地表」

「はやぶさ2」は2014年12月に打ち上げられて、それから3年半もの月日を経てりゅうぐうに到着しました。そこで、まず真っ先にオペレーションチームを驚かしたのは、現場の地表だったそうです。

当初、砂地を想定していたんですね。でも着いてみたら、カメラで送られてきた映像を分析すると、岩がゴツゴツしていた。本来、砂地であるからこそ着陸が簡単であろうと思っていたのに、これどうするんだと。みんな驚いたそうです。

まさにそのときに取材に行きました。着陸する直前の説明会のようなものですね。そこで、確かに写真を見させてもらうと、すでに公表されている写真なのですが素人が見ても明らかに、岩だらけ。探査機そのものにいろいろな出っ張りがありますよね。その出っ張りが、もしその岩とかに当たってしまうと本体はそのまま真っ直ぐ降りたとしても、出っ張りが岩にぶつかり、ずれて倒れるなど、いろいろなアクシデントが予想される。

だから、どこに着陸しようかまさに悩んでいるときだったんです。記者発表を聞いていてなるほどな、これはなかなか難しい問題だな、なんてことをずっと思っていのですが、記者発表が終わった後、どうぞ皆さんもっと手前に来てみてみてください、と呼んでくださり、その写真をみんなで見守りながら、責任者の方にいろいろ質問をしていたら、その責任者の方が「ちなみに皆さん、どこが着陸地点としていいと思いますか」と、その写真を見ながら聞くわけです。

何年もかけてこのはやぶさ2に、なんなら人生を懸けるぐらいの勢いで熱意を注いできた。そして、いよいよ着陸する。試料を採取する場所に着陸しようとするときに、初めて来た私達に対して「どこがいいと思いますか」と聞くわけですよ。これは衝撃でした。

でも、分析するにしてもその写真データから読み解くしかない。与えられている情報は一緒なのです。だから、その写真をみてみると、あきらかに大きな空き地となっているところがあったので「やはり、このあたりがぱっと見、一番広くて安全な気がしますね」と話してみたら、その責任者の方が「そうですよね。やっぱりそこですか。私達もそこだと思っているんですよね。でも見てください。ここに、この大きさの岩、これ写真だと小さく見えるけれども、高さが数mあるかもしれなくて、そうなるとぶつかるリスクもあるんですよね」なんてことをその場で答えてくれました。

結局、この場所を含むいくつかあった候補のうちのどこに着陸したかはわからないのですが、その時は感動しました。

柔軟性こそがプロジェクト成功の鍵に見えた

この柔軟性こそが、この組織、このプロジェクトを成功に導いてるんだなと。大概、プロジェクトを発動させる場合、想定する目標やゴールがありますよね。がむしゃらにそこに向かっていくと、どうしても途中でいろいろな壁があったり、その最終ゴール地点をちょっと変えることを余儀なくされたりします。でも、頑なにそれをどうにかして貫こうと思うと、かえって失敗するパターンというものがあります。

JAXAのオペレーションルームなどもその日に見たのですが、すごく和気あいあいと、まさに楽しそうに、本人たちも言っていたのですが、まさに部活のようなノリ、研究そのものを軽視しているわけではなく、みんな一丸となって楽しんでいこう、このプロジェクトを成功させよう、そんな雰囲気に満ち溢れていました。

だからこそ、門外漢のある私達に対しても、これどう思いますか、この岩は大きいですよね、この場所はいいと思うんですけどね、そんなふうに柔軟性をもって会話を楽しむことができる。

このプロジェクトが失敗するわけないと、あのとき僕は思いました。

自分がやったほうが早いけれど

今、自分はプロデューサーをしています。企画VTR、大体3分半前後ですね、その企画立案、監修などいろいろやっています。いろんなネタを毎日、毎週、新聞見たりテレビ見たり雑誌読んだり、直接いろんなところに出向いたりしながら探しています。22年ほど報道をしていますので、僕が見つけてきて取材して原稿を書いて、というのが一番手っ取り早いです。

しかしそれだと、後輩たちが育ちません。

だから、20代の子たちにやりたいこと、何でもいいから、企画を募集しています。ぶっちゃけると、成立するのは10本持ってきたうちの1本くらいです。残りは、いやいやこれどうやって映像化するの、と突っ込みたくなるものもあります。でも、広く声をかけることによって、自分が全く想像もしえなかったネタを持ってきてくれることもあります。また、20代の目線で見たときの彼女・彼らの関心は、こんなところにあるんだな、という発見もあります。

どうしても40を過ぎると、企画として、こういうパターンなら成立する、というものが頭の中に成立してしまっているので、どうしてもその枠から抜け出せなくなってしまいます。でも、20代の子たちの案を見ていると、確かにこういう目線でやると面白いなっていう気づきがあるわけです。

だからこそ、型にはまったものではなくて、いろんな新しいアイディアが生まれてくる。そんなことを今、中間管理職の立場になって感じています。

顔には出さないようにしていますが「いやいやこれ、どうやったら成立するの」と心の中で突っ込むものもたくさんあります。おそらく自分も若い頃そういった案をたくさん出してきたんだろうな、なんてことを思いだしながら、苦笑いしながら話を聞いていますが、それでもやはりルールや型にはまったものから新しいものを生み出すためには、そういった柔軟性、まさに「聞く力(もうほぼ死語と化していますけれども)」そういったものが、必要なのではないかな、という気がしています。

(voicy 2022年11月2日配信)

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