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自分の思い通りにならないからこそ没頭できるのです。

以前、自己否定する必要は無い、ということをここに書いた。

もう一つ、私のやりがちな思考のクセとして、自分自身を過小評価してしまっているのではないか、という気がする。

これは、よく言えば「謙虚である」という言い方ができる可能性もある。しかし、心理学的な「謙虚」の定義は、「自分の立ち位置を正確に見極める能力が、平均以上に高い」ことらしい。

つまり、「謙虚な人」というのは、「自分を過大評価も過小評価もせず、自分自身を正しく見極められる人」のことを指しているということだ。したがって、自分自身を過小評価する人は、謙虚な人とは言えないのである。

この今の自分の気持ちを捉えて、助言をくれているように感じた記事にたまたま出会った。

少し長いが、印象に残った部分について抜粋・引用する。

 僕たちは誰しも、「自分はこんな人間だ」「自分の実力はこんなものだ」という認識の枠組みを持っています。それはたいてい、実際にその人の身体や心が備えている可能性よりも、小さな枠組みです。「今の自分に自信を持つ」ということは、今の自分の「小さな枠組み」を過大評価することにほかなりません。でも本当の自信が欲しければ、どれほど小さくても、自分の認識の枠組みを破り続けることが必要なのです。
 しかし、自分の枠組みを打ち破るためには、対象に没頭し、我を忘れる必要があります。では、我を忘れるためには、どういうことに取り組めばいいか。それは突き詰めれば、「自分の自由にならないもの」に向き合う、ということなんだと思います。
 自分の思い通りになるものに対して、僕らは没頭することができない。不思議な話ですけど、これは本当のことです。自分の思い通りにならないものだからこそ、僕らは夢中になることができる。ままならない、自由にならないものだからこそ、僕らはそれに没頭し、自分の枠組みを破ることができるんです。

名越康文

確かに、何かに没頭していた時期が私にもあった、と振り返って思う。また、今の私が感じているこの停滞感は、「何でも思い通りになる感覚がしてしまっている」ことが本質的な問題なのではないか、とも思えてきた。

今自分が取り組んでいる「研究」を題材に考えてみよう。

一般的な自然科学研究では、多くは実験的なプロセスを通して対象の現象理解を目指す。自然界を相手にした実験は、どれだけ精度を上げようと努力しても、何かのファクターによって結果が変動することがある。自分自身の設定した条件通りにいかないこと、思い通りにいかないことなどザラである。だからこそ、自然科学の研究者はそれに没頭できるのである。

しかし、今自分が取り組んでいる研究テーマは、一般的な自然科学と比べると少し特殊で、その形態だけを取り出すと数学研究に近いものがある。自分が置いた仮定(公理系)を基に論理を展開し、出てきたアウトプットにどういう意味があるのかを考える。そして、その論理が現実世界の何を説明しているのか、どのように有効活用できるのかを考える。

基本的に、論理的思考というのは、前提となるいくつかの仮定が定まれば自動的に結論が導かれてしまうものであり、そこに何かのファクターが介在することは少ない。だから、自分の設定した公理系次第では結果が変動するが、ある公理系を設定したときに得られる結果は自分の思い通りであることが多い。そしてそれは、自分で構築したモデルを使ってシミュレーションをして得られた結果を見るときも同じ構造であると理解できる。

したがって、自分の研究においては「自分の自由にならないもの」が少なかったのかもしれない、と思うに至った。

「これまでの理論や自分の理論では説明できない何か」が捉えられていないから、没頭することができていないのではないか。

一方で、例えばこれまで取り組んできた「人間を相手にする集団活動」は、どれだけ自分が頑張ったとしても、それが報われる瞬間と報われない瞬間の両方があるわけで、だからこそ、それが報われるように頑張ったり力を注いだりすることができていたのかもしれない、と思った。

「思い通りにならない」と思うから「思い通りにしたい」と頑張れるのであり、人間の欲望やモチベーションの源泉はそこにあるのかもしれない。

これまで私が言ってきた「欠乏感」や「枯渇感」というのも、それに類する概念だろう。自分が何か思い通りにことを運ぼうとしたときに、今の自分には足りない知識や考え方があったから、それを頑張って身に着けてまで実践してみよう、と思えたのである。

そうして「思い通りにならないこと」に向き合ってそれに没頭し、学びと実践を繰り返すことによって、自分の枠組みを破る。このことによって、これまでの自分が持っていた「小さな枠組み」がより「大きな枠組み」へと変換され、過小評価していた自分自身を、過大評価を経て適正評価に変えていけるのである。

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ともやの思考整理note
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