組織へかかるストレスと適応
細胞はストレスに反応し、そのストレスに対しての耐性をつけていきます。
例えば、筋肉で考えると、筋トレなどで「機械的ストレス」を与えることで、筋繊維がダメージを負い、炎症プロセスを経て、筋繊維の再構築を行います。
機械的ストレスの「量」を増していくことで(いわゆる重量や回数アップ)、徐々に筋繊維は太くなり強くなっていきます。
このことからも組織の成長には「機械的ストレス」のような刺激を与えることが必要になることがわかります。
しかしながら、組織によってかかる機械的ストレスに対して起こる反応が異なります。
対象とする組織の繊維構造によって、与えるストレスを変えなければなりません。
適応するストレスによって組織はターンオーバーを促進するので「組織とストレスの種類」を理解することは必要不可欠です。
なので今回は「ストレスの種類」と「そのストレスに適応する組織」のご紹介をしていきます。
ストレスの種類
・張力(牽引)ストレス Tension
組織が長軸方向に離れた方向にかかるストレス
腱や強固な靱帯などの密性並行性線維構造がこのストレスに適応
・圧迫ストレス Compression
半月板など密性の網目状線維構造体がこのストレスに適応
・剪断ストレス Shear
最も疎性性の線維構造に適応しやすいストレス
基質成分の生成を促し組織粘性を低下させ滑走を促す
・捻転(ねじれ)ストレス Torsion
スクリューのような捻じりのストレス
機械的ストレスとして反応は少ない
高速の捻じりは関節包などに含まれる機械受容器の感知に関与
・曲反ストレス Bending
様々な方向へかかり、かからなくなったら組織が元に戻るストレス
粘性の多い疎性性の線維構造にかかる
線維芽細胞はこのストレスには反応しない
現場での落とし込み
施術の場合、腱や靱帯へのアプローチであれば、繊維方向に対して持続的に圧をじっくり加えていくと効果的な反応が出るかもしれませんし、
ウォーミングアップで椎間板や半月板のクッション性(水分量アップ)を目的にするのであれば、軽くその場でジャンプさせるのもありかもしれません。
また、可動域が低下している箇所であれば、結合組織(ファッシア)の影響が出ている可能性は大いにあるので、制限をかけているであろう筋に対して少し圧を加えた状態で関節を動かしてあげるだけでも可動域が改善するかもしれません。
手技や運動指導のスキルアップはとても重要です。
しかし、そこにもうワンプラス!
効果を最大限に発揮するためには、やはりアプローチの対象である組織を理解することが大事なのではないかと私は思います。