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〈徹底解説中野拓夢〉~なぜ2番中野は機能するようになったのか~
はじめに
今シーズン、阪神はここまで首位を走っている。交流戦でややつまずいてしまったもののチームはここまで38勝24敗2分けと大きく勝ち越している。そんな好調なチームを攻守両面で支えているのが中野である。
昨年、主に1番ショートで起用されることの多かった中野。しかし、岡田監督に代わって迎えた今シーズンは、2番セカンドを主戦場とするようになった。ポジション、打順ともにコンバートされることとなった中野だが、結果としてこのコンバートは大成功となった。そのため、本記事では、中野について取り上げていく。
去年までの2番中野がうまくいかなかった理由
今シーズン主戦場としている2番であるが、2021年、2022年も中野は2番を務める機会はあった。しかし、昨年まではあまり機能的でなかった。その理由は、中野の打撃スタイルにある。昨シーズンまでの中野は初級から積極的に打ちに行くスタイルであった。このスタイルは、1番を打つ近本との相性が悪い。近本は盗塁が得意な選手である。当然であるが、盗塁するには打者は少なくとも1球は見送らなければならない。そのため、盗塁がしたい近本と初球から打ちたい中野は非常に相性が悪い。結果、昨年までの近本、中野の1、2番コンビでは、互いの長所が発揮されなかった。
今シーズンにおける中野の変化
岡田監督は就任以来、1番近本、2番中野の構想を明かしていた。しかし、前述のように近本、中野における1、2番コンビの相性の悪さを危惧していた私は、開幕前から不安でいっぱいであった。
そんな中迎えた今シーズン。私の予想は良い意味で外れた。中野のプレースタイルが大きく変化していたのだ。昨シーズンまでとは大きく異なり、追い込まれることを嫌がらず、ボールを慎重に選ぶ打撃スタイルになったのだ。このことによって、近本、中野コンビにおける相性の悪さは解消された。このことは、現在近本が盗塁数リーグトップであることが証明している。
また、今シーズンはフォアボールの数が増え、出塁率が高くなった。中野のような出塁率の良い打者が2番にいることによって次のメリットがある。1、2番ともに出塁率が高いため、クリーンアップにランナーをためた状態で回しやすい。1番の近本が塁に出た際、中野がフォアボールやヒットで繋ぐことによって、クリーンアップにランナーを複数置いた状態で回すことができる。このことは、セリーグ打点ランキングにおいて大山が4位、佐藤が5位と高順位につけていることからも分かる。特に、佐藤は打率.233、得点圏打率.224と打率、得点圏打率ともに決して高くはない。それにもかかわらず、打点ランキングで5位となっているのは得点圏かつ複数ランナーを置いた状態で打席が回っている機会が多いことがわかる。
従来のようなバントや進塁打といった繋ぎの役割を求められるような2番であれば、複数ランナーが貯まる機会は少なく、得点力は今よりも劣っていたかもしれない。
終わりに
今シーズン攻守両面で大活躍の中野。彼の活躍でチームを優勝に導いて欲しい。