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Индустар 50-2 f3.5について詳しく

ロシアKMZ社からのレンズИндустар 50-2 f3.5について書きます。


Индустарの誕生

1945年の終戦からドイツは東西に分裂し東ドイツはご存知社会主義経済になりました。
いわゆる現在のチェコ、スロバキア、ポーランドと共に社会主義経済を行っていたソ連含めた東側は次第に安定供給ができるように公社の統合や変遷を遂げていきます。

これが複雑化して大変ロシアのレンズはある意味で奥の深い産物になりました。

ロシアの公社企業

ロシアの公社にはさまざまあります。UAZ、KAMAZなどの自動車産業、レンズでは何かと話題なキーウ(キエフ)のДержавне підприємство завод «Арсенал»、通称アーセナル、そして飛躍してカメラ製造のZENIT、Красногорский Механический Завод、通称KMZです。アーセナルとも製造で関係を持っています。他にも様々ありますが昨今の情勢のようにハルキウ(ハリコフ)にあったりなどやはり関係性は微妙な状態…良くないよ戦争は。

今回のインダスターの製造元KMZは1942年に設立。アーセナルやMMZとはまた違ったプリズムに光線が入った状態を描写するロゴマークです。

インダスターの設計の根源はZENITカメラにつけるための標準レンズの開発と製造をするためです。

設計と開発について

設計自体は質素なテッサー型、文献にはパクリや東西分裂ドイツ時に東に残ったメンバーが設計書を持ち込んだ、東ドイツやウクライナ、チェコなどにいた科学者がソ連工場に持って行ったなどありますが明確にはわかっていないそうです。ただ設計のほぼ全てを行ったのはミハイルドミトリエビッチマルツェフ博士ということです。マルツェフ博士がテッサー型から着想を得て構成されたレンズということは分かっているそうです。

Индустар 50-2 f3.5の前身、Индустар 50 f3.5 ZENITマウントはシルバータイプの鏡胴でZENIT C用のカメラとして製造されたようです(東ドイツカメラの全貌ほか文献から引用、一部サイトにも同じ情報があるようです。)

その後M39マウントから需要が拡大しつつあったM42マウント版を製造、鏡胴をブラックに変えて販売しました。当然マウントと鏡胴の色を変えただけなので描写も全く同じでコーティングもありません。そして開放F値もF3.5。無理がないテッサータイプなので描写は折り紙付きです。

おおむねの概要はこのぐらいです。テッサーのものなので3群4枚のガラスで特段何か光学についてここが特殊、などのことはありません。

M39(ZENIT)からM42へ

転換時期は良く分かっていないそうですが、1960年代後半、1970年代前半という具合に見られているそうです。自分の所有物は1972年製でこの頃にはもうすでに出ていたのでしょう。ただ69というロットも見たことがあるのでもう少し前なのかもしれません。

このインダスターは輸出、国内販売、社会主義国内販売と3タイプあるそうですが、後者二つは同じ仕様だそうです。国内版はキリル文字で名称が打たれ、輸出版は英字になっているようです。ただ国内版でも様々変更があったようで自分のは鏡胴にMade In USSR.とありますが、Twitterの方ではその表記のないキリル文字版があるようであまり時期がはっきりしていません。

ビルドクオリティについて

ビルドクオリティは良くありません。やはり東側のレンズ。状態の良くないものも多くかと言って摩耗部品も多くオークションで買おうとすると全然ダメでかえって後悔する事例もよくあります。

ですので中古、やはり整備品を買うことをお勧めしています。自分のものも7000円弱で光学がしっかりしているものを前オーナーから購入させていただきました。

ネット中古品でもよくある6000円台、安くてもまあ3000円ぐらいからかなという印象です。チェコ、スロバキア、ロシア周辺のネット通販サイトやアリエク等等は曲者があります。

特徴

特徴はやはりロシアレンズですので癖があります。

距離計

最短撮影距離は0.65m。前述の通り、開放F値はf3.5、3群4枚のテッサータイプレンズで非常に開放からシャープなレンズです。また白黒フィルム時代の独特なノンコートガラスは特徴的な虹色のフレア、ゴーストを出します。そして何よりコントラストが落ちる。このコントラストの落ち具合がおそらく好みの分かれる部分であると思います。

またボケ方にも特徴があります。ボケ方は開放では3.5という数値であるにもかかわらず意外にもボケてかつ外側が渦巻くぐるぐるタイプ。植物を撮影するのにはうってつけかもしれません。真ん中にもってくる基本的な撮り方では簡単に重宝できるものになりますが、風景となると、どうでしょう。

周辺減光も強烈でなかなかに濃く出るのが特徴です。APS-Cタイプのカメラであればそこまで目立つわけではない、、とも言い切れず目立ちます。周辺減光や周辺に流れが出てくる描写をするレンズが苦手ない人には向いていません。

作例(随時更新)

PENTAX K-7
(K-7への取り付けにはアダプターを必要とします)
これも以下4枚は未編集です。JPEG
ツツジ、いろんなとこにいるよね…
少し落ちるとこんな味に
実はこれでも+0.3ev

使用感、描写について

使用感はそのままレンジファインダーレンズを使用しているイメージ。鉄製でトルクも悪くなく、程よいです。逆光でなくてもサイド光、場合によってはそれ以外の場合でもコントラストが落ちて曇ったかのようなフレアが出たりします。決して曇りレンズではないのですがそう映ります。これをどう捉えるのかは人それぞれということでしょう。

小さすぎるゆえのパンケーキレンズはデメリットになりかねない事象でもあるピントリングの薄さですが、やはり感じるところ。一眼レフだと尚更マウントから上の軍艦部でほとんど隠れてしまうぐらい細いので少し確認に手間取ります。

描写には関しては折り紙付きのドイツからのテッサー技術。中心点は非常に解像感があり現代レンズにも近い部類です。先述のように開放では外側に周辺減光と流れがありお世辞にも綺麗な解像はありません。

絞ると一気に周辺減光も改善されて解像はしますがフレアなどの問題から若干コントラストが低下するイメージがあります。すぐにコントラストが落ちることでも知られているためメリハリのある描写、というよりは柔らかい肌のきめをやさしく写すようなポートレート描写、というのがやはり作例を見てからも感じます。(最近はこれに肌のきめを細かく写すポートレートもあるぞとかいう方もいますが、、知らんがなっていうね、楽しけりゃいいんだよ楽しけりゃ)

東ドイツカメラと融合、時代も「間違い」ではない

無段階絞り

絞りを調整するリングは前側についており目盛りを読みながら確認して露光しますが、この絞りリングはピントリング同様無段階でどこに今その絞りが来ているのかはわかりません。ある意味これのほうが使いやすいという人も一定数いるそうですが、さすがに使いづらい、という意見の人のほうが圧倒的に多いようです。簡単に動くので。

ロシア製レンズ?ソ連製レンズ?

非常に難しい議題になってきます。ロシアレンズはロシアレンズと言ってもZENITやZORKIなど有名どこはそれこそロシア、今もずっとロシアの土地で作られたものです。

しかしFEDなどのカメラに関してはウクライナ、PRAKTICAに関しては当時から東ドイツ、という枠組みですが当然ソ連領(というのは語弊があるが)サイドということになります。

ウクライナはFEDが有名でしたがそこからもレンズが良く作られていました。

インダスターという名も61というレンズがあるようにウクライナでも同様に利用されていました。当たり前ですがソ連解体まではウクライナは明確にソ連領だったという歴史がありますので前提のような話です。

そもそも工場ごとの製品、というわけでもなく集中経済をとっていたソ連ではこの製品がどこで製作されたなんの商品、みたいな明確なものがないのは一般教養としての事なので今回は省きますが、果たしてこれがKMZ以外の製品であったかどうかについては言及できません、分からないのですから…(61もFED工場で主に作られたというだけで普通に現ロシア国内工場でも作られていたという話は聞きますので)

醍醐味

ロシアレンズは良くも悪くも奥の深いレンズ。それのうちのИндустар 50-2 f3.5はまさにその醍醐味を感じるための前菜。最初のレンズと言えるべきもの。

制作期間も長く、かつ球数が非常に多い分日本への流通量も非常に多いとは言えませんがかなりあります。最近では絞りに油が引いてきて動かないなどのトラブルがだんだん増えてきているようで正常動作する分は少なくなってきているのかと思います。

ある意味ではゾルキー系列のコピーライカ、ゾナーのコピーなど当時の世界情勢を見てみながら考えられるレンズでもあるのが当レンズ。どのような経緯でどう開発されたのかが知れるようになっている今こうしたレンズは奥の深い、底なし沼への入り口となってくれているはずです。

これを東ドイツのカメラに装着してみるとさらに面白いことになります。東ドイツのカメラ企業とそれを仕切っていた大元のソ連企業の産物。実に相性がいい。自体こそずれ込んだりしているように感じるかもしれませんがプラクチカのカメラにつけるとそこそこかっこいい仕上がりになってくれます。

マルツェフ博士について

マルツェフ博士(Михаил Дмитриевич Мальцев)は1914年に生まれたロシアの光学開発等を行った研究者。ベルテレ氏とCarl Zeiss Sonnarシリーズの制作にも関わったとの文献もあるようで実際辻褄は合います。
大きな活躍は1940年代の後半からの中央設計局からの指令で作られた光学設計局(OKB)が設立されてからになります。

やはりクラスノゴルスクにはドイツ人の設計に携わっていた人物がいたようで恐らくこれがベルテレ達なのでしょう。

彼はここからさまざまな技術を勉強したのちにJupiterシリーズや後々Индустар 50-2 f3.5などのシリーズを開発してロシアでの高額製品事業の第一人者として有名になったそうです。彼が作った技術からのレンズはのちにZENITなどでも応用されたりなどして開発はさらに進んだようです。

Под руководством М. Д. Мальцева и при его непосредственном участии были пересчитаны Carl Zeiss Sonnar 50/1.5, Carl Zeiss Sonnar 50/2, Sonnar 85/2, Sonnar 135/4 и Biogon 35/2.8, получившие названия соответственно «Юпитер-3», «Юпитер-8», «Юпитер-9», «Юпитер-11» и «Юпитер-12» (все — для фотокамер «Зоркий» и «Киев»).

Им разработано большое количество объективов, в том числе такие известные как «Индустар-22М» и «Индустар-26М» (модификация для зеркальных фотокамер), «Индустар-50», «Индустар-61», «Индустар-63», «Юпитер-17»; для фотокамеры «Москва-5» — «Индустар-24»; для фотокамеры «Зенит» — «Юпитер-21» и «Телемар-22» со Знаком Качества, для кинокамеры «Кварц» — «Юпитер-24», для кинокамеры «Красногорск» — «Вега-9» и многие другие. При этом ряд объективов производился позднее массово и на других заводах.

Wikipedia転載 Индустар

Объектив «Индустар-50» в разных исполнениях: для фотоувеличителей; с выдвижной оправой; в жёсткой оправе для дальномерных (в центре) и зеркальных фотоаппаратов с резьбой М39×1; вариант «Индустар-50-2» с резьбой М42×1

Wikipedia同上

Для дальномерных камер выпускался в двух вариантах — в складной оправе, аналогичной «Индустару-22», и жёсткой, унифицированной с объективами для зеркальных аппаратов «Зенит». У дальномерного «Индустара-50» легко отворачивалось удлинительное кольцо и толкатель дальномера, после чего объектив мог быть установлен на фотоаппараты «Зенит» с креплением M39×1. Объектив рассчитан в 1953 году Михаилом Мальцевым[27].

Wikipedia同上

papago翻訳サイトは以下。(ロシア語翻訳の参考に。)

インダスター-50 50mmF3.5 - 3群4枚構成のテッサーコピー。スクリューマウント。このレンズは概ね固定鏡胴だが、エルマーコピーの沈胴式鏡筒もあり、沈胴式の方が古い。固定鏡胴は白鏡胴と黒鏡胴の2種類ある。白鏡胴には薄型のパンケーキレンズ[注釈 17]があり、ライカスクリューマウントとゼニットマウントの両方のバージョンがある。同じ光学系でプラクチカマウント(M42マウント)の黒鏡胴パンケーキレンズインダスター50-2 50mmF3.5も製造された。アタッチメントは沈胴式はφ36mmかぶせもしくはφ36mmはめ込み。固定鏡胴はφ36mmかぶせ。主にクラスノゴールスク機械工場(KMZ)が生産した。

ライカマウントレンズの一覧 Wikipedia

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