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PYPにおける教科横断的な学びとは何か?
サニーサイドインターナショナルスクールの初等部で「PYPのつくりかた(リンク)」を参考にしながら授業実践をしています。
国際バカロレアのPYPのカリキュラムでは教科を横断した学びを行っており、教科の枠を超えたテーマというものがそれぞれのユニットに設定されています。これについては後半に詳しく述べていきます。
「では、なぜ教科を横断した学びが必要なのか?」
PYPでは、各教科ごとに児童を教育する必要性も認識されていますが、これだけでは 不十分だと考えられています。同様に重要なのは、実践に即したスキルを習得すること、 児童に関連の高い内容を探究すること、そして既存の教科の垣根を越えて学習することです。
「真の意味で教養を身につけるには、児童はそれぞれの教科の間に関連を見いだし、 別々のテーマを統合する方法を発見し、最終的には学んだことを自分の人生に関連づける ことができなければなりません」
「PYPにおける教科の枠を超えた学びとは何か?」
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私の考えでは、PYPは一番右側のケーキをつくるような学び<Trans-disciplinaryのカリキュラム>を目指していると考えています。 一般的には、教科カリキュラムが多くの公立学校で採用されており、各教科の中で、知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性を学んでいきます。その一方で、PYPのカリキュラムでは、教科の枠を超えたテーマというものが設定されており、児童は複数の教科間に関連を見出し、教科を超えたテーマを通して、学んだことを実生活に応用するスキルや見方・考え方を学んでいきます。
「改めて、なぜ教科を超えた学びが必要なのか?」
ここで最近報告されたPISAの学力調査の結果を見て考察していけたらと思います。私自身、フィンランドの教育の動向を見ていたので、今回の結果は私の中でもこれからの教育を考える上で考えるヒントになりました。
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これまで世界の教育の中で注目を受けてきたフィンランドですが、近年フィンランドのPISAのスコアが下がってきている傾向が見られます。一方で日本の子どもたちの学力は、国際的に見てもトップレベルという見方ができます。更に日本では、学力格差も小さくなってきており、これは日本の公教育のどの地域に住んでいても等しく教育を受けることのできることを示しており日本の教育システムの強みでもあると思います。
一方でこんなデータもあります。このデータは、日本財団が、行った「18歳意識調査」で、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツと日本の17~19歳各1,000人を対象に国や社会に対する意識を聞いたものです。
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このデータから分かることは、日本は他の地域と比較すると、「自分で国や社会を変えられると思う」人は5人に1人以下となっており、学校教育と教育と社会でおきていることが子どもたちの中で繋げることが難しくなっているのではないかなと思います。今日本では、受験というシステムがあることで、学ぶ目的や学ぶことがテストや試験で点数が取れるような学びに意識が向いてしまう社会的な影響があるようにも思います。
これは、教育基本法で定められてる「社会の形成者として必要な資質」が社会の中で育まれているのかどうか疑問が浮かび上がってきます。
実際に文部科学省も以下のような方針を出しています。
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これからの教育理念として「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」ために、「社会に開かれた教育課程」と各学校におけるカリキュラムマネジメントが鍵になっていきます。
ここにアプローチできる方法の1つとして国際バカロレアのPYPの教科横断的なカリキュラムのあり方が参考になるのではないかと思い、PYPでの授業実践をこのnoteで報告していけたらと思いました。
* 個人的に気になるフレーズ
学習内容の削減は行わない。
学習内容(事実的知識)は減らさずに、これからの時代に必要な概念的知識をいかに育んでいくのか。もちろん、事実的知識がベースに概念的理解が育まれるのですが、例えば歴史の授業を縄文時代から現代史までを浅く広く学ぶのがいいのか、或いはある時代にフォーカスして、1つの歴史的な出来事が過去からどのような影響を受け、未来にどのような影響を与えているのかを様々な情報を関連づけてみていくような学び方がいいのか。もちろん、唯一無二の教育メソッドはないけど、今は全てを得ようとしている感じがあるので、本当に大切なものを子どもたちが学べるような授業を模索していく中での気づきや葛藤も含めてシェアできたらと思います。
参考文献
・日本財団「18歳意識調査」第20回 テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)(リンク)
・文部科学省「新しい学習指導要領の考え方」(リンク)
・Disciplinary recipes: a visual guide!(リンク)