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パラレル登校という考え方

私が携わっている夢中教室で、8/29~9/15の期間で不登校に変わる#パラレル登校という言葉を広げるためのハッシュタグキャンペーンを行っています。
今回このテーマでnoteを書いたのは、長い夏休みを明けて新学期が始まるこの時期に、学校へ登校することに心理的な負担が感じやすい時期でもあるからです。
「もし、子どもが"学校を休みたい"という声をあげてくれたら、身近にいる大人(教員、親)として、子どもにどのような声かけができるでしょうか?」

このnoteはこの問いについて少しでも考えるきっかけとなれたらと思っています。


「パラレル登校という言葉を聞いて皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか?」

夢中教室資料参照

代表の方も「パラレル登校」について考えをまとめているの以下のnoteを読んでいただけたらと思います。

そもそも私が教育に興味を持ったきっかけは、不登校の児童生徒が日本で増えていく中で、この現象に対してどのように学校現場で働く1人として向き合っていけばいいのか、大学3年生の時に疑問にもったことがきっかけでした。

さて、今回のnoteでは子どもの幸福度の高い北欧諸国(今回のnoteではフィンランドとオランダの教育を事例)では様々な理由で学校に行くことが難しい状況にある子どもたちにどのように向き合っているのかを実際に現地で見たり聞いたりしてきたことをまとめていけたらと思います。

・ オランダの事例

オランダの教室の様子

私が初めてパラレル登校という考え方に出会ったのは、オランダでとあるホームステイ先の保護者の方に出会ったことがきっかけにあります。

私は、オランダの学校と家庭を訪れた時に、次の質問を「日本でいう不登校の子どもをもつお母さん」に投げかけてみました。

前提:オランダは究極の学校選択制をとっています。
オランダでは,憲法 23条の中で,「教育の三つの自由」が保障されている。この三つのことに,国は一切口を出さない。  
① 設立の自由
▶︎ 200人の子どもを集められれば、自分たちで学校を作ってもよい。
② 理念の自由    
▶︎ 宗教色を出しても、他のことで特徴を出しても良い。  
③ 教育方法の自由  
▶︎ 教育内容、教材の裁量権が自由
等「教育の自由の伝統」がある。 また,オランダの学校全体の 4分の3 以上は私立の学校であるが,公立も私立も国の援助は,まったく一緒である。学区はなく、保護者と子は、自分の行きたい学校を自由に選ぶことができる。

参考「オランダの教育事情について(リンク)」

Q:「もし、自分の子どもが学校に行かなくなったらどうしますか?」
A:「その子に合った学校を探すわ。或いは一定期間は家で教えるかな。」
Q:「そもそもオランダには不登校という考え方はあるのか?」
A:「日本でいう不登校という考え方とはちょっと違うかな。」
Q:「どういう意味でしょうか?」
A:「学校に行かなくなったのは、うちの子どもはこの学校と合わなかっただけで、この子にあった場所を探すわ。そしたら学校にまた通えるようになるでしょ。」
では、具体的な事例を見ていきましょう。

- 事例:学校に行きたくない子どもがいる事例

この家庭の子どもは、週に3日はA SCHOOL、週に2日はB SCHOOLというように2つの学校に通っていました。話を聞いてみると、この子はIQが高く、集団よりは個別での指導で伸びるとお母さんは話します。「でも、将来自立して行きていくためにも、集団の中でも生活する力は大切。」結果として、週に3日は、集団の中で学ぶA SCHOOL、週に2日は個別指導のB SCHOOLに通う選択肢をとっていました。

これはあくまでも1つの事例ですが、子どもが学ぶ環境を親が選択するのはリスクがあるとも感じました。親のもっている教育への知識が子どもの学力に影響を与えるリスクも感じました。一方で、学校選択制であるで、教育が「ジブンゴト」となり関心の高い親も多いです。具体的には、学校に全てを任せるのではなく、積極的に学校運営に携わるためにボランティアで関わる親が多い特徴がありました。

・ フィンランドの事例

フィンランドの教室の様子

フィンランドでは、ソファに座って学ぶ子どももいれば、床に座って学んでいる子どももいます。「どうやったら自分は集中できるのか?」子ども自身で試行錯誤をしながら、学ぶことで、リラックスして学習に取り組むことができています。

「このように、リラックスした環境で一人一人に合った学び方が尊重されているフィンランドやオランダの教育現場では、不登校という概念そのものは存在するのでしょうか?」

結論は、驚くことに学校に通うことに躊躇する子どもは沢山いるそうです。まずは、どれだけ環境を整えても、学校に行くことに抵抗感が生まれてしまう子どもは出てくることを知って欲しいなと思いました。学校に行けない状況になってしまうことに対して、教員だけが負担に思ったり、親だけが負担に感じることはないことをまずは理解することが、子どもとゆとりをもって向き合うことにつながんるのではないでしょうか。

そもそもの前提としてフィンランドの法律ではこのように定められています。

In Finland, compulsory education is not strictly about attending school but rather about ensuring that all children receive an education. This compulsory education starts with comprehensive school (grades 1-9) and continues until the age of 18 or until the student completes an upper secondary qualification, whichever comes first.
The law allows for flexibility in how education is delivered. While most children attend public schools, which are free of charge, parents can also choose to homeschool their children, provided that the education they receive meets the national curriculum standards. This system is designed to ensure that every child gains the necessary knowledge and skills, regardless of the setting.

参考:Ministry of Education and Culture, Finland

要約すると、フィンランドの義務教育の考え方は、すべての子どもが平等に質の高い教育を受ける権利を持つという理念に基づいています。しかし、これは「学校に行くことが義務である」という意味ではなく、「一定の学力を身につけることが義務である」という意味合いを持ちます。

- 事例:学校に行きたくない子どもがいる事例

今回、2024年の夏に訪れた学校でも、担任の先生が学校に通うことが難しい子どもに対して学校としてどのように対応したのかをシェアしてくれました。
具体的には、まずは先生が学校にいけない子どものお家を訪問して、「あなたもこのコミュニティの1人であること」を伝えるそうです。そして、いきなり教室に通うのではなく、その子の安心できる場所を広げていくようなステップで、校長室への登校から始めて、徐々に少人数学級、最終的には教室で学べるようになったことを話してくれました。また、担任1人がこの課題の責任をすべて負うのではなく、カウンセラーの方や教員同士がチームになって一緒に考えることを大切にしているようでした。この学校コミュニティのあり方がベースにあるからこそ、教員も安心して児童をサポートすることができ、安心して子どもたちも通える学校になっていると感じました。

このアプローチの方法は、日本の学校現場のアプローチと似ているところがあるように思えました。大事なのは、大人が焦るのではなく、子どものペースにどこまで伴走できるのかが鍵になると思いました。ゆとりをもって伴走するための心理的に大人をサポートする人、チームで動いていく学校内外の組織、専門家との協力体制などの人的資源が充実しているからこそこのアプローチは機能していると思ったので、この丁寧な対応を担任1人で責任を抱え込むのはとても難しいように思います。
では他のいくつかの事例も見てみましょう。

- 事例:勉強が分からなくなり、授業に参加できない事例

対処方法は、子どもによって異なりますが、集団での指導から個別の指導一時的に移行します。分からないことを放っておくのではなく、低学年の段階から個別指導を取り入れて、公立学校の中でも丁寧に対応して行きます。主にサポートするのは、TA(ティーチングアシスタント)の先生です。TAになるためには、研修もあり、校長先生の裁量で学校の実態に合わせてTAを雇用して学校現場に入って子どもをサポートして行きます。

- 事例:集団の環境が合わない子ども(中学生)の事例

中学校に上がり、集団の環境が合わないと感じる子どもは、ある一定数出てきます。見極めが難しいですが、対応の一つとして、一時的に学校内にある「少人数学級(詳細は次の事例)」に通います。(通級のような場所)週の中で3日は通常学級で授業を受け、2日は少人数学級で学ぶという選択を生徒自身で選択することができます。もちろん専門のカウンセラーと一緒に相談して決定します。

- 事例:学校の中にある不登校の子を支援する少人数学級の事例

① 先生が大切にしていること

「まずは、ここに来ていることを認めること。」
「その子の出来ている部分に目を向けて、言葉にして認めてあげること。」「その子に合わせた学習環境を整えていること。」

② 教材の設定方法

①テストを受ける
②習熟度を元に、相談を元に教科書の決定

ここでの、ポイントはその子に合わせた教科書があるという点です。また、不登校も特別なニーズのある子どもの支援ということが認められており、学年が違う教科書を用いても出席が認められ、また、もし義務教育の間に学びきれなかった場合は、10年生という制度の中で学び直しを選択することもできます。

③ 子どもたちの実際の声

A:私は、集団の中にいることにストレスを感じてしまうから、ここでは少人数の環境で学べるから、今は毎日通えているよ。
B:私は、シリアから移民して来て、最初はフィンランド語が話せなかったらから、クラスで学ぶことが出来なかったけど、今は個別で学習を行い、話せるようになったので友達も出来て、学校も毎日通えているよ。

このように、フィンランドでは、公立の学校現場の中に専門的な先生を配置することで誰もが安心して通える空間を作っていました。日本でいう適応指導教室が、自然なカタチで学校内にあって、いつでも安心して通える空間になっていました。大人が一人一人の子どもの状態を尊重しているからこそ、子どもも大人を信頼して通うことができているように思えました。

まとめ

フィンランドでは、「学校という環境に合わない子が問題なのではなく、環境を整えてあげる事で、安心して学べる環境をともにつくる」という考え方が子どもにも理解されているように感じました。
一方オランダでは、学校を選択することで、その子にあった学習環境を整えることで一人ひとりに合った学習環境を整えていました。そして双方に共通するのは、「学校に通っていない状態=不登校」という考え方はなく、その子に合った学習環境を整えることで、一定の学力を身につけることに本質がありました。

さて、日本全国でも長い夏休みを終えて新学期が始まりました。新学期の最初は学校へ行くことに抵抗を感じる子、新学期だからこそ最初は頑張って学校に通って、途中からエネルギーが切れてしまって通うことが難しくなる子ども。色々な子どもがいます。この時に、ここは日本ですが、教育というものを捉え直すいい機会になるのではないでしょうか?学校に行くことが目的なのか、その子に必要な学びが得られる環境を選び直すことが大切なのか。ちょっと休む時間をつくることが大切なのか。一番大切なのは、親が先回りして動くことではなく、子どもと何気ない会話を重ねていくことではないでしょうか。沢山葛藤もあると思いますが、今日本でもオルタナティブの学びを勇気をもって、リスクを抱えながら選択している人も増えてきています。

他にも、オンラインでの学び場、メタバースの空間、オルタナティブスクール、フリースクール等色々な選択肢が増えてきています。このnoteがきっかけに、子どもと一緒に色々な教育環境を体験してみて、共に意思決定する良い機会になればと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

moimoi!

ps. 最後に私が携わっている夢中教室の紹介をできたらと思います。
気になる方は是非読んでいただけたら嬉しいです。


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