PBLってなんだろう?
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、PBLの実践を日々迷いながら模索しています。これまでに1年間、PYPのカリキュラムで7ユニット、MYPのカリキュラム(数学)で4ユニットの実践をしてきました。
このnoteでは様々なPBLの考え方を参考にしながら、私自身の探究の実践(PBL)の振り返りを行なっていきます。
◎ 私が参考にしているPBLの考え方
・国際バカロレア
・ハイテックハイ
・フィンランドの現象ベース学習(phenomenon-based learning)
様々なPBLの実践について実際に見たり、学んだりしてきて「これがPBL!」というような正解のようなものはなく「型=手段」のようなものだと思っています。このnoteでは、様々な教育メソッドの中でPBLがどのような考え方で実践されているのかをまとめていけたらと思います。
「そもそもPBL(問題解決学習)とは何か?」
ここで強調されているのは、PBLの目的は「問題解決の過程において、反省的思考reflective thinkingが働き、それによって新しい知識や能力、態度が習得される」学習指導の過程が重要であると言われています。例えば、地域にある課題を解決するアイデアを出す課題の中で、「這い回る経験主義」と言われるPBLになってしまうことは起こりうると思います。そうならないためにも、自戒の意味を込めて、課題を解決するプロセスの中で、反省的思考reflective thinkingが働き、それによって新しい知識や能力、態度が習得されるように、設計者が学習者にアプローチしていくことが重要になります。
また、PBLには一定した様式(型)はないと書かれており、様々な教育実践からどのようにPBLが行われているのかをまとめていけたらと思います。
・国際バカロレアの考えるPBL
「国際バカロレアが大切にしていること」
「その中で国際バカロレアで大切にされている学力観とは何か?」
「PBLを行う上で、どんな教育的なアプローチをしているのか?」
この考え方を実現するために「概念型探究」というアプローチが国際バカロレアの学校では行われています。
ここで、具体的な私の授業の実践(5/6年生)を紹介できたらと思います。
PBLの枠組みでいうと、学習者が問題解決の過程において、反省的思考reflective thinkingが働き、それによって新しい知識や能力、態度が育まれるためのアプローチを大切にしています。IBのアプローチでは、新しい知識の部分が上のカリキュラムのCentral idea(≒概念的理解)、能力がATL、態度が学習者像に当てはまりまると私の中で認識しています。
「では、どのようにして反省的思考を働かせながら、知識を構築していくのか?」についてもう少し具体的に紹介できたらと思います。私のPBLのアプローチとしては、Guided Inquiry Designを参考にしています。
ここからは、概念的理解を構築していく重要なプロセスである、「Gather」のフェーズからまとめていきます。
形成的評価では、ATLスキルの「リサーチスキル(メディアと情報の倫理的な使用)」にフォーカスして、情報のリサーチを行ってもらいました。そして、ペアになり9つの事例が情報として集まってきました。まずは、それぞれがリサーチした情報をシェアして、1つ1つの事例を理解する時間があります。ここで終わってしまうと、個別の情報を知る段階で、別の場面で応用できる概念的理解までは到達していません。
そこで、次の段階は知識を構築する(Create)のフェーズに入っていきます。ここでは、概念的な問いをもとに、友達がリサーチした複数の情報からパターンを見つけ、言語化を行っていきます。
最終的には、ユニットで学んだことが、日常生活の別の場面で転移できることが重要になります。そこで自分たちの生活の文脈とつながる次のような問いについても考えてみました。
▼ その他の問い
最終的には、自分が学んだことをこのユニットについて学んでいない人に届けるための作品をつくる課題を出しています。その課題をエキシビジョンというカタチで社会に向けて発信を行うところまでを行っていきます。
・HTHの考えるPBL
「High Tech Highが大切にしていること」
「では、High tech Highが考える公正とは何か?」
上の写真のように、子どもたち一人ひとりに同じ環境設定を行う平等の考え方ではなく、子どもたちのバックグラウンドにも目を向けて一人一人に合わせた学習環境(課題設定や課題のアウトプットの方法)を整える考え方を大切にしています。
「HTHにおけるPBLの定義とは何か?」
HTHでは公正を実現するために、PBLというアプローチを行っています。
「PBLを行う上で、どんな教育的なアプローチをしているのか?」
これについては、現在ハイテックハイの大学院で探究プログラムを探究している平岡さんのnoteを紹介できたらと思います。
noteのリンクはこちらになります!
・Finlandの考えるPBL
フィンランドで行われているPBLとは、Phenomenon Based Learning(現象ベースの学び)になります。フィンランドの学校では、年間のカリキュラムの中に最低でも1回はPBLを行うことが義務付けられています。
「では、フィンランドにおけるPBLの定義とは何か?」
フィンランドで行われているPBLでは「将来必要となる重要な横断的なスキルを習得」が目的としてあります。
「では、横断的なスキル(コンピテンシースキル)とは何か?」
ここで、私が実際にフィンランドの学校現場で見たPBLの実践の紹介ができたらと思います。
実際にこのプロジェクトは、フィンランドの職員室の対話の中で生まれました。フィンランドの持続可能な社会を考えた時に、今フィンランドには世界に誇れる素晴らしいプロダクトはあるけど、グローバルにシェアされていないのは、フィンランド人の発信下手なパーソナリティも影響しているのではないかと考えました。そこで未来の社会をつくっていく子どもたちにプレゼンテーションするスキルは大事になってくると考え、このプロジェクト学習が発足しました。あくまでもこのプロジェクトは、フィンランドの社会問題を解決するためのプロジェクトではなく、未来を生きる子どもたちにとって必要になってくるスキルにフォーカスしたプロジェクトでした。
全体的な印象としては、知識の習得というよりは現実社会に起きている問題を解決するために必要なスキルを身につけることにフォーカスしているような印象を受けました。
最後に
今世界で探究学習について様々な実践がされている中で、今回のnoteではフィンランドとHigh Tech Highと国際バカロレアのPBLについてまとめてみました。これらのPBLはOECDが示しているLearning Framework 2030と重なる部分が多くあります。
例えば、Knowledgeの部分に書かれている「Interdisciplinary(学際的な学び)」という部分は、国際バカロレア(PYP)、High Tech High、フィンランドのPBL全てのカリキュラムの考え方に共通するものになります。学際的なカリキュラムでは、教科カリキュラムではなく、教科を融合させたカリキュラムになっている特徴があります。日本でも近年カリキュラムマネジメントの考え方が学校現場に入ってきており、海外の実践事例からも学べることがあると思います。
また、スキルの部分では、国際バカロレアではATL、フィンランドの教育では横断型のスキルとして子どもたちが実社会に出た時に問題を解決していくための力を身につけることが大切であると書かれています。これも日本では「生きる力」が意味している考え方と近いと思います。
最後はアクションの考え方です。国際バカロレアではユニットで学んだことを別の文脈でも応用できる理解を育むことを大切にしており、HTHではプロジェクトはExhibitionで終える等、学校で学んだことを社会に開いていく考え方も共通する考え方だと思いました。
さて、今回のnoteではPBLについて様々な教育プログラムの事例を挙げながら考えてみました。「PBLの先に何があるのか?」あくまでもPBLは手段であり、PBLを通して子どもたちにどのような知識、スキル、態度を身につけられるのかを日々自分自身も振り返りながら実践を重ねていけたらと思いました。
いつも読んでいただきありがとうございます。