今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、ヴィゴツキーの学習理論である社会構成主義の学びをどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。まだまだIB教員2年目の実践ログなので、どのような場面に難しさを感じながら社会構成主義の授業にトライしているのかについてまとめていけたらと思います。
フィールドトリップで杉原千畝さんの記念館を訪れ、子どもたちの中で、杉原千畝さんの信念や価値観とビザを発給したという行動に意識が向き始めていました。第二次世界大戦中に、杉原千畝さんがユダヤ人にビザを発給するということはどういうことなのかについて、社会的な見方・考え方を働かせながら深めていきます。
社会科の学習指導要領には「社会的な見方・考え方」について次のように書かれています。
具体的には、杉原千畝さんがビザを発行したという社会的な事象について、この事象に関わっていたドイツ、ソ連、日本(杉原千畝さん、外務省)、ユダヤ人、杉原千畝さんの奥さんの6つの視点で、それぞれの考えを比較するためのディスカッションの場を設定しました。
▼ ディスカッションの課題
▼ リサーチ課題
▼ 実際に行われたディスカッション
子どもたちはリサーチして発見した歴史的な事実を踏まえて、自分の立場になりきってディスカッションで意見を述べることができていました。このディスカッションには、原稿はないので、実際のやり取りを踏まえて自分自身の意見を立場を踏まえて発言する必要がありました。ディスカッションの中に、外務省として、これから同盟を組むドイツとの関係性を守らなければならないこと(政治的な視点)、日本全体を守らなければならないこと、同時に領事として目の前のユダヤ人を守るべきであるという考え(人道的な視点)で葛藤しているのが伝わってきます。
ディスカッションの後に、杉原千畝さんにはビザを発給するかどうかの決断とその理由について考えてもらい、その他の役割の人には、ビザを発給するかどうかについての意見書を書くワークを行いました。
3人の杉原千畝さん役の人は全員「発行する」決断を行いました。
このディスカッションでは、杉原千畝さんの立場に立って考えましたが、最後のワークでは「もし、自分が杉原千畝さんの立場にいたら…?」という視点でビザを発給するかどうかについて考えるワークを行いました。
ここでは、YesかNoで決断をするのですが、自分の決断した時の気持ちをグラデーションで位置付けてもらいました。たとえば、右側の100%YESは「迷わず、ビザを発給する立場」で、反対側は「迷わず発行しない立場」中間は「迷ってビザを発給する立場と迷ってビザを発給しない立場」で分かれて自分の立場を明確にしてもらいました。ここでは、発行する立場が正解ではなく、今の自分だったら実際に発行できるかどうかのアクションベースで考えてもらいました。
ビザを発行することが人として正しいと思っても、実際に自分が同じ状況の場にいたときに実際にアクションできるのかどうかは変わってくることを感じたのではないかと思います。こうして、グラデーションで立場が分かれるのは、このトピックについてクラス全体でしっかり考えてきたこと、このクラスの中で自分自身の立場を遠慮なく表明できる環境があるからだと感じました。
こうした、自分の置かれている立場や状況で、人として正しい選択や判断ができないことって、社会ではたくさんあると思います。子どもの世界でも自分は良くないと思っていても、クラスの中で権力を持っている人に流されて自分を守るために傍観者になったり、加害者になってしまったりすることは起こりうると思います。同時に、置かれている立場や状況によって守りたいもの、守るべきものが変わってきます。これによって生まれる対立をどのようにして乗り越えていくのか、ユニットの後半では対立をどのように乗り越えていけるのかについても具体的に考えていきます。
いつも読んでいただきありがとうございます。
子どもたちの探究は続いていきます。