<対立との向き合い方を学ぶ>学校キャンプ企画
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究をどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。今回のnoteのテーマは「対立との向き合い方」です。
今回のnoteでは「対立との向き合い方」をテーマにまとめていきます。子どもたちは、ユニット1では「差別や偏見が生まれてしまう背景や構造」について学習し、ユニット2では「対立が起きてしまう背景や構造」について学習をしてきました。ユニットを通して子どもたちと共通言語を育むことでユニットでの学びと日常生活をつなげることを大切にしています。
今回のキャンプでは、48時間、寝食をクラスメイト18人で共にするので、様々な価値観や考えの違い、認識のズレから対立が起きることも想定されます。これが、1泊2日のキャンプだと、非日常の経験から受け流せるものも、2泊3日となると非日常から日常に変わっていくので、段々と一人一人の素が出てくることで対立が起きやすい環境にもなると思います。
ここで考えたいのが「対立が果たして悪いものであるのか?」ということです。今でも印象的だったのが、ユニット2の最初に「対立は無くせないけど戦争はなくせる」という言葉が子どもたちから出てきたことです。これは比喩表現のようなものでもあり、対立は無くせないけど、戦争のような大きな争いはなくせるかもしれないという考え方でもあります。「さて、子どもたちが日常生活の中で対立をした時、私たちはこの現象をどのように見取り、介入すると良いのでしょうか?」「大人が介入して子どもたちに表面的な仲直りを促すようにアプローチすることが目指すべき着地点でしょうか?」
今回のキャンプでも何度も子どもたちの中で対立は生まれていました。空間の共有の仕方、時間の共有の仕方、考えの共有の仕方、気持ちの共有の仕方、お金の共有の仕方等、生活を共にするということは目に見えない部分でも多くのものを共有しており、自分の解釈と相手の解釈、自分の状態と相手の状態が違ったときに、小さな対立から中位の対立まで、色々な対立が起きていました。
そして、対立が起きた時に「もう関わらない(回避)」的な行動や「自分が我慢する(順応)」行動、「自分の視点から見えている正しさを曲げない(競争)」行動等、様々なやり取りが行われていました。対立が起きた時の対処法については、ユニット2の総括課題で子どもたちとの共通言語にしています。
「このような、認識のズレにより、起きた対立に対して大人はどのように介入すると良いのでしょうか?」
私が大事にしているのは、基本スタンスは子どもたちのファーストアクションまで見守りつつ、放任しないこと、大人の目線だけで双方にジャッジをしないことです。介入の基準は「子どもだけで解決が難しい課題」と判断した時です。解決困難な課題を子どもに任せることで、子どもの責任にしないことを大切にしています。一方で、子どもがファーストアクションとしてサイン(感情を表に出す、相談する、サポートを求める等)をしていないのに個人的な正しい・正しくないの価値基準のみで判断して介入はしないようにしています。まずは、双方に「あなたの視点ではどういう風に考えているの?見えているの?感じているの?」という風に自分の意見は出さず、まずは子どもの話を聞くことを大切にしています。
さて、今回のキャンプでは48時間という寝食を共にしたことで、普段の学校生活では生まれないような対立から、一旦着地するところまでを伴走することができました。普段の学校生活では、問題が起きても授業や専科などの兼ね合いから十分に子どもの声を聞いたり、対処療法的な解決になってしまうところを今回は、子どものサインを待ちながら、子どもの意思決定を大切にしながら解決に向けて双方に伴奏する時間がありました。
一見、外から見るといじめや嫌がらせのように見える子ども同士のやり取りも、双方それぞれの視点で話を聞くと、実は子どもたちなりの正義感と優しさから生まれた対立も起きていると知り、優しさや正義感から生まれる対立もあるんだと驚く場面もありました。しかし、双方それぞれが自分の正しさを信じて行動をしているので、相手の行動に納得がいかず、対話もできない状況でした。「まずは、ジャッジをしないで子どもの行動の背景にある価値を信じて聞く姿勢の重要性」を学びました。
さて、今回の学校キャンプを通して総じて言えることは、時間管理もお金の管理も人間関係の対立への向き合い方も、一朝一夕に育まれるものではないということです。子どもたちが正しい知識を教えることも、子どもが失敗しないように環境をそっと整えることもプロセスとしては重要ですが、最終的に子どもたちは自分で自立して生きていくことになります。
今回のキャンプでは「なーくるないさー(何とかなる)」をモットーにしており、その上で子どもたちが失敗できる環境設定を大切にしました。大人から見ると、ツッコミどころが満載のキャンプの企画、準備、そして当日の子どもたちの動きでしたが、大人が見守りに徹することで子どもたちはどこかのタイミングで動き出し、準備不足やスキル不足、リサーチ不足などの失敗経験からトライアンドエラーも2日間のサイクルの中でも見られました。
あくまでもきっかけの1つに過ぎないキャンプでも子どもたちの現在地が知れて、クラス全体としても大きな1つのサイクルを回す中で共通の失敗経験を共通経験にすることができました。明日から学校生活という日常に戻って、また同じクラスメイトで生活が続いていくことも醍醐味です。
最後に私たち大人は、時間やお金の管理、人間関係の構築などどのように介入することで子どもたちのスキルを伸ばしていくことができるのでしょうか?
いつも読んでいただきありがとうございます。
子どもたちの学びが続いていきます。
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