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IBで文学をどのように学ぶのか?

今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究をどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。まだまだIB教員2年目の実践ログなので、どのような場面に難しさを感じながら概念型探究の授業にトライしているのかについてまとめていけたらと思います。


こちらがユニット4のカリキュラムになります。

【Central idea(大きな一般化)】
作家文学を通じて表現するために創造性意図的に利用する
【重要概念】機能、特徴
【関連概念】文学、表現、創造性、ジャンル、形式
【教科の枠を超えたテーマ】
この地球を共有する
【探究の流れ(小さな一般化)】
- 文学における創造的な表現の機能
- 異なるジャンルや形式の文学
【ATL】
・コミュニケーションスキル:リテラシースキル
・思考スキル:創造的思考スキル
【Learner Profile】
・コミュニケーションができる人

今回のユニット全体のプロジェクト設計はこちらになります。大凡2ヶ月の設計になっています。(ユニット自体は6週間=35コマ程度の設計。)

今回のユニットでは、ユニットの始まりで子どもたちにエキシビションの場について説明を行いました。このアイデアは、High Tech Highの考え方が着想にあります。High Tech Highのプロジェクトでは、① 最終的に公の場での展示または発表があること② 下書きや試作品を繰り返し学習者が試行錯誤するプロセスを経ていること、そして③ 学習者同士で批評の機会を設けていることがプロジェクトの成功に導くための要素と言われています。これは、概念型探究でも大切にされている調べたことを発表して終わりではなく、プロセスの中に批評の機会があり、その批評をもとに修正し、最終的にプロジェクトを通して理解したことが産出する流れになっています。

また、こちらが今回のユニットの知識の構造になります。

今回のユニットでは、国語科の知識として文学的な表現の特徴とその機能に着目し、ここで得た知識を活用して最終的には作家になっていきます。

導入する

最初の導入としては、身近な文学に触れるということで、12月のHoliday Concertで演じるマチルダの作品を鑑賞しました。そして、マチルダのミュージカルを鑑賞して、3つの観点で感想をシェアしました。

① 作品を見て考えたり感じたりしたこと【自分なりの解釈】>青い付箋
② ①の根拠となる作品の中のストーリーや表現【事実】>黄色の付箋
③ 作品から学んだこと(≒教訓)【作者のメッセージ】>ピンクの付箋

また、この作品の主人公であるマチルダは、幼少期から文学作品を読み、物語を考える場面もあり、このユニットのゴールである作家になる部分とも重なる部分もありました。

方向を定める

方向を定めるフェーズでは、単元の概念レンズである「文学的表現」の「機能」と「特徴」について「やまなし」の文学作品を通じて共通理解を構築していきます。その最初のステップとして、「やまなし」の朗読を通しで聞いて、「3-2-1 bridge」で単元前の理解を言語化してもらいました。

ユニットを通して様々な文学作品、それぞれが選んだ作品の中での文学的表現や作者の伝えたいメッセージを学ぶことを通して、単元の終わりにどのように考えが変化するのかをみます。

  • ワーク1「文学的表現から作者の意図を読み取る」

次のステップとして「やまなし」の文学作品から3人グループになって、文学的表現だと思うものを教科書からそのまま抜き出し、文学的表現の分類をしていきました。子どもたちは、比喩(擬人法、直喩、隠喩)や擬態語、擬音語という言葉を知らなくても、文章の中から文学的な表現を探し出し、共通しそうなもので分類し、ラベリングをする中で様々な文学的表現と出会っていきました。

最終的には、文学的表現の言葉を導入して分類・整理をしていきました。

・ワーク2「作者の人生から作者の価値観を読み取る」
次に、クラス全体で、作者が文学作品を通して何を伝えたいのかについて解釈するワークを全体で行うことで方向づけを行いました。ここでは、作者が文学を通して伝えたいメッセージを作者の人生について書かれた「イーハトーヴの夢」と文学作品「やまなし」の描写を根拠に言語化をしていきます。まずは、作者の人生における重要な出来事とそこから育まれた価値観や考えを探っていきました。

・ワーク3「作者の価値観と文学的描写から作者のメッセージを解釈する」

6つのグループの中で様々な解釈が出てきました。

最初は、作者の伝えたいメッセージを文学と作者の人生の出来事から解釈することに難しさを感じていましたが、自分たちなりの解釈を文学的な表現や描写を根拠に言語化するグループが出てきました。

調べる

ここからいよいよ子どもたちが自分で選んだ文学的作品から、「文学的表現」のリサーチを行なっていきます。最初は、授業の設計者が文学的作品を選び、その中で気になった作品を選んでもらう設計を考えていたのですが、子どもたちに様々な種類の文学作品と出会い、自分で選ぶことで学習へのモチベーションを高めるために、実際に市の図書館(メディアコスモス)に出かけて、自分で「多文化共生」と繋がりそうな文学作品を選ぶフィールドトリップを行いました。この時、どうしても教師がコントロールすることで学びの質を担保しようとしてしまうのですが、子どもたちが自分で選ぶプロセスの中で「文学的作品とはそもそもどのような特徴をもつのか?」という問いを持ちながら探す姿が見られました。
そして、実際に本を選んで以下の3つの問いについて考えるプロセスを通して文学作品とそうでない作品の違いを探りながら、何度も本を選び直す子もいました。

① 作品の中に出てくる文学的表現を抜き出してみる【事実】
② 抜き出した文学的表現の種類と役割【事実的知識】
③ この文学的表現は読者の創造性にどのような影響を与えているのか
【解釈】

やまなしで学んだ概念レンズを自分の選んだ文学作品を通して、情報を集めていきます。

整理する

自分が選んだ作品から文学的表現を10個以上見つけられたところで、文学的表現から作者が伝えたいメッセージを解釈(推論)していきます。そして、作者のメッセージを複数の「文学的表現」と作者のバイオグラフィーを根拠に自分なりに解釈したことを言語化して、アートで表現をしていきます。教材のアイデアとしては、小学校5/6年生の図画工作に出てくる「のぞいてみよう」の単元と重ねて行います。作者が伝えたいメッセージを箱の中でメタファーを用いて表現し、最終的には学校行事のBook eventでプレゼンテーションを行います。このBook eventが第一弾の展示の機会になります。この機会はあくまでも、自分の解釈からの一般化をプレゼンテーションすることになります。

詳細は以下のnoteにまとめてあります。


一般化する

次の一般化のフェーズでは、クラスメイトのそれぞれが異なる文学者の文学作品をリサーチし整理したことをもとに「文学」についてさらなる一般化を構築していきます。

転移する(作家になる)

文学についての特徴と文学的表現の特徴と機能を一般化したところで、いよいよ作家になる活動を行います。

作家になるプロセスについては以下のnoteにまとめています。

これまでに学んできた文学についての知識を応用して、「多文化共生」をテーマにした文学作品をつくっていきます。ここで作成した文学作品は、「多文化交流フェスタinメディアコスモス」で展示を行い、実際にイベントでプレゼンテーションを行う機会があります。実際のイベントの様子をまとめてみました!

後半の方は、これから走り出すところなので具体的な実践について触れてはいませんが、大きなユニットの流れについてはまとめてみました。

ユニット1で「価値観や偏見、差別」をテーマに学習し、ユニット2で「対立や戦争が起きる背景」について学習してきました。このユニット4では、これまでに学んできた知識を活用して、文学を通して表現する機会になります。

子どもたちの探究は続いていきます。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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