「自立した学習者」になるための"ふりかえり"とは?
今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究をどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。
今回は、株式会社ユーザベース NewsPicks Education主催の”「概念型探究の実践」を公認トレーナーからしっかり学ぶ講座 ”に参加をして私自身がどのような気づきを得たのかをシェアしていけたらと思います。
今回のnoteのキーワードは「自立した学習」と「ふりかえり(リフレクション)」についてまとめていきます。最近、PYP校での実践をしていると、私の中でモヤモヤっとしていたことがありました。
「毎日のふりかえりがただの作業になっているかもしれない?」
「そもそも、ふりかえりとは何のために、どのように行うとよいのか?」
今回の研修では、「思考する教室をつくる 概念型探究の実践(緑本)」を使って研修が行われました。研修のメインワークでは、第1章から第3章、そして第10章の4つのパートを4つのチームに分かれて、各チームごとに読み解き、正しい情報というよりは、自分たちの理解(解釈)を全体でシェア&ディスカッションをする中で概念型探究の実践本を紐解いていくような時間でした。「どんな小さな疑問も大切に」というグラウンドルールのようなものが場に共有されることで、安心して研修に参加することができました。
毎回、NewsPicks Education主催の「概念型探究」の理解を深める研修に参加して感じるのは、「掴めそうで掴めない何かを仲間と共に探り続ける」時間の面白さです。私自身、概念型探究の考え方と出会い2年目ですが、こうして現場の先生を対象に参加しやすい条件で研修の場を開いてくださることに感謝をしています。
さて、本題の研修を通して私なりの考えたことをログとして残していけたらと思います。というのも、私自身が担当したパートが「振り返る」パートなので、実践なくして学び無しということで、自分自身の現段階の理解をこのnoteに残しておくことで、1年後の自分が読んだ時に自分自身の理解の変化が感じられる記録になればと思っています。
私は、担当した第10章の"振り返る"の章についてグループで紐解いたことをまとめていきます。
私たちのグループの中で考えたこと
最終的に出てきたアイデアは、振り返りは「自立した学習者」or「効果的な学習者」になるためのプロセスであることです。ここで重要になってくるのは、本書(pg.270)にも書かれているのですが、振り返りの時間を与えたからといって、学習者に振り返りのスキルが身につくわけではないということです。ここでは、授業の設計者がカリキュラムの中に意図的に振り返りのプロセスをストラテジーとスキルに分解して、学習者が目的をもって反復練習をすることで身につけることができるのではないかという考えに至りました。
ここで一度、プロセスとストラテジーとスキルについて本書(pg.300-301)の資料A概念型探究の用語集から引用して定義を明確にしたいと思います。
さて、「振り返りはプロセスである」ということで、振り返りを機能させるためにはどのようなストラテジー、スキルが必要になってくるのかを分解しながら具体的にしていきます。
本書では、振り返りは概念型探究においてサイクルの一環として行われ、3つの異なる方略(計画、モニタリング、評価)が相互に作用し、概念的理解の構築を支援すると書かれていました。つまり、振り返りとは学習者が概念的理解(≒一般化)を構築する過程をサポートするようなものなのではないでしょうか?
また、新たに出てきた方略(英語ではstrategies)という用語ですが、先ほど定義した具体的な「ストラテジー」と使い分けるように書かれていました。ここでの方略(計画、モニタリング、評価)には、 それぞれに多くのストラテジーがあることを示す意図があるみたいです。つまり、包含関係でいうと 方略の中に複数のストラテジーがあり、そのストラテジーの中にスキルがあるという私なりの解釈です。この3つのメタ認知的方略の定義についても、本書(pg.300-301)の資料A 概念型探究の用語集から引用して明確にしたいと思います。
私はこれまで、振り返りというものは概念型探究の最後のフェーズで主に行うものだと捉えていましたが、もしかすると振り返りの概念が少し違っていたように思えました。振り返りを「プロセスの構造」と捉え、学習者自身が概念型探究を進めていく上で、学習者自身が振り返りの目的を理解し、概念型探究のそれぞれのフェーズで、意図的にスキルやストラテジーが繰り返し使用できるようになることが大切なのではないかと思いました。そして、教員の役割として、学習者が、メタ認知的スキルやストラテジーを一般化できるように思考を促す問いなどを通して、一般化に向けて支援していくことで、学習者がより広い学習状況に振り返りのプロセスを応用(転移)できるようになることで、自立した学習者にまた一歩近づいていくことにつながるのではないかと思いました。
私なりの今後の実践としては、PYP校の中で行われる6つの探究のユニットの中で、知識の構造にフォーカスしたアプローチはこれまでも行なっていたのですが、私のテーマでもある「自立した学習者」を育むために、年間を通じて、学習者の制作した成果物に特定の単元に関連した一般化だけでなく、包括的なメタ認知的スキルやストラテジーの概念的理解がどのように使われているのかも振り返る機会をつくっていこうと思いました。
次に、「学習者が各フェーズで振り返りプロセスとして使えるようになるために教師はどのようなストラテジーを使用することができるのでしょうか?」という問いについて考えていきます。
本書の第10章の最後には、3つのメタ認知的方略について、それぞれ具体的なストラテジーが紹介されているのですが、その前に振り返りのサイクルについてあなたの今の実践を見直してみましょうというワークが書かれていました。
「あなたは、生徒が概念型探究を計画し、モニタリングし、評価するのをどのように支援していますか?」
1つの実践としては、評価課題を設定する際は、計画のストラテジーにある評価基準の共同設計を学習者とともに行います。詳細は、以下のnoteにまとめています。
一方で、私の今の私の授業実践にもいろいろな課題やモヤモヤがあります。クラス全体で見ると「概念型学習:探究型学習=8:2」というような肌感覚で、学習者がエージェンシーの感覚を養えていない、つまり学習は自分たちのものである理解を築くことができていないのではないかということにモヤモヤを感じています。昨年度は、概念型学習を自分自身が理解できていなかったということで「概念型学習:探究型学習=2:8」のような肌感覚を持っていました。この時は学習者のエージェンシーの感覚が養われている一方で、転移可能な理解にまでは到達していないような実践でした。
私が探究的な学びを手放し、概念的な学びに舵を大きく切ったのは、世界では探究学習を進めれば進めるほど、学力(知識ベース)が低下するデータ(フィンランドの教育もその一例)を読んだこともあり、概念型学習を軸に置いた実践を試みるようになりました。しかし、この探究的な学びと概念型の学びのバランスの取り方が難しいなと感じている現状と直面しています。
今回の研修で私なりの大きな発見としては、探究学習のもつ要素を概念的理解を育む7つのフェーズの中で発見できたことです。具体的には、方向性を定めた後の「調べる」と「整理する」のフェーズです。時間の関係上、複数の事例を調べることをせずに一般化するフェーズにいくことがあるみたいですが、私の学校では6週間の期間があるので、十分に学習者がその子の興味に合わせて調べて、その調べた事例を整理する時間を時間をつくることが出来ます。私は、この調べるフェーズを学習者に委ねることができず、私が調べる事例を毎回持ってきてしまい、学習者にその中から選んでもらい、学習者目線では分担してリサーチするような進め方になっていました。ここを学習者に委ねることで、設計者の予想を超えるる面白さが出てくるのではないかという発見がありました。
今回のnoteでは、自立した学習者になるための振り返りの進め方についてまとめてみました。なかなか具体的な実践ができていないことで、具体的な事例を踏まえて説明することが難しかったのですが、この2学期は振り返りに軸を1つ置いて概念型探究を進めていけたらと思っています。いつも読んでいただきありがとうございます。
moimoi!