なぜ、「半歩先」だったのか|モノカキングダム応募作品解説
今回、モノカキングダムに応募させていただいた作品『こえは、キミの半歩先』。お恥ずかしながら得票数はゼロだったのですが、個人的にはかなり気に入っている作品であり、他の方からうれしいお声もいただきました。
他方で、「よくわからなかった」というお声もいただいています。
個人的に、解釈は読み手の数だけあっていいと思っていますし、余白があるからこそ想像も膨らむものだと思っています。
そのため、作者による解説というのは野暮であり、無粋極まりないのですが、完全なネタバレはすることなく、余白も残しつつの解説にチャレンジしてみたいと思います!
▽今回、解説している元作品はコチラ▽
何を聞いたのか。
ちょうどSkypeやツイキャス全盛のとき、布団の中で通話していたときを思い出していました。夏の暑い日です。
わたしが、あの場で聞いたのは、自分より近い存在がそこに”いる”のではないかという疑念の音。そして、それを確かめたという話でした。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
これは、作品を知らないとわかりにくかったと思うので反省ではありますが、ただ、テーマを聞いたときにどうしても入れたかった部分でした。
周りの作業音などを聞いていく内に、リズムや音楽に聞こえ、そして、そのまま世界が広がっていく感覚は、灯火であるわたし自身が”わかった”感覚でした。理性があるから止められているけど、きっと、もし、映画作中のような境遇であったら、わたしもきっと同じようになっていたかもしれないと思っていました。
そして、主人公は非情な結末を迎えます。『こえは』の作中の”キミ”が憤っていたのは、この映画の筋書きについてでした。「主人公は悪くない!なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ!」と。
そして、『こえは』の主人公わたしは、先ほどの”自分より近い存在”について確認し、その回答に腹を立てたのでした。
前提となっている部分と、そもそもの情報量が多くなっている段落でした。
「鏡を見ることが嫌い」
これは、わたしがキミから言われた言葉。
自分の容姿にコンプレックスを持っている。だから、声に逃げているんだということ。言外に「もっと容姿を磨け」という意図をわたしは感じています。
そして、だからこそ、わたしよりも「近い存在」ができたのだと言われている気がしました。
距離感と音
共感覚的なテーマとともに、作品におけるもう一つのテーマは距離感。これはタイトルを最初に決めたときに、一緒に決まっていたものでした。
雷が光ると、音がどれくらい遅れて聞こえるかで距離を判断しますよね。光った瞬間と、ほぼ同時に落ちた雷鳴はあまりの音で本当に怖かった記憶があります。
わたしとキミは、対面で話をしている場面が直接的に描かれていません。
どこか物理的な遠さを、わたしは感じていたのかもしれませんね。
一方、冒頭にもあったように、キミの聲=評判はみるみる上がっているようで、噂を見聞きしているようです。
肥えてきたのは、何でしょうか。ここはご想像にお任せします。意図せずダブルミーニングになっていました。
うた
ここは、割と色々な解釈があると思うのですが、一応、筆者が想定しているのは、歌唱している歌です。これは、冒頭の描写にもある通り、録音されたものは、そのときの空気感や気持ちまでも呼び覚ますという部分とつながっています。
恐らく、キミは、歌い手さんのようにご自身の歌を録音していたのかもしれませんね。あるいは、短歌や句を音読してくれたかもしれません。
共感覚的な感性、思い描く世界、そして、距離感。
大好きな「声」にフォーカスを当てながら、お題である「こえ」に工夫を凝らした作品でした。
作品解釈の幅が広がってもらえたらうれしいです。
▽応募させていただいた、ことばと広告さんの自主企画コンテスト「モノカキングダム2024」▽