タンスが増え、着るものは減った|”3月×暮らしのエッセイ”応募作品
3月が来ると、気持ちがソワソワする。
急に寒い日が来たり、逆に春の陽気を感じる日があったり。
去年は何を着ていたっけ?と思うたびに、夫からは「写真に撮って管理しておくといいらしいよ」と何たらコーディネーターの体験で吹き込まれたことをそのまま言ってくる。夫自身もやっていないのだが、まぁ、それは置いておこう。
持っていた服は、年齢的にもう厳しそうなものを相当数処分した。新しく買う機会はめっきり減ったものだ。それでも、タンスは増えていく。
そう、3月は年度が替わる時期だ。
3つのランドセルは、2つのランドセルと1つのリュックに変わった。
去年は、指定の体操服や制服の準備などにてんやわんやだった。ジャージのデザインが変わる通達で少し焦ったが、旧デザインも併用化とのこと。毎年集めているらしい、使わなくなったジャージを譲ってもらえた。
子どもたちのなかで着まわせるようなサイズやデザインを意識しても、大体は穴が開いたり着潰してしまう。そうでなくても身体の大きさや性別も違う以上、なかなか難しい。特に冬物はサイズが大きくなることと相まって、コートハンガーも子どもたちと一緒に成長している。
正直、まだまだ教育費の見通しは追いついていないし、これからもこうした大きな変化があるのだろう。あるいは、それほど大きな節目の年ではなくても、こうして教科書を紐でくくるたびに、また一つコマを進めたような実感があるのも悪くない。
自分の服を買う頻度が下がったのは少し寂しい気もするが、子どもたちが大きくなってきたことで、少しずつ自分の時間や2人の時間が増えたのもうれしい。夫も非協力的というワケではないが、自分の領域じゃないと割り切っているのか学校関連の事はほとんどノータッチだ。
不満がないと言えば嘘になる。でも、どこか許してしまうのは、春を待ちわびているつぼみがくれる生命力と、子どもたちの成長への実感。そして、私の誕生日にくれるスイートピーが、私に3月という月を毎年刻んでいくからだろう。
了(828文字)
三條さんの”3月×暮らしのエッセイ”企画に参加させていただきました!
プロフィール
・灯火(ともしび)
適応障害から復職したベンチャー会社員&パラレルワーカー。メンタルヘルスやアート分野を発信中。