紛れ込んでいた国産ハーブ・シソクサ
シソクサという植物が存在する。
その和名の通り、シソのような芳香が特徴的な水草で、タイ等の南国ではハーブとして使われているものだ。
日本でも全国に分布する典型的な水田雑草だったが、現在では各地で数を減らしており、和名で検索するだけでもいくつかの自治体のレッドデータブックのページが上位に表示される。
自分は帰省する度にこの水草を密かに探し続けていたが、つい先日に地元市産のシソクサが自分のビオトープ内ですくすくと育っていた事に気付いた。
この株を採取してから、なんと2ヶ月以上も気付く事なく育て続けていたのだ。
気付いたきっかけは先日の水草展に10日近く通い詰めた事と、見慣れた鋸歯を持つ植物がタイムラインでシソクサとして紹介されていた事によるもの。
以前にビオトープへ持ち帰った植物とよく似ていた。
確認のためビオトープへ向かい、まさかと思いながらも葉を撫でたその指を嗅いだ瞬間、まるでシソを鼻に詰め込まれたかのような芳香が衝撃として突き抜けた。
完全に純度100%のシソクサだ。
改めて複数回嗅ぎ直すと、シソ系統の香りではあるものの、そこまで強烈ではない。
そして少しばかりエスニック寄りでもある。
初めの衝撃は恐らく、後述する理由で「とはいえハッカ系の何かだと思う」と内心感じながら匂いを嗅いだため、その大きなギャップによって第一印象であるシソ臭の倍増が起きてしまったのだろう。
まさにシソが大好物であるオンブバッタも本種を好むようで、優先的に摂食する傾向にある。
そして栽培時にはひどい食害を受ける事も多いという。
実際、このビオトープでもオンブバッタの食害によって、しばらくの間はほとんど茎しか残らないような状況が非常に長く続いた。
これは後回しにした同定がさらに遅れた理由の一つでもあり、葉が復活したのはシソクサ周辺の植物(アゼナ、ヒメミズワラビ、セリ等)が急成長してその茂みに隠れるようになったここ最近の事だ。
そして上記画像は今まさにといった具合で鎮座しているオンブバッタとその食痕も見られる。
自分が今回の株を長らくシソクサだと思わなかったもう一つの要因は、株の背丈が非常に小さい頃に多くのハッカ類に囲まれて生えていた姿を見て、「少し葉の形が違うが、これもハッカ類の一種だろう」と勘違いしたまま、嗅ぎもせず隣り合ったハッカと共に纏めて持ち帰ってしまった事だ。
水草は環境や成長度合いによって同所でも別種のように見えるほど大きく姿を変えるとはいえ、あまりにも短絡的な思い込みをしてしまっていた事が今となっては恥ずかしい。