インセクトフェア初参加:その②
前回
インセクトフェアに入場すべく、長蛇の待機列に並ぶ。
入場列の進みは早いが、会場ビル内に入って真っ先に見えるのは、2階分の行列。
先に入場した者も含めると…どれだけの人数が会場内に居るのだろうか。
そう考えている間にもサクサクと列は進み、あっという間に入場をする。
驚いたのは、いくつもの部屋が来場者でぎっしりと埋まっているほどの人口密度。かなり広い会場を2階分貸し切って開催されているが、それでも幅のある主要通路以外はゆっくりとしか進めない。
そして標本即売会でしか見る事のできない光景。タッパーを手に持ち歩く人々、脇に抱えて歩く人々。
これは前回も書いた通り、展足済み標本を購入した場合は自身のタッパーに移し替えて持ち帰るというルールがあるためだ。それを行なっている者の背後を通らざるを得ない時が一番緊張する。躓く事は決して許されない。(基本的には立ち止まれる状況なら一度立ち止まる方が良い)
背後を見て立ち止まれる状況を作ったり、流れに合わせて安全に進むスキルが必要となる。
このイベントは満足感が高いが、疲労の原因の何割かはこの緊張感によるものだと思う。
人混みを泳ぎ、標本に対して何か運命的な出会いができないかと、1時間ほど歩いた。
自分は基本的にゴミムシかオサムシをメインとしているが、オサムシは時折見かけてもゴミムシはかなり少ない。
何年も通っている方曰く、特にゴミムシはマイナー中のマイナーなのでそもそもの数が少ないと聞く。また、入場開始と共に探さなければ2周目には存在しない事もあるとの事。
マイナー故、マニア中のマニアの狙いが局所集中するようだ。
そうした中で見つけた一つの標本、これが唯一の購入品。
マイマイカブリ未展脚標本
を遥かに超える怪物。
世界最大のオサムシと名高い、福江島産マイマイカブリ。
通称『フクエマイマイ』『フクエマイマイカブリ』
右に並ぶ私有水田産マイマイカブリ(ヒメマイマイカブリ)の体長はフクエマイマイの腹部にも満たない。
赤子のように見えるサイズ差だった。
(左側の小さな甲虫については後日解説する)
西のマイマイカブリは発達した尾状突起(通称ムクロ)を持つが、フクエマイマイは特に顕著だった。
博物館で目にした事はあるが、実際に手に取ってみれるとは…いつか生体にも触れてみたい。
前回も掲載したティーノ氏の記事にも書かれていた通り、「買わずに後悔するよりは、買って後悔した方が 精神的には 何倍も良い」との言葉を、ブースに並ぶフクエマイマイの前で何度も反芻し、購入に至った。
一度はブースから立ち去ったが、やはり諦めきれなかった。
いざ現地を歩いてみて感じた事だが、そもそもスーツで来ている者を見かけない。
スーツとビジネスバッグの組み合わせで来場した人間は本当に一握りだろう。むしろスーツこそドレスコード違反とさえ思えるほどの少なさ。
この場においては昆虫写真家・海野和男氏がフィールドに赴く際のような服装が正装なのかもしれない。
しかし、今回持参したビジネスバッグに関してはそこまで使い勝手が悪い物だとは感じなかった。
リュックのように背負う事はないので、自分の視界外で人混みや障害物と触れてしまう、または押し除けてしまう事で起きる事故はまず発生しない。
特にこのイベントにおいては、ほぼ全ての扱っている商品が非常に繊細である上に、前述の通り購入した標本を持参したタッパーに移動させている最中の参加者の背後を通らなければならない状況も多い。
そんな中で『人混みに体を押し込む』のではなく『人混みの隙間に軽く差し込んで安全に道を作れる』というビジネスバッグはかなり有効な装備の一つだったと言える。(もちろん「失礼します」などの最低限の声掛けをする事は必須だが)
さらには標本を…それも国内最大級のフクエマイマイを入れる大型タッパーが余裕を持ってすっぽり入って、さらには外部からの衝撃に非常に強い造りである事が幸いした。
タッパー+スチロールという標本運搬時の鉄板の組み合わせが生む衝撃吸収能力によるものも大きいが、会場内の人混みや帰りの満員電車内で揉まれたとは思えないほどに戦利品を無傷で持ち帰れた。
冷静に考えてみれば、そもそも満員電車内で揉まれるような状況を想定されて作られているカバンだ。
床に置いた際に自立する点も便利だと感じる場面も多かった。
ただし、これは最終的にマイマイカブリ1匹しか購入していないような初参加の人間だからこその感想にも思える。
今後、来年、再来年と訪れて場慣れしていけば購入品も増えるはず。何処かでモルフォ蝶なんかにも手を出してしまうはず。
その際は、容量が全く足りなくなるのは想像に難くない。
フクエマイマイの購入後、フォロワーと初めて会い、とある虫を譲り受ける事になる。
それについては次回以降に更新予定。