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レアモノ発見の成功体験



田舎の小さな書店に立ち寄った際、みなとかなえ氏のデビュー作『告白』(期間限定帯版)を発見する。
その瞬間に心臓が一瞬だけ止まり、堰き止められた血液が再び体を巡るような感覚がした。

『呪術廻戦』の芥見下々あくたみげげ氏が描いたカバー(特大帯)イラストを使用したこの版。
都内を含め30軒以上は書店を回ってこの版を探していたが、昨年の10月に出版された物という事もあって自分の生活圏では長らく縁が無かった代物だ。

発売された当時はあちこちの書店でポスターやポップが貼られていたような気がするが、その頃は呪術廻戦にハマっていなかったので完全にスルーしてしまっていたし、そもそも多忙故に小説を買って読むという選択肢が生活に存在しなかった。
商品の回転率が高い地域の書店では売り切れているか既に返本されているかのどちらかだったので、ようやく手に入れられた事に感極まっている。

とはいえ、今回購入した版は今年の8月末に増刷されているので、現在は他の書店でも再び見つけられるようになっているかもしれない。


年末年始はマレーシアのなんでもない海辺に家を建てて、今までの時間を取り戻すようにページをめくるんだ。




自分は遠方にて書店を見かけると、必ず掘り出し物を探してしまう癖がある。

そうなったきっかけはよく覚えている。
子供の頃に遊戯王カードが付録の本を探し続けていたからだろう。
田舎では本棚の片隅にレア物が残っていたりするのだ。

この手の物は特殊な付録の存在もあって、頻繁に増刷されるわけではない。
遊戯王各シリーズのコミックスならまだしも、攻略本などではほとんど増刷される事はないので、強いカードが付録だった年の攻略本はあっという間に売り切れていたという光景が今でも目に焼き付いている。
本来1000円未満の本の付録が、カードショップでは数倍以上の価格で売られている事も珍しくはない。

そんな中で自分が発見した一番のレア物は、イギリスの三越みつこしで見つけた「遊戯王ゆうぎおう5D's ファイブディーズWORLD CHAMPIONSHIPワールドチャンピオンシップ 2010 Reverse of Arcadiaリバースオブアルカディア」の攻略本だった。

その本は当時の超人気デッキ【インフェルニティ】の潤滑油となる必須カード《ヘルウェイ・パトロール》が付録だったので、日本国内で売れ残っている書店などはほぼ存在しない状態だった。

毎年のように発売される遊戯王のゲーム。
その中の2010年版の攻略本という事もあって、性質上、後年の増刷は難しい商品だ。

当時は定価1,153円で売られていた本だが、カードショップでは付録カード1枚が2〜3000円以上で取引されていた程の希少さだった事は今でも忘れられない。
発売から1年以上が経過したその本をロンドンの片隅の、さらにさらに片隅の狭い和本コーナーで見つけた時の脳内麻薬の分泌量は凄まじかった。

購入後、攻略本のカードが必要な超人気デッキを使っていた弟にプレゼントをしたら非常に喜んでくれた。
弟はその必須カードが高すぎてお小遣いでは買えず、ショーケースに並ぶそれを見ては諦めるという日々を送っていたので、プレゼントを以て初めてデッキが『完成』を果たす事に。
その後の弟のデッキは、水を得た魚のように回り始めた。

こうして他人も巻き込んだ成功体験だからこそ記憶に残り続けているのだろう。



自分は今でもあの時の成功体験に縋り続けているような気がする。

成人後は希少生物を探す際にも同じような期待感と脳内麻薬が分泌されているし、原始人が過去に運良く美味しい物を拾えた際の記憶を意識しながら食物を探していた時なども同じような状態だったのだと思う。

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