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がん治療で発症するリンパ浮腫とは?〜リンパ浮腫専門看護師が初期症状やケアの注意点を紹介

はじめまして、私は看護専門外来のリンパ浮腫外来や浮腫ケアサロンで、リンパ浮腫専門看護師として働いており、メディカルアロマセラピストインストラクターの資格を持ち、がん患者さんの心のケアやリンパ浮腫でお悩みの方々に毎日対応させていただいています。
今回は、リンパ浮腫についてお話しさせていただきますね。

そもそも『リンパ浮腫』とは、どういうものなのでしょうか?

まず身体にはリンパ節というものがあります。これは体全体にある免疫器官の1つで、全身の組織から集まったリンパ液が流れるリンパ管の途中にあります。細菌・ウイルス・がん細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持ちます。リンパ節は、鎖骨や脇の下、鼠径部(足の付け根)、膝の裏など身体中にあります。
リンパ浮腫とは、このリンパ管やリンパ節が生まれつき機能が不十分であったり、二次性の圧迫や閉塞などによってリンパの流れが阻害されたり、リンパ液の減少が起こることで生じる浮腫(むくみ)のことをいいます。

がんなどの手術でリンパ郭清術をされた方や、外傷等でリンパ管を阻害されてしまった方の場合は、続発性リンパ浮腫(二次性リンパ浮腫)といわれ、いったん発症すると、治りずらく進行しやすいため、対処療法として治療が行われます。
がん治療後の続発性リンパ浮腫は、全リンパ浮腫患者の80~90%を占めており、原因となる疾患は、乳がん・子宮がん・卵巣がんが多いため、患者の90%以上が女性です。

女性や高齢者に多く聞く「むくみ」は、血液中の水分が血管外にしみ出して皮下組織に「水分」が溜まった状態を言います。リンパ浮腫は、リンパ管がリンパ液を回収する場所を失い、皮下組織に「リンパ液」が溜まった状態を言います。

がん治療で発症するリンパ浮腫に焦点を当ててみましょう。

がん治療でリンパ浮腫になってしまう大きな原因は、

 ・リンパ節郭清術 、放射線治療
 ・タキサン系抗がん剤 による治療
 ・センチネルリンパ節生検 

などが挙げられます。また、これらを組み合わせた複数の要因で発症することも多く、がん治療の3割くらいの方が発症するとも言われていますが、予備軍も含めると潜在的にはもっと多くの患者さんがいる可能性もあります。
 むくんだところが重くなる、関節が曲げづらくなるなど、生活にも影響することがあります。そのためリンパ浮腫に対する理解を深めることは手術後のQOL(生活の質の向上)を言う観点からも、とてもたいせつなことなのです。

リンパ浮腫はどうやって起こる?どんな種類があるの?

◆乳がんの上肢の場合
腋窩リンパ節の切除により、上腕部分で手先から上がってくるリンパ液が渋滞を起こし、行き場を失ったリンパ液が逆流を起こします。
 
◆子宮がんや卵巣がん等の下肢の場合 
骨盤内、鼠径リンパ節の切除により、大腿部分で足先から上がってくるリンパ液が渋滞を起こし、行き場を失ったリンパ液が逆流を起こします。

各場所で逆流を起こしたリンパ管内では詰まりが生じ、時間と共に詰まりが移動し広がるのです。 
ご自分で明らかな浮腫みを認識したときには、すでにリンパ浮腫は進行していることが多いため、リンパ浮腫治療を必要としている場合があります。

リンパ浮腫をあらかじめ予防することは難しいと言われています。ですので、早期発見・早期治療が肝心です。

リンパ浮腫の初期症状

上肢または下肢の重さ、だるさ、動かしにくさなどがあります。皮膚が乾燥し、がさがさすることも増えます。
上肢では、手の握りにくさや肩の上がりにくさ、下肢では、膝や足首を曲げたときの違和感、足の甲が腫れたり靴が履きにくかったりするかもしれません。

これらは更年期症状やその他の症状などと判断がしづらい為に、発見が遅れる可能性もあります。自己判断だけで経過してしまうと適切な治療のタイミングを逃してしまったり、蜂窩織炎といった炎症反応が出現してしまったりするので、定期的に主治医に相談したり、おかしいなと感じたら専門医による診察を検討していただくことが大切です。

リンパ浮腫を専門とする医師は全国的にも多くありませんが、医師によるリンパ浮腫外来や、看護師によるケア外来を開設している病院も増えてきていますので、まずは主治医に相談してください。専門医によってリンパ浮腫と診断をされると専門的な治療を受けることができます。

リンパ浮腫の治療

◆リンパ浮腫複合的治療:保存療法
 ・スキンケア
 ・医療リンパドレナージ
 ・圧迫療法
 ・運動療法
 ・日常生活指導:セルフケア指導

リンパ浮腫外科的治療(LVA・リンパ管静脈吻合術、リンパ節移植など)

リンパ浮腫ケアの注意点

リンパ浮腫ケアの一つでもあるリンパドレナージのケアを受けたい方は、街で見かける美容目的や健康目的のリンパドレナージュやリンパマッサージなどは、言葉は似ていても方法や目的が違うのでお勧めしていません。
また、市販品の着圧ストッキングを利用される方も少なくなく、何年も利用される方がいますが、着圧や履き口の幅など、各自のリンパ浮腫ケアには適していないこともありますので、リンパ浮腫へのケアは医療目的の施術を受けられるようにされてくださいね。

記:Tomopiiaコミュニケーション研修 第4期生 平城英里


「がん治療で発症するリンパ浮腫とは(2)〜患者さんの心と身体のバランスを整えるリンパ浮腫ケア」は、こちらからお読みいただけます。

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