悪徳社長からボクらの街を守れ!レイ君の黄金大作戦 :第1話「サギノカンパニー現る」

静かな読書家レイと明るい人気者シュウ、正反対でも仲良しな小学生コンビが直面する街の危機。

新参者「サギノカンパニー」の社長・鷺野が企む商店街破壊計画。

一方で、突如現れた謎の女性アスカが取り出したのは、意外にもモノポリー!

このゲームが、二人にどんな学びを与え、街を救う戦略を導き出すのか!?

少年たちとアスカが挑む悪徳社長との頭脳戦を見逃すな!

……

第1話:サギノカンパニー現る

レイは、いつものように公園の隅の木陰で、分厚い経済学の本を読んでいた。

正確には、読んでいるふりをしていた。実際は、隣で騒いでいるシュウを観察していた。

シュウは、得意のサッカーボールを自在に操り、まるでボールと一体化しているかのように、軽やかに公園を駆け回っていた。

レイとシュウは現在小学5年生で、小学校1年生からの付き合いだ。2人はまるで正反対の性格だが、なぜか気が合った。

レイは内向的で、普段は目立たない。しかし、頭の中は常に様々な戦略や分析で満たされていた。

イタズラも好きだが、絶対にバレないように綿密に計画を立てるタイプだった。

一方、シュウは学年一の運動神経を誇る人気者で、行動力があり、明るく誰からも好かれる性格だった。

イタズラも好きだが、いつも詰めが甘く、すぐにバレてしまう。

それでも、持ち前の愛嬌で許されてしまうのだから、ある意味才能と言えるかもしれない。

「レイ!見て見て!このドリブル!」

シュウが満面の笑みでレイに駆け寄ってきた。汗で額に張り付いた髪が、夕日に照らされてキラキラと輝いている。

「ああ、すごいな」

レイは相変わらず無表情で答えた。内心では、シュウの運動神経には感心していたが、それを素直に表現するのは、レイの美学に反していた。

その時、公園の入り口に一台の黒塗りの高級車が止まった。

中から出てきたのは、見るからにやり手といった風貌の中年男性だった。

ビシッと決めたスーツに、ギラギラと光る腕時計。

その男は、公園の真ん中に堂々と立ち、周囲を見回した後、満足げに頷いた。

「あれ、誰だろう?」

シュウが不思議そうに呟いた。レイもその男から目を離さずにいた。何か、嫌な予感がした。

その男は、サギノカンパニーの社長、鷺野(さぎの)だった。

鷺野は、最近この街に進出してきたばかりの新参者だった。

街の商店街の人々は、新しいお店ができることを歓迎していたが、鷺野のやり方は、どこか強引で、周りを顧みないところがあった。

鷺野は、公園のすぐ隣にある古い商店街の一角を買い取り、そこに巨大な商業ビルを建設する計画を発表していた。

商店街の人々は、最初は街の活性化に繋がると期待していたが、鷺野の提示した条件は、あまりにも一方的で、商店街の人々を追い出すような内容だった。

その日から、街の雰囲気は少しずつ変わり始めた。商店街の人々は不安を募らせ、街全体に重苦しい空気が漂い始めた。

レイも、鷺野のやり方に疑問を感じていた。何か裏があるのではないか、と。

ある日、レイとシュウは、いつものように公園でイタズラを計画していた。

ターゲットはベンチで難しそうな本を読んでいる、20代前半から半ばほどの女性だった。

「なあ、レイ。今日はあの人に、ちょっとしたサプライズを仕掛けようぜ!」

シュウが目を輝かせながら言った。

「またか。お前は本当に懲りないな。どうせまたバレるぞ」

レイは呆れたように言ったが、内心では、シュウの無邪気さに少しだけ救われている部分もあった。

二人が仕掛けたイタズラは、ベンチの近くに隠しておいたラジコンカーを遠隔操作で走らせ、女性を驚かせるという、ごく単純なものだった。

しかし、ラジコンカーは予想外の方向に走り出し、女性の足に当たってしまった。

女性は驚いた拍子に持っていたコーヒーカップを地面に落としてしまった。

「あ!」

女性は驚きの声を上げた。レイとシュウは慌てて駆け寄った。

「すみません!すみません!」

シュウが必死に謝った。女性は、落としたコーヒーを拾い上げ、2人に優しく微笑んだ。

「大丈夫よ。気にしないで」

その女性こそ、アスカだった。アスカは、二人のイタズラの理由を聞き、少しだけ注意した後、彼らに興味を持った。

そして、カバンから取り出したのは、なんとモノポリーだった。

「よかったら、一緒にモノポリーでもしない?」

アスカの唐突な提案に、レイとシュウは顔を見合わせた。

こうして、レイとシュウとアスカの、悪徳社長との戦いが幕を開けることとなる。

そして、モノポリーは、彼らにとって、単なるゲームではなく、人生の羅針盤となることを、彼らはまだ知らなかった。

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