時には棒金を「ガッ!」ってやっても構わない、と私は思います
接客には、もちろん理想の形があるのですが「 これでもいいじゃん」と思うことも多々あります。
地元客&観光客が半々くらいのお豆腐屋さんに行きました。
店内には私ひとり。
製造と販売を兼務しているスタッフさんが店頭に出てきてくれましたが、まだ不慣れな様子で、待機しているだけで緊張感が伝わってきます。
それでも「お豆腐はどれがおすすめ?」と聞けば「やっぱりこちらですね、すごく濃厚です」と応えてくれるなど、とても感じが良い方でした。
そんな新人の彼女、会計時レジ操作に困ってしまい、ベテランのスタッフさんに助けを求めていました。
商品の入力から、セット販売への組み替えなど、いくつかの操作を代わりにしてもらい、おそらく頭が真っ白になってるのだろうな~…という様子の彼女。そして、よりによってこのタイミングで釣銭切れになりました。
棒金(硬貨50枚の包み)のビニールを剥がすのに苦労している様子で、私もついその手元に見入ってしまいました。
そこにすかさず、ベテランのスタッフさんが割り入って
「 これね、こう『ガッ!』ってやったら開くから」
と、カウンターの角に棒金を叩きつけて、一瞬で開封してくれました。
あまりの落差に思わず「 ふふっ」と笑ってしまった私。
ベテランの方は「すみませんねぇ」とニコニコ。
私もレジ対応をしたことがあるので「いえいえ、やっちゃいますよね~」と話したら
「やりますよね、『ガッ!』てやると、たまに『バーン!』ってなったりして~(笑)」と、両手を広げ、床じゅうに小銭が散らばった様子を全身で表現してくれました。
そんなことを話している間に、彼女はお釣りとレシート、そして商品の支度を整えてくれて、無事に退店しました。
お店の暖簾をくぐり日傘を開いていたら、背後からは「そうそう、ガッ!てやっていいの、でもバーンってなることあるけどね!」と聞こえてきて、私の頬はゆるみっぱなしでした。
もちろん、お客様の前で「ガッ!ってやっていい」お店と、そうでないお店はあるし、本当はやらないに越したことはないでしょう。
でも、この時のやりとりは、明らかに新人スタッフさんの心を救うものだったと思います。
正しい仕事を覚えること、より良い接客をすることは大切ですが、それと同じくらい、そこで働く人のことを大切にしていきたいものですよね。
状況を瞬時に読み取って、横から「ガッ!」してくれる先輩に恵まれて、彼女は幸せだなぁと思いました。