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TFCC損傷に対する治療戦略とアプローチ

今回は前回に引き続き、TFCC損傷に関するお話になります。前回は病態の説明をさせていただきましたが、実際に対峙した時にどういった対応をとっていけばいいか考えていかなければなりません。
そこで今回は、TFCCに対峙した際の治療戦略をお話しさせていただきます。


1. TFCCの病態のおさらい

大きく3つに分けられることを解説させていただきました。
❶橈尺靱帯(RUL)
❷TFCに付着する靱帯群
❸TFC実質

この3つが主に分別される解剖学的に病態をきたす部位となります。詳しい病態に関しては、前回のnoteに記載しておりますので是非立ち返ってみていただけたらと思います。

私がこの部位に対して対峙したことのある代表例を以下に示します。
❶背側RULの損傷やDRUJ不安定性による尺骨頭の背側変位
❷ECU腱鞘周囲の腫脹(医師による診断)
❸TFC実質の損傷

ではなぜ野球選手でこの様な症状が起きてしまうのでしょうか

野球選手で起きやすいTFCC損傷といえば、以下の2つが先行文献から挙げられます。
❶内角スイング時の詰まり
❷帰塁時のヘッドスライディング

私が経験したものはこの2つに加えて、
❸アウトコースのボールを泳いで引っ掛けた際に痛めた
❹バットを振り込む量が増えてだんだん痛くなってきた

この様な訴えを耳にします。
ここから考えられることは病態には、急性のものと慢性のものが混在していることと、メカニカルストレスがいくつか存在していることが考えられます。これらの違いによって解釈する病態が変わってくるのではないでしょうか。

私が問診で大切にしているのは、
急性症状(鮮明な一発のエピソード)
慢性症状(繰り返しの動作)
どちらに当てはまるかです。

急性症状では、急性の構造学的な破綻を疑いますが
慢性症状では、身体機能の低下を疑い所見を確認していきます。

急性症状では、多くは手関節尺側周囲に炎症所見が散見され(医師による診断)、強い痛みと腫張を訴えている印象があります。どんなに大切な大会期間中で試合出場を余儀なくされても、ADL上で極力使用しないようにサポーターを駆使して安静に努めます。

慢性症状ではメカニカルストレスによる疼痛を訴えることが多く、さまざまなメカニカルストレスがTFCCに影響していることが挙げられます。

例を挙げるとメカニカルストレスには、
❶尺側手根関節への圧縮応力

❷バットスイング時の尺側手根関節への圧縮応力と回内による剪断応力

❸DRUJに対する引張負荷

以上のようなメカニカルストレスが起こっているとされております。
このメカニカルストレスから考えられる病態に対しての治療戦略をこれから解説させていただきます。

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