「地域の歴史を編纂する」を、いつかやってみたい
この夏に帰省した時にね、どうしてもうちの実家すぐそばにある、橋の名前が気になってしまったんですよ。
地元にはね、南北に流れ、市をふたつにわかつ二級河川が流れています。私の実家も、じいちゃんばあちゃんちもその川のそばにあったんですね。
橋は、市役所や駅があるちょっと都会の西側と、ちょっと田舎の東側を繋ぐためにかけられたもので、当時はまだたぷたぷとした川で小船の往来があり、東側の住民からすると西側への仕事や買い物の往来がずいぶん楽になったと思います。昭和30年代のことです。
で、なぜその名前なのか?
戦後の影響もあっただろうから、戦時中に活躍したパイロットの名前などとも関係があるのかなとか、それとも他に理由があったのかなとか、まあ気になってしまって夜も眠れない(嘘)。それで、図書館に駆け込んだんです。
郷土史のコーナーを見てみたけれど、該当する資料がありません。というか、どうやって調べたらいいのかよくわからない。そんで、レファレンスコーナーに行き、おそるおそる司書の方に相談しました。
「えっと、、あの、市内の橋の名前の由来を知りたいんですが」
こんな問い合わせ年に何件あるんだろな?と思いながら尋ねてみたら、「え?橋の名前の由来ですか?郷土史のコーナーになければうちではもう該当する資料はないと思うんですが・・・」
史書の方の反応は、最初はちょっと冷たいように感じました。調べる方法がわからないので、どうやって見つけたらいいか教えて欲しいとちょっとだけ食い下がってみたら、
「・・・ちょっと調べてますので、後ほどカウンターに再度お越しください」
と言ってくださいました。私の勝手な「気になる」に付き合っていただいているんだから、なければないで仕方がない、これ以上追求する理由もないしなあ、と思いながら、しばらくしてあまり期待もせずカウンターに戻りますと、
4冊の資料がカウンターに置いてあったのでした。
「ここに記載がなければここでは難しいです」と言って差し出してくださったのは、
昭和50年代に編纂された分厚い市史と、最近刊行されたガイドブック、それから橋がかかる町内にある公民館の記念誌二冊でした。しかも、該当箇所にしっかり付箋をつけてくださっている。
私は感動した。ちょっと考え込むようだった司書の方の反応は、決して私の問い合わせが面倒で嫌だったわけではなくて、「適切な資料にあたれるか」という、責任感の裏返しでもあったと、その時やっとわかりました。
私が知りたかった、橋が建造された当時の背景、名前の由来はしっかりと、それらの資料に記載されていました。
それは、この夏一番だったと言ってもいいかもしれない感動でした。「物事が明らかになる」爽快感。決して一人の力でできることではありません。
地域には地域の歴史があって、こうして文字として残っているのは、積み重ねた人々の暮らしそのものはもちろん、「編纂して後世に伝えよう」としてくれたチームあってこそ。面倒で時間のかかることなのに・・・時間かけて調べたり、書いたりしてくれた人がちゃんとおるんやなあ・・・(涙)。
特に、直球で橋の名前の由来が書かれていたのは、地域の歴史をまとめた公民館の記念誌でした。私は読み終えた後、奥付け(編集委員さんのお名前や印刷所さん、その他諸々のクレジットが記載されている最終ページ)をじっくりと眺め、
「皆様、ありがとうございます!」
と、心の中で感謝を伝えました。(本当は手紙を書いてお礼したかったけれど筆不精でここからすみません)
公民館が発行した記念誌を読む人はどのくらいいるのだろう、と思いました。税金をかける意義、そこにかかる時間、労力、そういうものを今の出版の常識に照らし合わせて考えると、「割に合わない」という答えしか出てきません。
だけど、私には、これまでにない価値があった。ワードファイルで打ち込み最安値で製本されたであろう、記念誌が神々しく思えました。
橋の名前が気になってしまった理由も、今はよくわからんのです。でも、ちょっと落ち着いて自分を振り返っている今は、あの橋が、「地域の歴史編纂って面白いよ」と私に教えたかったのかもしれんな、と思っています。
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