中学生の頃の私に教えてあげたい、物語文の“前提”。
こんにちは。とみーです。
先日、「物語文の読解」について相談を受けました。
相談者は、中学生のお子さんがいるご近所さん。
お子さんは、数学が大得意。英語はまあまあ。国語は苦手。
そして、国語の中でも「物語文」が苦手で、テストで点が取れない。
どうしたら良いの? ということでした。
これ、実は私も中学生の時に困っていました。
(そのお子さんと違って、私は数学が大の苦手だったけれども。)
ということで、今日は「中学生の頃に知っておきたかった『物語文』のこと」について書きたいと思います。
私が講師になって知ったこと。それは、「物語文には前提がある」ということ。
これから紹介することは、大人にとっては当たり前かもしれません。でも、当たり前であればあるほど、明文化して教えてくれなくなるのも事実です。
物語文の前提とは?
【前提】
・物語文は、すべての文に意味がある。
・何気ない文に、登場人物の気持ちが反映されていることがある。
あくまで中学生向けの前提です。高校生が学ぶ小説の一部や、本屋に並ぶ小説全般については例外的な物も多くあります。
物語文は、事実をそのまま書いた物ではありません。
伝えたいことが効果的に伝わるように脚色がなされています。
それをしっかりと意識した上で、物語文に向き合うことがテストでは大切になります。
はい。これが前提です。
当たり前のことですよね?
でも、当たり前と思えていない子も一定数いる「当たり前」なんです。
お恥ずかしながら、私が中学生の時のエピソードを紹介します。
私が中1の頃のエピソード
その日の授業で扱った題材は、「そこまでとべたら」(安東きみえ)でした。
主人公でもある女の子が、モヤモヤした気持ちを抱えたまま学校生活を送っています。
彼女は学校から家に帰ってテレビゲームをしていました。
そのシーンに出てくるのが、「魔の山をこえるアイテムが、どうしても見つからない。」という表現。
そこまで読んで、国語のS先生が、
「ここには、『問題を解決するための糸口をつかむことが出来ていない主人公の気持ち』が象徴されていますね」
とサラッとおっしゃって、黒板を書き始めました。
大人であれば、「はいはい、そうですね」と納得できる説明かも知れません。
でも、中学生の私は混乱しました。
「えぇぇぇ~? そんな馬鹿な!」と。
当時の私は、「ゲームで特定のアイテムが見つからない。そのことに、それ以上の意味も、それ以下の意味も無い」と思っていたのです。
日常生活であれば、ハッピーな気分なのにゲームがクリアできないことだってある。
逆に、最悪に落ち込んでいるのにゲームのレベルだけはどんどん上がることだってある。
その人の心の状態と、外界のゲームはあくまで無関係。
母親に小言を言われた主人公がドアを「バシン」と閉めた、という箇所では、そりゃ主人公が怒っている(母親を拒絶している)ことは分かる。私だって、嫌なことがあればわざと音を立ててドアを閉めることがある。
でも、作中のゲームに主人公の気持ちが反映されてるって何…?!
そう、当時の私は【前提】を知らなかったんです。
ゲームのアイテムと同じように、物語の中で太陽が雲に隠れるといった天気の描写も、単なる情景描写だと思っていました。
どうしても時間経過や天気のことを書いておきたい事情でも無い限り、太陽が雲に隠れるのは「何か良くないことの予兆」だったり、「明るかった気持ちに影が差した」りしたことを象徴しているのですが、それが分からなかった。
授業で習えば、それぞれの描写については憶えるけれど、はじめての文章では分からない。
「魔の山をこえるアイテムが、どうしても見つからない。」
20年以上経った今でも憶えているのですから、よほど衝撃だったのでしょう。
なまじ、説明文(評論文)の成績は良かったものだから、学校の先生も私がこんなところに躓いているなんて思わなかったはずです(笑)。
そんな私が「国語が得意な子」だと認識されたまま進学し、国語の講師になり、「テストの作られ方」を知ってはじめて、「物語文の前提」について偉そうに文章にしているんですから、世の中っていい加減ですね。
そう。実際の世界は、物語の世界に比べれば驚くほどいい加減。
タイムスリップできるなら、あの頃の私に教えてあげたい。
タイムスリップできなくても、あの頃の私と同じように、物語文のテストに悩む子に教えてあげたい。
「大丈夫。物語の前提を教えてあげるよ」。
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