
好きなことを仕事にするということ
ネイリストになろうと思ったのは25歳のとき。大学卒業して中小IT企業勤務3年目の頃。仕事が楽しくなくて、ただひたすら1日終わるのを待つ日々。砂を噛むような生活というのはこういうことを言うんだろうなぁと思ったのを覚えている。
ネイリストになろうと思ったきっかけ
そんな日々の中、テレビである野球選手の奥さんがネイルサロンを経営してるというのを見て、自分がネイルが好きなことを思い出した。今から16年も前、まだジェルネイルも主流ではなかった時代にネイリストになろうという発想はなかった。それなのに、その番組を見ただけで「あ!なろう!」「私、これやりたい」とスンと腹に落ちた。人生で初めて自分が好きなことを見つけた瞬間だった。こういうのって人生で何度か訪れるんだろうか。
それからOLをやりながらネイルスクールに通った。親にお金を借りて。具体的に言うと100万円ほど。当時、18歳から一人暮らしの私は貯金がゼロ円。それでも親に頭を下げて通わせてもらった。反対もあった。田舎から出て、四大を卒業して、中小とはいえ企業に就職しているのに、25歳からネイルスクールに通うって。でも、どうしてもやりたかった。
趣味を仕事にすること
これについてはいろんな意見があった。私もそれについては考えた。絶対ネイリストになりたいとはいえ、趣味は趣味で置いておいたほうがいいのではないか。仕事にしたら嫌いになるかも。と。しかし、そんな悩みはスクールに通い始めてすぐに吹き飛んだ。知りたいことを教えてもらえるってこんなに嬉しいんだ!!出来なかったことが出来るようになるってこんなに充実感があるんだ!!何より、好きなことに一生懸命向き合えるってこんなに楽しいんだ!!と、毎日ワクワクしていた。
OLとネイリストの掛け持ち
スクールに通い始めて1年間は週5日は会社勤務、土曜日にネイルスクール。毎回課題が出るので家で練習をして仕上がりを先生に見てもらう。検定前の1週間は特別授業があって、追加何万か払うんだけど、朝から終電まで先生がみっちり指導してくれる。
当時、大阪から滋賀まで2.5時間かけて通勤(客先へ出向)していたので、定時17時に仕事が終わり、大阪のスクールへ行って、終電まで特訓。帰ってから復習。翌日は滋賀へ仕事。1日の睡眠時間3時間くらいだったと思う。
思ったように出来なくて悔しくて、スクールの帰り道泣いたりもした。それでも辞めたくなったことは一度たりともなく、前に進むことしか考えてなかった。検定1級合格後は、OLと掛け持ちで、土日だけネイリストとしてバイトを始めた。休みなしだったけど充実の日々。プロになったとはいえ、技術的にまだまだだから、合間を縫って練習も続けた。練習したくてたまらなかった。
ネイリストに向いているひと
ここ数年、ネイリストを雇ってもすぐに辞めていくひとが多い。練習しないひとが多い。私はあんなに練習好きだったのに。友達だけでは足りず、友達の友達、当時はmixiでも呼びかけてはじめましての人を家に招いて練習させてもらった。そこまでしても練習し足りなかった。練習しないと不安で仕方なかった。それなのに、最近のネイリストの人はなんで練習しないの???その程度の技術で不安じゃないの??と不思議でならない。ネイリスト友達に聞いても同じことを言っていた。私のサロンの採用スタイルは来る者拒まず去るもの追わず。よほどじゃない限り面接をして合格。そのスタイルでやってきてネイリストに大切な素養は「練習が好きなひと」。
あと、もうひとつ。ネイリストという職業は、自分のネイルを綺麗にしたい(だけの)ひとは向いていない。自分のネイルはボロボロでもひとにネイルを施して、そのひとが喜んでるのを見て自分の喜びに出来るひとじゃないと続かない。「ネイリストになったら自分の爪はタダで綺麗に出来てラッキー♪」くらいのモチベーションでは続かない。「ネイルが好き=ひとにネイルをしてあげるのが好き」とは限らないということ。
ネイリストになって良かったこと
ネイリストってキラキラしてるように見えるかもしれないけれど、実態は地味な職人。自分は裏方でお客様が主役。繁忙期には予約がひっきりなしで自分のネイルに構ってられないときも多い。年中肩凝りだし、腰痛持ちも多い。みんな整体に行ったり、ヨガでメンテナンスしたり。結構重労働。それでも日々ひたすらお客様のネイルを綺麗にする。帰り際、お客様から「これで明日からまた仕事がんばれます」という言葉が聞けたとき、どれほど幸せか。ぜひ、そんな幸せを体感して欲しい。
大学卒業して、IT企業で働いてからネイリストって、最初は遠回りしたかなと思うこともあったけど、今となっては全てがいい経験としてお客様との会話でも役立っている。高校卒業して美容学校からネイリストという道もあるけれど、私は一旦違う仕事に就いてみることをお薦めしている。
厳しい現実も色々書いたけど、私はネイリストになって良かったと、15年目の今でもそう思う。
最後に
好きなことを仕事にすること、これは全ての方にお薦めしたい。1日の3分の1が仕事に費やされる。それが好きなことが出来る時間だと想像するとワクワクしてきませんか?
好きなことを仕事にしても幸せになれるかどうか。自分はどうなんだろう?と考えるとき、少しの間お金を稼げなくても楽しそうかどうかを想像してみてください。「お金稼げなくても養ってくれる人がいる環境」という意味ではなく、例え貧乏生活してもその仕事を楽しめるかどうか。
実際私も雇われの身だったときはずっと貧乏だった。当時のオーナーがケチだったというわけではなく、ネイルサロンという業態はそんなに儲からない。自分がオーナーになった今実感している。そんな貧乏生活でも仕事が嫌だと感じたことはない。仕事であって、仕事ではないような不思議な感覚。好きなことを仕事にして楽しんでいるうちに自然とお金はついてくる、と今でも(今だからこそ)本気でそう思う。