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「帰ってこい」ではなく「帰ってきたい」を創るキャリア教育

#GIAHSオンラインイベント
#地域協働学習オンラインセミナー
↓のオンラインセミナーでお話した内容をNoteにまとめた記事です。

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今回は移住者である私が感じる椎葉村の魅力と椎葉村でのキャリア教育の事例をご紹介いたします。

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みなさま椎葉村ご存知でしょうか?
標高1,000mから1,700m級の険しい山々に囲まれており、大規模な稲作は困難な地域です。椎葉山で行われている焼畑農業は縄文時代の農法を色濃く残しており、焼く場所を毎年移し、4年程度ソバやヒエ、アワ、大豆などの穀物を栽培し、休閑期を設け、森林を再生する循環型農業です。

伝統文化と美しい景観、さらに貴重な地域資源を生かしながら、日本の原風景を守り続けようと「日本で最も美しい村」連合にも加盟しています。


椎葉村についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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信号機は1台、人口2579人(2021.02.21時点)、面積は東京23区と同じくらいです。先ほどGIAHS認定地域全体としては92%が森林ということでしたが、椎葉村はもっと森林が多く、96%となっています。

鹿が4000頭と、人口より鹿の方が多い地域です。

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改めて、自己紹介をさせていただきたいと思います。

私は広島県広島市の出身で、高校卒業後首都圏でシステムエンジニアとして働いていました。椎葉村に移住して4年目で、椎葉村地域おこし協力隊を経て、任期中に起業し現在は合同会社UIキャストの代表を務めています。

5歳の息子と二人暮らしで、この写真にある通り、椎葉村女性消防団としても活動しております。

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田舎はいっぱいある中で「なぜ椎葉村なの?」とよく聞かれます。

先ほど阿部先生もおっしゃっていましたが、私もこの地域の一番の魅力は「人」だと思います。

印象的だったエピソードは、初めて椎葉村に来た時、村唯一のスーパーに入ったら「お疲れ様です」と言われたことです。ここに住む人達はどういう暮らしをされているんだろう、と不思議に思いましたし、顔見知りの人ばかりの中で誰にでも親切に暮らしている地域性が伺えました。

これが「この地域住みたいな」と思う最初のタイミングでした。

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私たちがこの地域でやりたいことは…

椎葉村は「地域で子育て」というのが根付いている地域だと感じます。先生たちが異動していっても、地域と学校が協働し続けるための仕組みづくりをしたいと思っています。

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次に私が感じた、この地域の魅力と特徴についてご紹介したいと思います。

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慶応大学の前野先生という方がいらっしゃいまして、日経新聞や色んなメディアで幸福学についてお話されている先生です。

とあるご縁で知り合い、前野先生も広島出身で、同郷のよしみということで椎葉村に来ていただけることになりました。

その際、地域の方々とぜひ触れ合って頂きたいと思い、交流会を企画しました。先生方が幸福度を測るための簡単な質問があるそうで、地域の方々にこう質問されました。

「あなたが本当に困ったとき、何人の人が助けてくれますか?」

日本の都市部に住む人達は大抵「親戚や家族くらいかなぁ。2~3人くらいです」と言うそうです。

私と同世代の男性は「50人くらいいるんじゃない?」と冗談交じりにポロっとこぼしました。

それを聞かれた先生は本当にびっくりされたご様子で、「ここは日本一幸せな村かもしれない」とおっしゃっていました。

この地域の人はたくさんの人に支えられながら暮らしているのが当たり前。(自分ができるときには支えるというのも当たり前)というのが魅力の一つだと感じます。

この魅力の背景には、こんな魅力もあるのではないかと思います。

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この地域の人は「のさらん福は願い申さん」とおっしゃいます。

これは、「神様が与えてくれた分だけでよい(欲張らない)」
「自分が必要な分だけでよい(足るを知る)」
という意味です。

この精神は焼畑や、狩など椎葉での暮らしの根底にあると感じます。このスライドの写真は日本ミツバチの養蜂、蜜を取っているときの写真ですが、養蜂においてもこの精神が用いられています。

蜜をとるときは、全部とってしまわないで、この巣箱に住んでいる蜂たちが冬を越せるだけの蜜は残しておくそうです。

これこそ持続可能性ですよね。

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この地域の特色②、神楽です。

この写真は私の暮らしている集落の神楽です。舞っているのが中学生の男の子、笛を吹いているのがお母さん、写真には写っていませんが太鼓を叩いているのがお父さんです。

親子で神楽を継承している素晴らしい事例です。

神楽はすごく複雑な構成になっており、一晩中舞われます。舞い手である男性陣もとても大変なのですが、それを支える女性も大変です。

この時間には手打ちの蕎麦を出し、この時間にはぜんざいを出し、この時間には朝食を出すと。このそれぞれの食事もとても美味しくてこだわりと伝統の作り方があるようです。

これを1年に1回しかやらないのに、それを覚えているというのはすごいことだと思います。地域の人達が集まって一つの知識を作っている=共同知をつくっている、それを形として残している神楽は本当に素晴らしいと思います。

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この地域の特色③、ここでの平等と書いていますが…

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例えば、焼畑を3人で作業した場合、スライドには9つのブロックがありますので、3ずつわけるのが普通ですよね。

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しかし、椎葉では作業した人の家族も人数に含めた平等となります。家族が多い人や小さい子どもがいる家庭には多く与えるのが当たり前です。

この精神は焼畑に限らず、普段から見受けられます。例えば集落の新年会で野菜が多く余った場合には、「あんたとこは子どもがまだ小さいけぇ持っていきない」と声をかけてくださいます。


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特殊な環境で育つ子どもたち、と書いていますが、広島県広島市で育った私には想像できないような環境で椎葉村の子どもたちは育っています。


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人口マップで見ていきたいと思いますが、椎葉村は典型的な少子高齢化の地域です。

地域の特性上、とある部分の人口が極端に少なくなっています。高校と大学が椎葉村にないため、ここに住む子どもたちは、高校進学と共に椎葉村を離れることになります。

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小中学校の場所もそれぞれが離れています。隣の小学校区に行こうと思ったら何個も山を越えなければいけません。また、小学校区ごとに方言が残るほど、それぞれが個別のコミュニティとなっています。

赤丸の部分が村の中心部になるのですが…

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とても時間がかかります。だいたいこれくらいですね。

不土野小学校から村唯一の中学校に行くには車で40分くらいかかります。ですので、全校生徒57名中39名が寮に入っています。

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中学校入学と共に親元を離れるというのは、一方では寂しいような感じもしますが、私はそればかりではないと感じます。

私より年下の女性がチェーンソーを扱っていたり、役場の職員の同級生が大木を切り倒している姿を見ると、本当にすごい!と、尊敬の念ばかり生まれます。

私と同世代の人達が気が利いてなんでもできるのは、こういう環境で育ったというのも一つなのではないかと思いました。

支え合いながら自立して、育ってきたからこそ、他者を思いやり、なんでも自分でやる精神が身に付いたのかもしれません。

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ここからは未来づくり対話会についてお話したいと思います。

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未来づくり対話会は、「未来を担う中学生が自分や社会の将来について考えるための方法を身に着ける場」として実施しました。

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富士ゼロックスさんと椎葉村役場が始めた事業で、当初から最終的には地域が自走してこの事業を実施することを目標としていました。

椎葉村地域おこし協力隊として活動していた私と、ファシリテーターとして活動している現役協力隊のメンバーとでこの事業を自立させるために、昨年度から準備し、今年度はいよいよ事業主体をこちらに移し、実施いたしました。

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この未来づくり対話会で実施した内容は大きく分けて2つです。

①この地域に生きる大人の職業について知ること

②この地域に生きる大人の人生を通じて自分のあり方について考えること。

この二つです。

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今年は、5月8月10月11月にそれぞれ2時間ずつ、計8時間実施しました。

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未来づくり対話会を行うにあたり、村内の色んな職業の人を呼んできました。

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大人の人生を聞く「ライフヒストリー」が子どもの心に残ったようでした!

この地域にいる大人は自分でここでの暮らしを選択した人達です。Iターン、Uターン、お嫁さんに来たなど。椎葉に来るまでに都市部での暮らしを経験した人達も。

なぜここでの暮らしを選んだのか、子どもたちに「人生」を話しました。

当初は一人の大人にだけ聞く予定にしていたのですが、とても好評だったので計3名の大人の人生が聞けるようにメニューを変更して実施しました。

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これは第四回目に実際に使用したスライドですが、子どもたちはよく「将来なにになりたい?」と聞かれると思います。

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「なにになりたい?」という目に見える行動よりも、「どんな自分でありたいか」という目に見えない意識や欲求の方が大事だと考えました。

YouTuberになりたいというけれど、その背景には「注目されたい、人を笑顔にしたい」などのありたい姿があるのでは?ということで、子どもたちの今の自分を知るという部分を深掘りしました。

憧れている人の素敵な部分や感謝されていうれしいことを書き出して、「未来の自分三箇条」というのを作りました。

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最後、コースターにしてみなさんにお配りしたところです。

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今年度実施してみて色んな課題もあったのですが、もっともっとやれるんじゃないかと、ワクワクも見つけられました。

この事業は地域振興課の事業なのですが、今年度巻き込む人を増やし、これまで連携できていなかった、教育委員会や学校の先生方とも繋がりを作ることができました。

教育委員会の方からもっと学校の授業と繋がりをつくり、学びを深めないともったいないと指摘をいただきました。これをきっかけに来年度の計画づくりも進んでいます。

来年度は8時間だけの関わりではなく、学校の総合の時間全般に私たちが関わらせていただき、より深い学び、より地域とのつながりを深めるというところをポイントにして実施していく予定です。

特に1年生はGIAHSをテーマにして自分たちの地域は本当にすごいところだということを知り、学びを深めていきたいと考えています。

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私たちがこの事業をやるにあたり、子どもたちにどんな価値を与えることができるのかといつも考えています。

学校でも役場でもない、民間の私たちが学校の授業にかかわるという部分では、地域の人達との繋がり、移住者同士の繋がりという部分を子どもたちに提供したいと考えています。

多様な人生を子どもたちに伝えることで、子どもたちの選択肢を増やしてあげたい。「帰って来るしかないんじゃないか」、「今村内にない職業になりたいから帰ってこれないんじゃないか」というところを突破するための多様な人生観や手段を教えていきたいなと思っています。

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椎葉村は人口減少という根深い課題を抱えていますので、どうにかして帰ってきてほしいと思っている大人がたくさんいます。だからこそ、帰って来ることを押し付けるのではなく、移住者である私たちのような、協力隊のような人達がここを選んで、住みたくて暮らしていることを伝えて、それだけの魅力があることしっかりと伝えていきたいと思います。

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最後までご覧いただき、ありがとうございました。

天野

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