ふたたび放置・様子見状態へ
俺の病の現状は、直腸がんの肺転移ならびに後腹膜リンパ節転移で、ステージ4である。
過日、主治医との面談時に、使えるかもしれない抗がん剤の話題が出た。
そのときまでに、腫瘍を消滅あるいは縮小させる効果は無い「後方ライン」と呼ばれる薬の一つである「ロンサーフ」を服用しており、結果として腫瘍の増大が止まらなかったために使用を取りやめた時期だった。
主治医は、もう使える薬が無いから、しばらく何もしないで様子を見るという診断を下した。
しばらく経ったある日のこと、ネットで新薬の情報を見かけたので、プリントして診察日に持参し、「先生、こんな情報があるんですが、治験が行われるなら受けてみたいです。保険適用になるまでには時間がかかりますかね?」と打診してみた。
すぐのことにはならないだろうということで、その案件の進展はなかったが、一つ検査をしてみますかとのことだった。
その検査とは「B-raf 遺伝子検査」といい、変異型なら使える薬があるという。
なんだ先生、もう打つ手が無いんじゃなくて、道はまだあるんですね!
主治医はプロだから、当然これらの方法については熟知しているはず。
これまで話を切り出さなかったのは、使える可能性がとても低いので、様子見の方が患者(俺のこと)のために良いと判断されたのかもしれない。
「B-raf 遺伝子検査」は肺に針を刺し腫瘍の細胞を採取して行うとのことで、一泊二日の入院になった。
結果は残念ながら変異型ではなく野生型だった。
よって、想定されていた薬は使えないことに。
ところがまた新たな可能性が出てきた。
MSRという検査が陽性(MSI-High)ならキイトルーダという薬が使えるが、陽性の確率は1%で、しかも女性に多いらしい。
この情報は、戸畑に通って治療を受けていたときに仲良くなり、以後も交流を続けている看護師さんからのものだった。
さっそく主治医に話してみると、先日の肺の生検細胞で検査ができるので、やってみましょうということに。
そして結果は、残念ながら陰性だった。
その結果を聞いたときの診察時に、上記の「ロンサーフ」の前世代の薬「スチバーガ」を試してみますかという提案があった。
この分子標的薬は副作用として手足症候群が酷く発現するとのこと。
そうであっても試してみたいという俺の姿勢は変わらない。
そして1クール(3週間)服用してみたら、やはり手足症候群が酷く発現した。
手の関節が痛み、足底が腫れて歩きにくくなった。
手の指先は少しましだったが、このまま進行すれば確実に楽器が弾けなくなる。
あとは、急に食欲がなくなり、躰が疲れやすくなった。
発病以来、一度も食欲が落ちることはなかったから、これはショックだった。
躰の疲れは、ちょっと動くと横になりたくなるくらい。
結局、この薬もデメリットの方が勝るということで、服用中止になった。
ここまでいろいろ試してきて、タイトルにあるように「ふたたび放置・様子見状態へ」と相成ったわけである。
ただ薬には、デメリットの反面メリットもある。
スチバーガの副作用は出たが、腫瘍に一定の効果はあったらしく、腫瘍由来の咳が少し収まった。
残念なことに、服用を止めたから、また咳がぶり返してきたが。
こうして、いろいろと試しながら、日々を過ごしている。