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造園業はオワコンなのか!?「シン造園業」的にアップデートしよう! #0131

先日、地元の造園会社の方を交えて客先で打ち合わせをしていた際、その造園業者の方が「造園業には若い人が集まらなくて、、」と嘆いていました。

なるほどそうだよなーと思う反面、これ、自分の感覚とは反対でもあるなーと思っています。造園業はめちゃくちゃ可能性あると思っているし、今はけっこうやりたい人多いんじゃないかなーー?と。

造園業って本当にそんなに人気ないんですかね?
というか、そもそも人が集まる業界ってどういうことなんだろ?ということも含めて考えてみました。


造園業の就業状況って実際どうやってんのよ

まずマクロの動向から見てみます。
造園業に携わる就業者数を政府統計のe-stat から拾ってきました。

5年前までのデータですが、造園業に関わる就業者数は推移としてはこんな感じです。まだ団塊の世代が定年を迎えるあたりの08年をピークに17年まで減少傾向で底を打ち、また増加に転じています。コロナ以後、どのように変遷したか気になるところですねーー。

造園業就業者数 2007年〜2019年(単位:人)

17年で底を打った造園の就業者数ですが、18年から増加に転じ、2年間で1.76倍、2007年以降で最も就業者の数が多くなっています。

要因として考えられるのはPark-PFIの導入、緑化需要の高まりなど、デマンドが増えたことが考えられます。
Park-PFIとは2017年6月の都市公園法の改正によって創設された「公募設置管理制度」の通称。公園において飲食店、売店などの収益施設の設置や管理を行う民間事業者を公募により選定する手続きのことです。

要するに民間が公園事業に関われるようになったということですな。いわゆる緑化整備の他にも収益化を図る手段が増えるということで、参入が増えたことが考えられるわけです。

いわゆるブルーカラーの3Kでシュリンクしていると考えられている業界ですが、データで見ると特に都市部では変わってきているのかなーという感じです。

コペンハーゲンのフツーの公園にあるコーヒースタンド
Park-PFIでこういうのが増えていくと良いね

フィジカルな業界は、若い人には逆に新鮮なのかも

業界全体では高齢化が進んで人手不足。
最初に話していた造園業者の方も、公共の維持管理で手一杯で、個人宅のメンテナンスや雪囲いは断っている、との話でした。
例えば防風林の松枯れなども、予算と人手の関係で伐倒は断念した、と知り合いの業者から聞きました。手が回っていないなーーという印象です。

人手不足と言われる一方、40代前後の造園業トップランナーの会社には、カルチャーミックスな若い人が集まっているなーと感じます。

例えば、言わずと知れたYard Works やgreenspaceなどです。

シェアホテル、商業施設などの外構をトータルでデザイン、施工しているような方々ですね。
実際の作業者としてだけでなく、建築バックグラウンドのデザイナーや施工管理者も関わっているわけです。いわゆるガテン系の力仕事!だけでなくてチーム組織として「ランドスケープ業」として変わりつつあるように思います。

例えば、Yard Works はNOT A HOTEL や SANUなどのランドスケープも手掛けていて、まさに業界スターという感じです。

現場作業は真夏の炎天下でも、雨の中でも、泥だらけになりながら重いものを運んだり穴を掘ったりの土木作業がほとんど。正直体力的には大変です。
それでもフィジカルな仕事に関わりたい若い人は多いように感じるのは、抽象的な仕事が増えた反動のようにも思います。
また、造園に関わる現場仕事以外の需要や、自らクリエイトする範囲が広がっていることも要因かと思われます

人材の奪い合いになっていく昨今、業界全体として魅力的な業態をクリエイトして人材を循環させる、ということはとても大事だと思うのです。
それには、ガテン系のザ・フィジカル系だけでなく、個人の特性に合わせて設計寄りだなーとか、マーケティング寄りだなーという人材をブレンドしていく方向性が大事だと思う次第です

デザイン界隈や建築界隈、さまざまな界隈を取り込んで「ランドスケープ業」として成り立たせられるわけですからね。

わたくし自身も、いかにチームとして編成していくかがキモだ!と、毎日自分に言い聞かせております、、。


造園業は大きく2つに分かれると思う次第

これを踏まえて、いわゆる「造園業」もざっくり2つの傾向に分かれると思っています。

これを勝手に、トラディショナル造園業シン造園業と呼んでおります。
この2つには大きな業態の違いがあるように感じます。

トラディショナルな造園は、まさにザ・造園業というやつ。

職人さんが剪定、伐採したり、石組みの庭を作ったりする業務が中心で、背中で語る!スタイルですかね。これはこれで自分も好きだし、なんならこういうタイプの一人親方についていた時期もあります。

現代の会社組織的な造園業になると、まず何も言わずに安い給料で仕事を覚えよ、というヒエラルキーがしっかりした組織、というイメージです。昔からある感じのやつですな。公共の仕事も請け負っている感じです。

(ただ、お寺の庭のような、伝統的トラディショナルなタイプは例外だと思います。歴史的な重さの価値が違いすぎるので)

日本庭園への憧れはあるが、自分の領域ではないのです

一方、シン造園業は、まさにYard Works的なランドスケープ的事業

設計・施工を空間デザイン的に仕事にしているタイプです。商業施設の場合は、施設の収益性まで考慮して設計している感じでしょうか。施工は確かに職人的な技術も必要ですが、どちらかというとうまく分業をしていて設計チーム、施工チーム、広告チーム、販売チームなどに別れています。
会社組織的にも新しい感じの業態なので、得意分野による分業ができていて、ヒエラルキーのないフラットな組織であるようにも感じます。

で、やっぱり学生や若い人にヒットするのはやはり確率的には後者の方が多いかなーという感じです。
グリーンは確かに流れがきていますが、ここにうまくフォーカスできないと、「人がいない。人が来ない」になるんじゃないかしら。

人が集まるのは「楽しいか儲かるか」

人が集まるのはどういうところなのか?という問いに、昔働いていた農業の会社の役員に言われたことがあります。

「人が集まるのは、楽しいか儲かるかのどちらかだ」

この人は自分で事業を起こしまくって自分のポジションを固めていた人だったので、説得力はありました。

これを今のトラディショナル造園業に当てはめると、やはり「どちらにも当てはまらない」ことが、人が集まらない要因なような気がします。

この時期、道路沿いで公共の雪囲いをしている業者さんを見ると、高齢の作業員が多くて気の毒にすら思ってしまうところがあります。実感としても、力仕事はせいぜい50代くらいまでが限度だと思います。
街の景観を維持したり発展させていく観点からも、手薄になるとどんどん荒れていきますからね。苦しそうだなーーと内情を見ていると大変そうです。

これだけの範囲でも、芝刈りに玉造りに工数かかります

一方、シン造園業はカルチャー寄りの要素が強いこともあって、若い人にとっての敷居が低い感じはあります。何より、チームでランドスケープを作っていく、という様子がインスタなどを見ていても楽しそうです。

自分でクリエイトしていける感じとか、空間的デザイン的にアプローチできるとか、やっぱりワクワクするよねーーと思うわけです。

儲かるかどうか?に関しては、個人ではそこそこ稼げるが、会社組織だと忙しさの割に稼げない、が実感です。

現状、特に地方だとクライアントワークがメイン(特に公共案件)になっている上に、外構にお金はかけないスタンスが一般的です。納期や要件は厳しいし、予算にも厳しい案件ばっかりになっていて、とても大変な印象です。
ランドスケープ的に付加価値をつける観点や、PARK-PFIのような収益施設の運営に関わる仕組みを入れることで、稼げる業態に変わっていくことが必須要件にも思います。

例えばAIの業界に見られるように、トレンドで人は集まるでしょう。でもこれは、とても短期的になりそうだなーーと危惧もしています。
今後、人材が造園業にうまく循環していくためにも、一時的なグリーンのトレンドに惑わされずに、楽しく稼げる業態を考えていくことが肝要かなーと思う次第です。

ではでは!

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