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玄人と素人

「たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」
「眩(くらら)」朝井まかて著

これは、葛飾北斎の娘・お栄の視点で書かれた小説「眩(くらら)」の中での、北斎の台詞である。プロ(玄人)とアマ(素人)の差——プロがプロたる理由について、実に見事に表現されていると思う。

ちょっと他人よりデキたとしても、素人は、いざとなればいくらでも言い訳をして逃げることができてしまう。一方、玄人は、儲かるか、儲からないかは別にして、それを稼業にしている以上、逃げることができない。そこで生じる恥も、責任も、全て自分で負わなければならないのだ。

私には、そんな覚悟がどれだけあるのだろうか。この北斎の言葉を読んでから、そんなことをよく考える。対価の生じる仕事というのは、「お金をもらってるから」と割り切って頑張れる側面もあれば、お金をもらっている以上は金銭に見合う働きをしなければならない。そして言い訳も許されず、逃げ場もない。未熟な自分を、正面から受け止めなければならない。

その「痛み」に憧れるような気持ちはあるのだけれど、そんな考えを持っているうちは、私はいつまで経っても素人なのだと思う。

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