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背伸び

背伸びしない人が、恨めしい。

私の背が小さいからではない。ものごとに対する姿勢の話だ。

中学生の頃の私は、毎日、角川書店の分厚い国語辞典をカバンに入れて登校していた。理由はただ一つ。「頭がよく見られたいから」。自意識のカタマリそのもので、今考えるとかなり「痛い」のだけれど、私にはそうゆうところが多々あった。

小学生の時に通院していた近所の耳鼻科では、決まって待合室にあるハードカバーの小説を読んでいた。いや、正確には、文字を目で追っていた。読めるフリをしていたのだ。漢字の間に散らばっているひらがなを拾い読みしていた。もちろん、物語の筋は全く理解していなかった。

頭が良いと思われたいなら、勉強すればよいのだけれど、努力の方向を間違ってしまう。「頭が良くなりたい」のではなく「頭が良く見られたい」だけなのだ。

自分の身の丈を受け入れて、そこから地道に成長すればいいのに、その場しのぎのつま先立ちでどうにかしようとしてしまう。背伸びせず、素直に学ぼうとする人の姿を見ると、その健やかさに嫉妬心のようなものさえ感じる。

ちなみに私の身長は、中学生の頃から止まったままだ。

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