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クリスマスの赤いブーツ

「クリスマス」と聞くと、ワクワクしてしまう。


特別、良い思い出があるわけではないのだけれど。

何年か前から、「子供の頃、クリスマスにやってみたかったこと」を毎年少しずつやっている。


クリスマスリースを玄関に飾ること。

青山フラワーマーケットで白い小さなリースを買った。ドアに掛ける専用のリースフックも用意した。玄関を掃除してリースを取り付けてみると、マンションの扉がグンとはなやかになった。


ヘクセンハウスを飾ること。

無印良品のキットで作ろうと思っていたが、気づいたら売り切れてしまっていた。“おかしのまちおか“で「プチクマのお菓子のおうち」なるものを発見。溶かしたチョコレートを型に流し込んでパーツを作る。壁や屋根をバランスよく組み立てるのにちょっと苦労したが、picola(ピコラ)やアラザン、粉砂糖を買い足して完成したお菓子の家は、なかなか豪華な出来栄えだった。


シュトーレンを食べること。

作るのは大変そうなので、ジョエル・ロブションで買ってみた。(高い……。)和三盆が使われている、手のひらサイズの上品なシュトーレンだ。和紙風のパッケージが可愛らしく、ずっと飾っていたかったけれど、端から少しずつ切り取って美味しさに感動しながら食べているうちに、あっという間になくなってしまった。


今年は何をしようか。


休日の朝、布団の中でぼーっとラジオを聞いていると、リスナーさんからのお便りの中に、「お菓子の箱詰めアルバイト」のエピソードがあった。クリスマスの時期にはブーツ型の入れ物にお菓子を詰めるという話だ。

それを聞いて、またひとつ、幼い頃の願望を思い出した。

クリスマスにあの大きな赤いブーツを2つ買ってもらって、中身のお菓子を空にした後、それを履く。きょうだいがいれば実現したかもしれないが、一人っ子の私にはクリスマスのお菓子を2つねだる勇気はなかった。

しかし、大人になった今「その夢を叶えたいか?」と問われれば、答えは「No」だ。

子供の頃の夢には、「お金さえあれば叶えられるもの」が沢山あるけれど、大人になってみると「お金があっても叶える気になれないもの」もいくつかある。

クリスマスリース、ヘクセンハウス、シュトーレン……。その横で、お菓子のブーツに必死に足を突っ込もうとする大人の自分の姿を想像して、そう思った。


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