Post-it! 気になる一曲 『イギリス組曲 第4番 イ長調 BWV809 サラバンド』
ヨハン・セバスチャン・バッハ/作曲
アンドラーシュ・シフ/ピアノ
University Music School, Cambridge
1988年
バッハのイギリス組曲は第1番から第6番まであり、それぞれの組曲にすべて「サラバンド」と呼ばれる舞曲が入っている。イギリス組曲のサラバンドは、どれも美しい。なかでも私が一番好きなのが、第4番のサラバンドだ。
サラバンドに特徴的なゆったりとした三拍子のリズムが抑制された叙情を、ゆるやかな旋律や、たび重なる「間」が完璧なる静寂を感じさせる。
「はじめは速いテンポで…」とあるが、もともとのサラバンドに関して、別の本に以下のような記述がある。
こうまで印象が変わった事情とは何だったのだろう。とても気になるが、もし南米やキューバに起源があるとすると、ヨーロッパの人々は、サラバンドにエキゾチシズムを、ひいては「異国への憧憬」という物語を求めたのかもしれない。
イギリス組曲は、バッハのクラヴィーア曲の中では初期のもので、ワイマール時代(1708-1717)後期からケーテン時代(1717-1723)初期にかけて作曲されたそうだ。ケーテン時代については以下のような記述がある。
「イギリス組曲」の名はバッハによるものではないが、バッハの伝記を記したフォルケルによれば「ある高貴なイギリス人のために作られた」からということらしい。
シフの演奏は、高ぶることなく細やかな機微が感じられ、この曲に全く自然に見事にはまっているように思える。