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グレタさんの2020年1月21日ダボス会議でのスピーチ全訳

昨年に続き、ダボス会議でスピーチをしたグレタさん。スピーチの訳を探しましたが見当たらないので、「勝手に翻訳シリーズ第4弾」グレタさん渾身の2020年ダボス会議のスピーチを翻訳してみました。

スピーチ全訳↓

1年前、私はこのダボス会議に来て、私たちの家が火事になっていますと話しました。パニックに陥ってもらいたいと言いました。私は、周囲の人に「気候危機に関してパニックしろ」と言うのは非常に危険なことだと警告されてきました。でも心配は入りません。大丈夫です。私には経験があるので自信を持って言えます。何も変わりはしないのです。

言っておきますが、私たち子どもがあなた方に「パニックしてほしい」と言う時、私たちは、今まで通りにやってほしいと言っているわけではありません。現在まだ社会に実装されていない、科学的に実用化が難しいとされる未来の技術に頼ってほしいと言っているわけでもありません。数字をごまかしたりいじったりすることによって炭素排出量ネット・ゼロや炭素中立を達成してほしいと言っているわけでもありません。アマゾンでは過去にない勢いで森林伐採が加速している間に、あなたの排出量をオフセットするために誰かにアフリカあたりで植樹してもらったら良いと言っているわけでもありません。植樹自体はもちろん良いことです。でも、気候変動を食い止め自然を取り戻すのに、もう植樹くらいでは全く足りません。

はっきりさせましょう。私たちが必要としているのは、低炭素経済ではありません。炭素排出を低下させる必要はないのです。温度上昇を1.5度以内に抑えるためには、炭素排出を停止しなければならないのです。炭素排出をマイナスにする技術がある程度の規模で実用化されるまでは、「ネット・ゼロ」と言う考え方は忘れましょう。真の「ゼロ」を目指さなければいけません。なぜなら、将来のネット・ゼロ排出目標は、今日今ここで私たちに適用されるべき炭素予算を私たちが無視し続ける限り、何の意味も持たないからです。現在の高い排出量があと数年続けば、残りの炭素予算は使い果たされてしまいます。

米国がパリ協定を離脱することに対し、多くの人が怒りを感じ懸念を表明しています。当然です。しかし、ほとんどの国がパリ協定で署名した目標を達成できないことに対しては、各国の首脳はなんの懸念も感じないようです。今日から劇的に二酸化炭素排出を抑える政策がない場合、パリ協定で謡われた1.5度か2度以下に温暖化を抑えるという目標に対して、全く不十分な対応であると言わざるを得ません。

これは、右派とか左派という問題ではありません。あなたの政党の政治思想など、どうでも良いのです。持続可能性の観点からみれば、右派も左派も中道も全て失敗しました。気候や環境の非常事態にきちんと向き合い、調和のとれた持続可能な世界を実現できた政治思想や経済構造は、存在しないのです。気付いていないかもしれないので敢えて言いますが、今この世界は火事場と化しているのですから。

皆さんは、子どもが心配することではない、と言います。「任せておきなさい。問題は解決してみせるから。がっかりさせないと約束する。そう悲観的になるのはやめなさい。」と言います。そして、何もしません。沈黙です。いえ、沈黙よりもたちが悪いですね。まるで十分な対策が取られているかのような誤解を生む空っぽの言葉や約束を語るのですから。

現代の社会において問題解決策が全て揃っているわけではなく、炭素排出を劇的に減らす新たな技術が発明されるのを待つ時間もありません。ですから、新しい社会への移行は簡単ではありません。難しいものになるでしょう。そして、私たち皆が手の内を見せ合い今この事実に向き合わなければ、この問題の解決は不可能となるでしょう。

50回目となる世界経済フォーラムに参加する前に、私は気候活動家たちに会いました。私たちは、政財界のリーダーであり世界で最も大きな権力と影響力を持つ皆さんが、必要なアクションを取り始めることを要求します。私たちは、今年の世界経済フォーラムを機に、あらゆる企業、銀行、機関、政府からの参加者が、化石燃料の調査と採掘を今すぐやめ、化石燃料への補助金を今すぐやめ、化石燃料への投資から完全に撤退することを要求します。2050年とか2030年とかではだめで、2021年ですら遅すぎます。今すぐに行動して頂きたいのです。

多大な要求だと感じるかもしれません。もちろん、あなたたちは私たちを世間知らず過ぎると言うでしょう。しかし、これは、持続可能な世界に早急に移行するために必要最低限の努力にすぎないのです。今これを実行するか、そうでなければ、あなたは自分の子どもに、何の努力もせずに温暖化を1.5度以内に抑える可能性を諦めてしまった、と説明することになるでしょう。

言わせてもらいますが、あなた方と違って、私の世代は闘うことなしに諦めるつもりはありません。事実は明白であるにもかかわらず、あなた方にとって不都合過ぎるので、あなた方は事実を認めないのです。見通しがあまりにも暗いのでどうせ皆諦めると思って、ただ放っておこうとしているのです。でも、人類は諦めないでしょう。諦めているのはあなた方です。私は先週、ポーランドの炭鉱労働者と会いました。炭鉱が閉鎖されて職を失った人々です。彼らは諦めてはいませんでした。それどころか、彼らは、私たちが変わらなければいけないということを、あなた方よりも理解していたと思います。

あなた方は、自分の子どもたちに対して、危機が避けられないとわかっていながら何もせず子どもたちに異常な気候の中で生きる道しか残さなかったことを、どう説明するつもりですか。経済への悪影響が大き過ぎると思われたので、努力もせずに将来の世代の生活を保障することは諦めた、と言うつもりですか。

私たちの家は今も火事のままです。あなたが何もしないことにより、刻一刻と炎は激しさを増しています。私たちはあなたに、何にも増して子どもを愛しているかのように、今すぐに行動を起こしてほしいと言っているのです。ありがとうございました。


スピーチの映像はこちら↓


「クリーン・コール」と称し、石炭火力発電所の増設を続ける日本にとっても、非常に耳の痛い演説と言えるでしょう。

アル・ゴア氏によると、現在地球上の経済活動に必要とされるエネルギー1年分が、毎時間太陽から地球に降り注いでいるそうです。クリーンで且つ無料のエネルギーが無尽蔵にあるわけですから、「クリーン・コール」とか「二酸化炭素を地中に閉じ込める」といった技術に投資するより、蓄電池開発に投資する方が良さそうな気がします。

「クリーン・コール」という言葉を知った時、「さすが技術大国日本、石炭火力発電でもイノベーションを起こしてクリーンエネルギーにしちゃってるのか!」と思いましたが、実は、「従来の石炭火力発電に比べればクリーン」ということであって、石油や液化天然ガスに比べても二酸化炭素排出量は多いそうです。

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燃えさかるオーストラリア、全国的に雪がない日本、世界中で明らかに激甚化している災害…。これらの状況は、日本の政財界をリードする方々にはどのように映っているのでしょうか。

私たち一人ひとりが考え行動しなければ、私たちは私たち人類を淘汰してしまうかもしれません。

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