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統一教会問題と「信教の自由」の濫用

 6月8日は福岡県福岡市に行き、長年保守の立場から人権問題に取り組まれている近藤将勝先生や統一教会から福岡を守る会の山下大輔代表らにお会いしました。お忙しい中、時間を割いてくださって、本当にありがたいです。
 お二人からは統一教会問題について詳細に教えていただけました。現場で活躍する先輩方の話を聞くととても勉強になります。
 一部の自称保守の中には、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、略称・家庭連合)への解散命令請求について「信教の自由」を盾に反論している人がいます。
 しかし、家庭連合は他の国民の信教の自由を侵害していると裁判でも認定されている団体です。宗教法人が公益法人として税制優遇等の措置を受けているのは、あくまでも国民の信教の自由を守ることに公益性があるからであり、他の国民の信教の自由を侵害する団体に公益性は認められません。
 お二人も、保守派は本来人権を主張するだけでなく「公共の福祉」によって濫用を防ぐべきという立場であり、一部の自称保守による信教の自由解釈はまさに(かつて左翼が主張していたような)権利の濫用に当たる、というお考えでした。
 また、統一教会から福岡を守る会の山下代表からは興味深い話もお聞きしました。
 家庭連合は解散命令請求反対運動の中でやたら「拉致監禁問題」を訴えています。そもそもいわゆる脱会屋による家庭連合信徒への「監禁」事案は日本基督教団の牧師らによって行われているもので、近藤先生ら保守派の反統一教会の活動家とは無関係です。
 事実、日本基督教団は家庭連合への解散命令請求に反対しています。つまり、解散命令請求を求める勢力といわゆる脱会屋は全く無関係どころか、むしろ正反対の立場であるといえます。
 さて山下代表は家庭連合の主張について、①彼らは「4300人以上の被害者がいる」と主張しているが具体的に挙げられる拉致監禁事件の件数は少ない、②そもそも家族による説得をも「拉致監禁」に含める解釈はオカシイのではないか、と言ったことを言われました。
 それは仰る通りで、確かに脱会信徒の中にもいわゆる脱会屋による強引な「説得」への不満を溢す人が存在する以上、家庭連合への解散命令請求に反対しながら牧師による行き過ぎた行為を放置している日本基督教団の姿勢には疑問を抱かざるを得ませんが、一方で家族同士の信仰が異なって対立していた場合に片方の言い分のみを聞いて判断することは極めて危険であり、それこそ「家庭」への干渉となりかねない行為です。
 念の為に言うと、私は家庭連合信者を家族が監禁することを肯定する訳では無いですが、それを言い出すと過去には創価学会の信者が家族の仏壇を家族の同意なく燃やしたり捨てたりする行為をしていたという事実がありました。それは一部の創価学会信者が伝統仏教を信仰する家族の信教の自由を侵害した行為であるといえますが、一部の日本基督教団信者が家庭連合を信仰する家族の信教の自由を侵害したと問題視する自称保守は、自分達の支持する自民党と連立を組む公明党の支持母体にも同じことを言わないとダブルスタンダードでしょう。
 私は日本基督教団や創価学会についても他の国民の信教の自由を侵害した場合には言うべきことは言うべきという立場であり、過去にも一部の日本基督教団の牧師らがクリスチャンを神社が神道式で祭祀することを非難していることについて「他者の崇敬の自由を認めないのは信教の自由への侵害である」という旨の批判をしたことがあります。
 ただ、日本基督教団の場合はあくまでも「一部の信者の暴走」と評価できる範囲内のものであり、彼らが組織として他宗教の信者の信教の自由を侵害するような活動をしたことは無いのに対して(私の知る日本基督教団の牧師はみな他宗教にも寛容な方ばかりです)、家庭連合は組織的な正体隠し勧誘等によって他国民の信教の自由を侵害しているという指摘が存在し、その指摘は単なるアンチの主張ではなく裁判でもその一部は認定されているのです。
 さて、私はここで「一部は認定」と述べました。
 私からすると、正体隠し勧誘をしている時点でアウトだと思います。言うまでもなく日本基督教団を始めとする伝統宗教は正体隠し勧誘をしていませんし、創価学会も確かに問題のある強引な折伏はしていましたが正体隠し勧誘はしていません。
 ですが、裁判所は正体隠し勧誘をアプリオリに不法行為とはせず、或る事件の判決では正体隠し勧誘を「内心の自由に関わる重大な意思決定に不当な影響力を行使しようとする行為」「信仰の自由や財産権等を侵害するおそれのある行為」とはしましたが、あくまでも「おそれ」であって、正体隠し勧誘が信教の自由への侵害そのものであるとは認定しませんでした。
 しかし、裁判の判例でも正体隠し勧誘は「宗教性を秘匿して人に信仰を植え付ける行為は、自由な選択に基づかないで隷属を招く恐れが強い」と認定されており、国民の「自由な選択」を妨害する時点で、既に信教の自由への侵害です。
 裁判所の判決が及び腰な背景には「信仰を隠す自由」も信教の自由へ含まれるという解釈が憲法学界で有力だというのもあるでしょう。
 ただ、信仰は要するにその人の価値判断の体系であり、そして他人の価値観に配慮することが求められる現代社会においては価値観を不当に隠匿することを認めると却ってトラブルの原因となりますし、況してやそれにより他者の権利を侵害するに至っては言語道断です。
 統一教会問題では、憲法上の信教の自由を巡る議論を俎上に載せる必要もあるでしょう。それは家庭連合の支持を受けた与党や教条主義的な護憲論を唱える一部左翼には困難なことですから、その点に私のような野党の保守派党員の役割があると考えます。

訂正

 日本基督教団が家庭連合への解散命令請求に反対していると書いたのは誤りでした。誤った記事を書いたことについてお詫び申し上げます。詳細はリンク先の訂正記事をご覧ください。


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