【洋画】「ONODA 一万夜を越えて」
「ONODA 一万夜を越えて(Onoda, 10 000 nuits dans la jungle)」(2021年、アルチュール・アラリ監督)。YouTubeで見つけた。
先の大戦終結(1945年)後も、終戦を知らずに、長らくルバング島(フィリピン)で過ごして、1974年に発見され日本に帰還した小野田寛郎(ヒロオ)旧陸軍少尉(発見時52歳)のジャングルでの日々を描く。
とにかく3時間近くあってダラダラと長い。そして、小野田サンをはじめ、兵士が喋ってる言葉が現代人っぽい。飢えで苦しんでたはずなのに、体格を見る限りそんな感じがしない。でも、後半は、身なりもボロボロで汚く、肋骨が浮き出るくらいに痩せているので良い(俳優が代わってる)。フランス人監督だからかなぁ。
小野田サンは、諜報機関の陸軍中野学校の出身だったんだね。当時の、特殊なスパイ訓練を受けてルバング島に派遣されたのだ。
終戦となって、日米両軍共に島を退去したが、小野田サンは直属の上官から命令が伝わってなかったために、部下3人と共に島に留まり、任務遂行を続けたわけだ。小野田サンの任務とは、島に援軍が戻った際に、島の詳細な地図を作成して、情報を伝えることだった。
終戦を知らずに…というけれど、奪ったラジオは聴いていたわけだし、島民から食糧や物資を奪っていたのだし、薄々、わかっていたのではないかと思う。
ただ、命令がなかったという、私を捨てて、実直に命令通りに行動するという“軍人精神”によるところが大きいのではないか。
それに、終戦後も、30人以上もの島民を、食糧や物資の略奪のために殺害してたのだし、表に出ることでそれが明らかになることを恐れ、かつ、島民の復讐が怖かったのだと思う。
部下は、戦時から、次々と、逃亡、病死、島民と銃撃での死となっていくけど、小野田サン自身が告白してるが、部下とは上手くいってなくて、衝突も多かったというから真実はわからない。
島民殺害と略奪他の件は、戦後であったが、当時のマルコス大統領が恩赦を与えて、日本政府もフィリピンに多額の見舞金を渡している。
映画は、小野田サンが日本人旅行者の若者に発見されて帰国の途につくところで終わっているが、総じて、小野田サンの内省的な面を強調して描いている。それはそれで良いのだけど、何か物足りない。
小野田サンが日本への帰国時には、大変な話題になって(俺も裏覚え)、“日本軍人の鏡”などともてはやされたが、マスコミ等によって“作られた英雄”感が強かったのでは。
個を抑えて命令に忠実で時に小狡い、典型的な古い組織の日本人だったと思う。善悪は別にして。帰国してからの行動を見てもそう思うね。
そういえば、昔、グアムに行った時、「恥ずかしながら帰って参りました」の横井庄一サンが隠れていた穴倉は見学したなぁ。
鬱蒼としたジャングルの中に、ただただ独り。夜なんか気が狂いそうになるね。孤独なんて甘いもんじゃないな。