【古典邦画】「土と兵隊」

1939(昭和14)年の、田坂具隆監督の戦争邦画「土と兵隊」(二部構成)。YouTubeにて。

火野葦平の小説が原作。盧溝橋事件に始まる日中戦争の戦意高揚のために作られた国策映画で、欠落部分もあるらしいが、ただ日本軍の行軍が多い、地味なドキュメンタリーのようで、あまりそうらしくはない。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…。だだっ広い中国の大地を歩く、兵士たちの行進を、ただ長々と映していることが多い。寝ながら歩いてて、誤って河に落ちる者もいる。第二部は戦闘シーンも多い。

ただ雄大な自然の大地を歩いて移動する兵士たち、弾に倒れる者もいるが、敵を恐れぬ日本軍兵士みたいな程で描かれるが、兵士らの疲弊した絶望的な表情や、「俺たちは一体何をしてるのだ…」という台詞があったりして、国策映画とはいえ、田坂監督が、自然の中で、アリのように虚しく動いて、殺し合いを続ける、ちっぽけな人間というようなものを表現しているように、俺には思えたね。

ズンズンと腹に響くような重い機銃の音は本物なのかな?この止むことのない機銃等の音と、「突撃ぃ!前進っ!前へー!突っ込めぇ!」という人間の叫び声が、全てを破壊する、けっこうなノイズとなっている。

当時としては、日本軍側からの、かなり戦場のリアルに迫った戦争映画ではないだろうか。ただ戦意高揚性は低いと思うけど。意外と精神論の要素は少ない。

蓮の花を見つつ兵士がいう。
「生きているということはありがたいことだ」。

ヤギを抱いた兵士がいう。
「このヤギを戦争に巻き込みたくない」
「戦争は絶対だぞ」
「その絶対は人類の絶対であって、ヤギの絶対ではないぞ」
「それはお前の感傷だ」
「そうかもしれん。しかし、感傷があればこそ、人生は美しいんじゃないか」。

ラストの、人情と友情に溢れた、人間味のある、規律正しい日本軍兵士が強調されるところで、ようやく国策映画っぽくなるが。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。