「魂でもいいから、そばにいて」

死者・行方不明者1万8000人余を出した3・11東日本大震災。

津波等で被災して亡くなった人が、家族の元に現れるなど、不思議な体験をした人が、生き残った被災者全体の2割くらいに上ってるという。

前に読んだ石巻市・大川小学校のレポートでも、そういう不思議な体験が語られていた。

夢に死んだ家族が出て来てメッセージを受け取った(カラーでハッキリとした夢で、夢を見た後に遺体が見つかったりしてる)、
枕元に霊となって現れる、
何日も経ってから「ありがとう」のメールが届く、
死んだ子供のオモチャが突然動き出す、
家の中で死んだ家族の足音を聞く、
外で死んだ被災者の霊を見る、
携帯電話に死んだ家族が出る…。

…実に様々な体験が載ってる。

不思議なことに全然、怖い、恐ろしいということは全くなくて、死んだ家族を身近に感じることができて、懐かしくて不安もなくなり、リラックスした癒される感覚に身を預けることができたという。

霊現象というと、今では、ほとんどが脳科学や心理学で説明がつくと思うけど、これらの体験は体験者からすると紛れもない“事実”なのだ。例え、幻聴・幻覚であっても。

未曾有の災害で愛する者に突然、死なれて、絶望の淵に立たされて、死にたいと願うまでの多大なストレスに晒された人々の心を実際に救ったのだから。

やはり、絶望感に苛まれて、再会を痛切に願う心情が、死者を霊として蘇らせ、今後の生きる希望に繋がる元気を与えている…このような場合、人間の脳は生きるために無意識に死者を絡めたストーリーを作成するのではないだろうかと思った。

不思議な体験をした被災者の話全てに、狂おしい程の家族への愛が感じられた。そこに酷過ぎる程の別れがある。

死んでしまった愛する人は、どうしても自分に必要な時に霊となって現れるのだ。生者も、死者と共に生きている。それは亡くなった人を忘れたくないからであり、同時にそれが死者の願いであるとも思ってる。生きてる人が亡くなった人を記憶に刻み続けることで死者は生き続けるのだ。

3・11では、他の被災地と比べても、不思議な体験が多く聞かれる。それは東北という土地柄もあるのだろう。昔から恐山やイタコなど、宗教との繋がりも大きいし、しきたりや伝統・伝説の類いも多い。より家族を大切にするコミュニティーでもあるし。生者と死者が共に生きるという文化は、他の土地よりも強いと思う。

これらの霊体験が真実かどうかを検証することはあまり意味がないように思う。霊体験も一つのサブカルチャーであるし。

一気に読んだが、面白くてとても興味深い内容だった。


いいなと思ったら応援しよう!

TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。