【古典映画】「ゾラの生涯」
1937年のアメリカ古典映画「ゾラの生涯(The Life of Emile Zola)」(ウィリアム・ディターレ監督)。
フランスの文豪エミール・ゾラ(1840-1902)の伝記映画なんだが、ユダヤ人の大尉がスパイ容疑で逮捕・投獄された冤罪事件のドレフュス事件の実話なども盛り込み、創作の部分も多そうだ。
パリの貧しい屋根裏部屋で画家と同居してたゾラは、知り合った女性をモデルに小説「ナナ」を書いて評判となり、やがて貧乏暮らしを抜け出して、自然主義文学の大作家となる。
その頃、陸軍将校のドレフュスがスパイ容疑で逮捕された。
彼の無罪を信じる妻がゾラに働きかけて、彼は、新聞に「われ弾劾す」という軍部を激しく批判する公開状を投稿する。
その投稿を苦々しく思った軍首脳部はゾラを訴えて、彼は裁判でも迫害を受けることになる。
彼はやむなくイギリスに亡命するが…。
名前は知ってても、ゾラがどんな小説を書いたのかは知らないけれど、裕福になって大家として成功しても、最期まで自由と正義を貫いた反骨の人物として描いてる。
裁判における彼の演説は、チャップリンの「独裁者」の演説みたいに、長くて、力強く、自由と正義の大切さを訴えてて、当時は感銘を受ける観客も多かったのではないか?見応えがある。
ゾラは、社会主義に傾倒してたようだが、彼はあくまでも熱烈な愛国者である。自国フランスの自由、平等、博愛の精神を史上のものとして自慢している。19〜20世紀初頭は、まだ、社会主義・共産主義が自由と平等を実現するものとして理想化されてたんだなぁ。
映画はテンポ良く進んでいくが、後半は、ゾラよりもドレフュス事件顛末が中心。
小説家として静かな余生を送ることを拒否して、私利私欲に走る腐敗した軍部や騙される大衆に対して、正義と真実を武器に闘いを挑むゾラ。「軍が虚栄のために無謀に戦争を行い、若い兵士が命を落とす」という名言(?)もあるけど、あまりにも正義一辺倒の人物として描かれると、胡散臭くて、ホントかなぁと疑ってしまうね。