【映画】「チャイナタウン」
ロマン・ポランスキー監督の「チャイナタウン(Chinatown)」(1974・米)。
怪優ジャック・ニコルソンが主演のサスペンス・ミステリーだ。
1930年代のカリフォルニア州ロスアンジェルスを舞台に、私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)が偶然、関わってしまった殺人事件を調査していくうちに、その裏にロスの水道利権を巡る巨大な陰謀があったという話だ。
それで事件が解決し、陰謀を暴いて解決したというのではなく、陰謀の張本人で影の有力者クロスは生き延びて、巻き込まれた有力者の娘は理不尽にも死んで、まるで定められた人の運命は絶対に変えられないということを示したようなラストは、まさにポランスキー監督らしいのだ。
この結末は脚本家とポランスキー監督がかなり揉めたらしい。脚本家は全てが解決してハッピーエンドで終わりたがったが、ポランスキー監督は悲劇の結末を譲らなかったという。俺も悲劇で終わった方がポランスキー監督らしいと思うけどね。ポランスキー監督は撮影中に、たくさんトラブルを起こして、周りをかなり悩ませたそうだ。
まさにジャック・ニコルソンにしかできないような負けず嫌いの横暴な演技に、ヒロインのフェイ・ダナウェイの鬼気迫る存在感は、これぞフィルム・ノワール。
ジャック・ニコルソン演じるギテスは事件に深く関わったばかりに、結果、ヒロインの夫人(フェイ・ダナウェイ)を死に追いやり、その愛娘を黒幕の有力者に渡す手助けをしてしまったというなんともやりきれない展開。
夫人が過去に、実は黒幕である実父にテゴメにされて愛娘が生まれたという衝撃の告白で、当時、ポランスキー監督が、13歳の女の子に性的虐待をしたという事件と、この映画の有力者クロスが、ポランスキー自身とどうしても重なってしまうね。
ポランスキー監督がシャロン・テート事件で荒れてた時代の映画じゃないだろうか。そのポランスキー監督自身もギテスを脅してナイフで鼻を切るチンピラ役で出演している。
ギテスやクロスが育ったのがチャイナタウンなのだが、「チャイナタウンは言葉や人間関係が複雑で、怠慢が一番。犯罪の防止をしてるつもりでも、逆に犯罪の手助けをしてしまう事がある。あまり首を突っ込まずに怠慢でいるのが一番」という刑事の話が、この映画のテーマだと思う。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。